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これで人生大逆転! ~あなただけに送る、下着の色が見える能力のちょっと変わった活用法~

作者: えびちゃん

 朝、いつも通りに目を覚ますと、下着の色が見えるようになっていた。


「おはよう、ゆうすけ。朝ご飯できてるわよ」

「……紫」

「え?」

「いや、なんでもないよ、母さん」

「あら、そう?」

「………………」


 オーケー、落ち着け俺。落ち着いてこの異常事態を分析するんだ。

 本来、透けやすい服でも着ていない限りは、下着の色なんてものは見えないようになっている。

 それが今、見えている。つまり、俺は下着の色が見える透視能力のようなものを得てしまった。そういうことだろう。


 この際、どうしてそんな能力が手に入ったなんてどうでもいい。

 問題は、この能力をどう活かすかだ。せっかく能力を手に入れたのなら、それをうまく活用して人生をより良いものにしたい。


「もうそろそろ家を出ないと遅刻するわよ~!」

「わかってるって! もう行くから」


 イチゴジャムの塗りたくられたトーストを頬張り、牛乳で流し込む。

 母さんの言うとおり、もうすぐ家を出ないと学校に間に合わない。

 ああでも、学校行きたくないなぁ……。


 何故かって? それは、俺は俺の前の席の関口君が大嫌いだからだ。

 何より、そんな関口君と俺との間で、つい昨日ちょっとした事件があったのだ。

 

 前の席の関口君――。彼は何かと俺に突っかかってくる。

 呼吸音がうるさいだの、シャーペンのノック音がうるさいだの、ノートに文字を書いてる音がうるさいだの、細かいことでいちいち文句を言ってくるのだ。

 

 人間関係のトラブルなんてごめんだ。求めるのは穏便で円滑な人間関係。

 だから俺は、関口君の文句に反論せずちゃんと改善してやった。

 授業中は息を殺し、鉛筆を使い、ノートに文字を書く時だって、最大限気を使った。


 そうだ! 俺は大人な対応をしてきたんだ。我慢して我慢して、神経質な関口君の要求になるべく答えてきた。我ながら、なんて協調性のある高校生なのだと思う。


 しかし、関口君のクレームは止まらなかった。

 関口の野郎、今度はなんて言ったと思う? 

 あいつ、俺の存在自体がうるさいって言いやがったんだぜ……!? 

 ああ、思い出しただけでもイライラする!


 だが俺はぶち切れなかった。むしろ喜んだね。ここまで俺に対して敵意丸出しだとわかると、こちらも我慢する必要なんてない。


 そう、それから俺は、授業中に過呼吸かってくらいうるさい呼吸をしてやった!

 シャーペンもカチカチカチカチ押しまくったね! シャー芯が飛び出まくりよ!

 ノートだって殴るように書きまくった! おかげで俺の右腕は腱鞘炎だ!


 当然関口君はぶち切れた。

 授業が終わってすぐに俺は胸ぐらを掴まれ、至近距離で罵声を浴びせられた。

 

 ……ここからが納得いかない。

 俺だって、確かにやりすぎた感はある。

 

 けれど、どうして俺が一方的に悪者みたいになったんだ!?

 

 そう、そうなのだ。関口君がぶち切れた後、その周りにいたクラスメイトたちも俺に文句を言ってきたのだ。

 お前うるさいだの、ついに頭おかしくなったのかだの、散々な言われようだった!

 気づけば俺の味方は誰一人おらず。みんな関口君の味方をしていた。


 ……おかしい。これはおかしいぞ。そもそも事の発端は関口君じゃないか! 関口君がもっと落ち着いたメンタルの持ち主なら、こんなことにはならなかったんだ!

 こんな面倒なトラブルがなければ、俺はここまで憂鬱な気分になることもなかったんだ!

 

「ああ、気が重い……」


 急いで身支度し、扉を開けて外へ出る。

 見上げると、雲一つない青空が広がっていた。

 ああ、綺麗だなぁ。美しいなぁ。俺の荒んだ心とは大違いだ。

 

 前を見ると、そこには登校中の女子高生が。

 同じ学校の生徒だろう、ブレザーを着た、スカート丈のやけに短い女子だ。

 髪はセミロングで艶やかな黒。


「……ほう」


 そして下着の色は青。パンツもブラも青色だ。まるであの綺麗な青空のよう。

 ……そういえば、俺は下着の色が見えるんだった。これは少し楽しいかもしれない。


「おおっ!?」


 次に出会ったのはショートヘアの女子高生。

 なんと! 黄色い下着を着ているではないか。

 黄色は自然界において警戒色と言う。つまり、彼女は危険を知らせているのだ。わたしの下着は危険なので近寄らないでください。そういうことなのか!


「なにィ!!」


 俺の驚愕は止まらない。

 すれ違うOLさん、奥様方、女子小学生に女子中学生! 皆の下着の色が手に取るようにわかるのだ!!

 黒、白、ピンクに水色と、赤に茶色にどどめ色! これぞまさに十人十色だ!

