第１話 吾輩は木である。名前はまだ無い。
初めて小説を書きました、よろしくお願いします！
――Q、目が覚めたら、木になっていました。どうしたらいいですか？
――A、とりあえず落ち着いて、何か出来ることがないか探してみなさい。
――Q、目が覚めたら、木になっていました。どうしたらいいですか？
――A、何か出来ることがないか探してみなさい。
――Q、目が覚めたら、木になっていました。どうしたらいいですか？
――A、諦めて現実を見なさい。
自問自答繰り返してたらもう１人の自分にも切り捨てられた。…ハァ、現実逃避はもうやめよう。
俺は、さっきまでごく普通の高校生だったと思う。自分の名前は思い出せないが、友達とバカ話に花を咲かせたり、部活に精を出したりし、家に帰ったら漫画やラノベを楽しむ没個性な人間だったはずだ。
それがどうした？今や俺は一歩も動くことの出来ない木になっている。体感３０分くらいこの状態だ。意識がじわじわと覚醒したら、目の前には鬱蒼と茂る森の木々、身体（？）は全く動かんし、視界をどうにか下とか上にやると根、地面、森、葉っぱだったからね。めちゃめちゃ焦った。「事実は小説より奇なり」というヤツか？よく転生モノで見る言葉だ。この言葉を見て「おいおい、またこの言い回しかよ、ひねり無いな」とかずっと思っていたが、いざ自分がなってみると、この言葉以外浮かばんね。作者さん達ごめん、俺もうそんなこと考えない。
…ハァ、そろそろ諦めよう。頬をつねるとか出来んからまだ５厘くらい可能性は残っていると信じたいが現実だろうな。ごめんよ、父さん、母さん。親孝行とかしたかったけど、無理だった。
…じゃあ定番のヤツいっときますか。
（ステータスオープン！）
――――――――――――
名無しの権兵衛 男
種族：妖樹（怪樫）
スキル：堅牢 木 移動
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やっぱりあったな、ステータス。…ツッコミどころ多いな！ハァ、１個ずつ潰していくか。
まず、名前。名無しの権兵衛って今日日聞かねえなぁ、おい。名前がないのはまぁ、覚えてないしな。そりゃそうだ。
次、種族。あれで「あやかし」って絶対シャレだろ！俺の種族で遊ぶなよ！
最後、スキル。堅牢は分かる。樫だし、頑丈なんだろうな。「木」ってなんだよ。「木魔法」とかなら分かるんだが。あれか、光合成とかか。それってスキルなのか？ただの生命維持活動だろうが。あと、移動。…移動！？出来るの！？それはありがたい！
早速「移動」を使ってみる。
………ん？
………。
………。
いや、遅いな、マジで！分速１センチぐらい？ふざけてんのか。いや落ち着け、これはアレだ、熟練度とかが足りないヤツだ。その内ダッシュ出来る様になる。きっと、たぶん、めいびー。
…なんかステータスを確認するだけで疲れたな。今日はもう休もうかな。うん、そうしよう。おやすみ。…夢だったらいいのにな。
おはようございます。名無しの権兵衛です。今日もマイナスイオンが溢れててとても気持ちいいです。やっぱり夢じゃなかったよ。うん知ってた。
今日は移動の練習と、どうにかして枝を動かせないか試してみようと思う。早く速く動ける様にと、今のままじゃ自由が少ないからね。あと、木っぽいことを意識を集中させながらやってみようかな。
昨日は何となく移動してたけど、ちっちゃい根がなんかワサワサ動いたり地面から抜けたりして移動してるっぽい。なんか気持ち悪いな。これは意識しないか、慣れるのを待つ感じだな。まぁヒマだし慣れるまで耐えよう。
枝は動かないな。何かが足りない感覚。これも気長にやろう。
木っぽいことを意識。まずは維管束。…いや～、これはスゴいよ。根から水を吸い上げる感覚がダイレクトに。例えるならそう、冷たい水を飲んだ時に口から喉を通って胃まで到達する気持ちよさあるじゃん？それが根、つまり足からで、なおかつ途中で終わらず全身を通るのよ。これはオススメ。なんか気分がずっと爽快。
光合成は…ごめん、名状しがたい。日に当たってる感覚は普通なんだよ。日向ぼっこしてる感覚。その後の栄養を作り蓄える感覚は変。いや悪い感覚じゃないんだよ。むしろカ・イ・カ・ン。
呼吸。これはそのまんま。葉っぱ全部口や鼻。キモい？うん、まぁでもずっと呼吸ペースが一緒で変えられないから割りと口と鼻とは違うかなー。あと呼吸してて上の方メッチャスースーする。…例えるなら何かって？これも？う～ん、秋頃に突然思い立って坊主にした感じ？普通やらないか、ハハ。
なんか前に進んでる感覚あるから休憩を挟みつつずっとやってみたけど、しんどいなコレ。でもテレビで運動出来る系タレントが自分の身体をしっかり把握して、思い通りに動かせる様になるのが大事って言ってた気がするから、頑張ろう。じゃあおやすみ。
――スキル：体操 を獲得、スキル：移動 が統合されました。
――スキル：柔軟 を獲得しました。
３年ぶりかな？久しぶり。あれから色々頑張ったよ。毎日毎日自分の枝や根に意識を集中させてから動かそーとしたよ。半年ぐらいで根が動き、もう半年で枝は動かせる様になったんだけど、スキルは生えなかったから、今度は幹を動かそうと頑張ったんだ。こっちはカッチカチで全然動かないの。何度か心折れて、１週間くらいふて寝してたら、それも飽きてまた始める、ってのの繰り返しだよ。そしてつい最近とうとう動かせる様になって、感動したり自分を褒めてたんところだ。なんか「移動」が「体操」に統合されるのビミョーに違和感なんだが、まぁ、もう人間じゃないし、たぶん体を動かすことで移動出来るからってことで纏められたんだろう。俺は木なんだ。気にしてたらキリがない。気にしない、気にしない。…はい、サブかったですね、すみません。
「柔軟」に関しては、おそらく幹を捻ったりしてたからだろうな。「堅牢」かつ「柔軟」って木としてかなり優秀なんじゃないか？地震に強そう。
よく考えると大分シュールだよな。森の中でぐねぐねワシャワシャ動く木って。日本なら心霊現象間違いなしだ。
あと、１年くらい経ったときかな、どんぐりが生りました！暫く感動してたけど、よく考えたら俺におしべとめしべが出来たってことで、つまり俺はニューハーフ？それとも２つともあるから…。って暫く目が死んでた。これも最近流行りのTSなんだろうか？(反語)ステータスに男って書いてあるし、大丈夫だ、うん。
そうそう忘れてた。なんと魔物がいたんだよ！ファンタジーの定番、ホーンラビット。感動したよ。…まぁしばらくしてから上を見ると５メートルくらいありそうなバケモノ鳥がいて恐怖が上回っちゃって、スンッて真顔になったけどね。
…さてと、そろそろここを離れようかと思う。生まれ育った土地を離れるのは淋しい気もするけど、流石に退屈だ。何年生きられるか知らないけど、もっと自由に生きたいしね。
というわけで、どれがどれだか分からんけどこの世界のお父さん、お母さん、兄妹たちよ、俺は行きます。お元気で！
