マイ、ギルドマスターに会う
第10話 マイ、ギルドマスターに会う
慌てたお姉さんは、ギルドのカウンターの奥の部屋の扉をノックもせずに開けてしまった。
「ばっかもーん!!!毎回ノックしてから開けろと何度言えばわかるんじゃっ!!!しばらく待たしておれっ!!!」
ノックせずに開けてしまって怒られたお姉さんがとぼとぼと私の前に来て「もう少しお待ちください・・・。」と暗い表情で告げて、カウンター仕事に戻っていった。
ギルド内は、さっきまでの喧騒とは打って変わって静かになっている。「やばいぞ!」「マスターいるんじゃん!」「かなり怒ってる、ヤバいヤバい!!」など口々に言いながら、酒に逃げる者や、カウンターでの文句もそこそこに離れていく者、そっそくさとギルド内から出ていく者もいる。
マイは、周りの様子が気になりながらも、待てと言われたためおとなしく椅子に座っている。しばらくすると、先ほどお姉さんが開けた扉は、小さな扉であったがその一回り大きい方の扉が開いた。
その扉をくぐるように、緑色の巨体が姿を表す。オーク?いや、角があるから小鬼かな?顔もいかつい・・・。
「そなたが、神託で剣士の職を与えられたという娘か?カードを見せてみよ。」
マイは、オーガがギルドマスターなんだと思いながら、ステータスカードをギルドマスターに見せる。
「ふむふむ。なるほどの。間違いなく、本物のステータスカードじゃな。神託で剣士ということは、とんでもない事じゃとお主は分かっておるのかな?」
マイは、そう言われても剣士という自覚もまだなく、首を横に振った。
「ふむ。ならば、ちと説明せねばなるまいな。剣士という役職は、もちろんいろんな職業に派生はするのじゃが、この職業自体二次職と言って本来、何らかの一次の職業をある程度極めてから二次職へと転職するのじゃ。」
ギルドマスターは、先ず、神託で一次職でない職業が出る事態が異例中の異例であること、さらに、その中でも剣士の職に派生するのはきちんと剣士を目指して鍛えた者しかなれないことを教えてくれた。
「なるほどですね。剣士が出た事がかなりすごいことは分かりましたっ。でも、ここに来るようにと言われた意味がまだわかっていないのですが・・・。」
マイは、ギルドマスターに素直に聞いた。すると、ギルドマスターは、その体躯にかなり似合った大声で爆笑する。
「いや~!!ハッハッハァ~!!
マイとやら、お主が剣士である以上、ギルドへの登録は義務のようなもんなのじゃよ。
先ず、剣士には首都防衛としての役割、冒険者の先導者としての役割など様々な役割があるのじゃ。」
ギルドマスターは、冒険者登録はしてもらわなくてはならないと力説を始めた。マイは、まだ五才でありそんなことを言われてもと思ったが、ギルドマスターは、父親への手紙を書くからこれを見せて早いうちにギルドへの登録をするようにとマイに手紙を渡した。
マイは、手紙を受け取り帰路へと着いた。
『あれ?うち、お父さんだけって言ったっけ・・・?』