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第4話 昔話その2

 子どもの成長というのは、本当に早いものでして、3ヶ月もする頃には天の舌足らずな口調もなりを潜め、平仮名とカタカナを使い分けて話せる様になりました。


(パパ、きょうはあめがふりそうだよ。)


(確かに雲行きが怪しいな。しっかりと湿気を吸って成長するんだぞ。)


(うん!)


 最近は俺も自分の口調を意識して話すよーにしてるんだ。どーよ、威厳出てるだろ?…え?そんなことより湿気がどーとかが気になるって?ハッハッハ、よそ(人間)よそ(人間)うち(キノコ)うち(キノコ)ってな。



 この世界は弱肉強食、とても危険だ。魔物がはびこり、常に死と隣り合わせだ。だから本当は天には見せたりさせたりしたくないんだが、教えなければならない。だから、弱い魔物を根で捕らえて、安全に毒の使い方や戦い方を教えていた。


 一年ほど経った、ある晴れた日のこと。言葉もハッキリする様になり、毒の使い方も安定してきたなー、成長したなーと思っていた時だった。


 ―――ヒュン! バシッ!


(うおっ!?)


(パパ、大丈夫!?)


 最近少しずつ鍛えてきた気配察知の範囲外から何かが飛んできて、ぶつかった。


(あぁ、大丈夫だ。…何だこりゃ、柿?)


 ―――バシッ!


 今度は後ろから。全く痛くないが、天に当たったらヤバい。どこから投げてきてんだ?うーん、全く分からんな。こーなったら。


 俺は根を6本地面から生やし、周囲に意識を巡らした。


(どっからでも来いや!…そこだっ!)


 ―――パンッ!


(っしゃ!)


(流石パパ!カッコいい!)


(ハッハッハ、そーだろそーだろ?―――ハッ!)


 ―――バシッバシン!


 数が増えたな。こりゃー面倒だ。


(天、ちょっとこの根に毒塗ってくれ。)


(うん、任せて!)


 7本目に、バシン、天特製の、バシッ、毒の胞子を、パン、ふりかける。で、地面に這わせて大きく迂回するように…。


 パン、バシ、バシバシパンバン、バシバシバパパパ………。


(―――ソコだ!刺突!)


 飛んでくる方向から動きを先読みし、毒根を突き出す。


 ドスッ!


(ッシ!手応えあり、さす俺!…さーて、ナメた真似してくれやがって、ご対面!)


(さすパパだね!)


 あ、やべ、テンション上がっていらん言葉教えちまった。まぁしゃーない、大目に見てくれ。


 …根に刺さっていたモノは、なんか腹にカンガルーみたいなポケットのついた猿だった。もうぐったりしてるけど、腹立つ顔してんな。


(柿投げる猿って、「さるかに合戦」かよ!)


 なんか昔話シリーズであの子熊を思い出すな。でもまぁ、今回も厄介ではあったけどそこまでではなかったな。俺の防御力はかなりのものだからな。相手が悪かったな。


 ―――スキル:気配察知 を獲得しました。


 待ってました!ありがとう、おさるさん!


(そろそろ死にそうだな。よし、天、最後はお前がやるか?)


(うん、やる!)


 俺は天におさるさんを近づける。


 天はプルプル震えながら力むと、かさの横から棘みたいなのが生える。ちょっと天狗っぽい。


(えい!)


 ブスッ!


 天は棘を猿の胸に突き刺した。


「――ぐ、ガ、ッキィィィイイイ!?」


 猿が苦しみ出しのたうち回る。刺された痛みじゃない。あの棘はただの棘じゃない。「毒針」だ。じきに身体中に毒が回り死ぬだろう。我が子ながら恐ろしいったらありゃしない。


 おさるさん息を引き取ったみたいだ。ごめんよ、むごい殺し方をして。成仏してくれ。ナンマイダー、なんみょーほーれんげーきょー。


(それにしても天は強くなったなぁ。)


(ほんと?嬉しいな!)


(あぁ本当だ。)


 何が怖いって、こんな殺し方をしても、特に怯えたりしないってところだ。蟻の巣に水流し込む子どもみたいな恐ろしさを感じるよな。やっぱ前世がある俺とは道徳心が違うんだろーか。殺しに快楽を覚えるヤバい奴にならないかだけは気にしとこう。


 あ、そーそー。今まで多くの敵の血を浴びてきたからか、最近「養分吸収」を覚えた。俺も末期かもしれない。簡単に言うと、死んだ動物の血とかを吸ってミイラにするスキルだな。あまり使いたいスキルじゃないけど、俺の栄養は俺だけのものじゃないし、必要なことだと思って使ってる。子育てって大変だな(たぶん違う)。


 それにしても投擲かー。いいなー。俺も葉っぱ飛ぶ様にならないかなー。まぁ根と枝が伸びるからそこまで必要じゃないんだけど。気配も分かる様になったし、次はどーしよっかな。



 天と会話したり訓練しながらも、移動を続けていたんだが、林冠どうしの間のの左前方上方に黒い…逆の台形?が見えてきた。あれ何だろーな?よし、あれ目指して進もうか。


 では、特訓の成果をお見せしよう。


――――――――――――

名無しの権兵衛 男

種族:妖樹(怪樫) 状態:共生


パッシブスキル

堅牢 木 体操 柔軟 伸縮 毒耐性

アクティブスキル

擬態 硬化 刺突根術 枝鞭術 念話 養分吸収 葉裏剣(ハリケーン)

――――――――――――


 そう!出来たんだよ、葉っぱ飛ばして敵を切るヤツ!え、名前?葉っぱ手裏剣って書いてハリケーンだ、もはやこのセンスも好きになってきたよ。

 まだ制御は全然で、一方向にブワーっと飛ばすことしか出来ない。その内、障害物に当たらない様に曲げて放つことが出来たらいいな。


 お次は天だ。


―――――――――

天 男

種族:天狗茸 状態:共生


スキル:毒 菌 念話 毒針

―――――――――


 最近見せた毒針以外増えてない様に見えるだろうが、実は麻痺毒が使える様になっている。統合されて見えないけどな。ちょっと天の成長早すぎない?うちの子天才だわ~。

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