 

 更に更に、色がわかるのだからもちろん柄物だって識別可能だ。

 今横切った女子中学生は大人びた雰囲気なのに、くまさんパンツを履いている。随分と可愛らしい趣味をしているな!

 目の前の横断歩道で信号待ちしているあの女子高生は縞々パンツだと……!? 縞々パンツなんて、萌えアニメだけの存在だと思っていたぜ!

 

 おお! あそこにいる男子中学生は真っ白なブリーフだ! そろそろトランクスかボクサーパンツに変えた方がいいんじゃないか?

 

 …………はい。そうなんです。

 俺の能力は女子限定ではない。男子の下着の色もわかってしまうのだ……!


「う、うげぇ……。嬉しくねぇ……」


 女子の下着の色だって、わかったところでそこまで楽しいわけじゃない。

 とはいえ、見えたところで損することはあまりないし、優越感は味わえる。


 だが、男子の下着の色は別だ。そこらの野郎が白いブリーフを履いていようが赤いトランクスを履いていようが、ちーーーーっとも楽しくも面白くもねえ!!


 そもそも何だよ、下着の色が見える能力って! この能力があればちょっとした下心は満たされるかもしれないが、それだけじゃねえか! この能力をどう活かせというんだ?


「おおおお、奥さん、随分と大胆な色の下着を履いていらっしゃるんですねぇ。ぐふ、ぐふふふ!」だなんて声をかけろと? ただの不審者じゃねえか!


 それとも何だ? マジシャンとしてテレビ出演でもするか? パフォーマーとしての道を目指しちゃうか? 「あなたの下着の色は………………赤です!」とでもやればいいのか? アホか! そんなマジシャン嫌すぎる! というか、どんだけ限定的なマジシャンだよ!


「はー、アホらしい……」


 どうせなら、むかつく相手を腹痛にする能力とか欲しかった。超えげつないけど。

 

 とまあ、そんなくだらない妄想をしている間に、俺は学校へ辿り着いた。

 校門から正面玄関を通り、教室へと向かう途中にも色とりどりの下着たちが俺の視界に映り込んだ。けれど既に、俺はそんな衝撃を受けなく……。


「って、ええええええええええ!?」


 訂正。俺はかなり衝撃を受けた。

 教室へ入り、自分の席へ向かう途中に俺は見たのだ。

 

「ふん、昨日あんなことがあったのによく平然と学校に来られたな、ゆうすけ」

「せ、関口……」


 前の席の関口君。彼の下着の色は…………わからなかった。

 急に能力を失ったわけじゃない。他の生徒の下着の色はまだ見えている。

 

 つまり、これの意味することは……。


(こ、こいつまさか……。ノーパンなのかよ!!!!!!)


 俺の能力は下着の色が見える能力だ。下着がなければ見える色さえ存在しない。

 その証拠に、ブラをつける必要のない男子で、制服の下にティーシャツを着ていない生徒の上半身は、何の色も見えていない。下着を着用していないからだ。


「おい、何とか言ったらどうだよ。張り合いがないじゃないか」

「え、あ、ああ……」


 男でノーパンって、ごわごわして気持ち悪いだろ? 

 だいたいなんでノーパンなんだよ……。こいつ、変態なのか?


 いや、それよりも……。これはチャンスなのかもしれない。

 役に立ちそうにないこの能力を活かすチャンスだ……! 関口君に日頃の恨みを今こそ晴らしてやろうではないか!


「……なんだよ、すっかりおとなしくなって。ま、君が静かになってくれるんなら、僕としては快適で喜ばしいことだけどね」

「………………」


 関口君がノーパンであることは、恐らくこのクラス……いや、学校内で俺しか知らない。他の誰もが持っていない関口君の弱みを、俺は持っているのだ。

 この弱みを利用すれば、俺は関口君にぎゃふんと言わせることが可能! ついに復讐を果たせるのだ!!


 しかし、ここで一つ問題が浮かび上がる。

 関口=ノーパンという情報をどう利用すればいいのかだ。

 

 仮に、俺がみんなに関口君がノーパンであることを教室で言いふらしたとしよう。

 関口はノーパンだぞー! パンツ履いてませんよ~! 俺の前の席の人はパンツを履かずに学校来てますよ~!! ……だなんて俺が言ったところで、俺の頭がおかしくなっただけと思われておしまいだ。


 かといって、俺の頭がおかしくなったと思われないよう、紙に「セキグチ・パンツ・ハイテナイ」と書いて、みんなの机の中にこっそり入れたとして、誰が関口君のパンツの有無を確かめるというのだろうか。そんな物好きがいたら教えてもらいたいところだ。


 つまり、ノーパン情報を持っていたところで、関口君が本当にノーパンであることをみんなに証明しなければ意味がない。俺は復讐を果たせないのだ!


 さあ、どうする? どうやってノーパンを証明する!?

 考えろ俺! 脳をフル回転させろ! 思考を続けるんだ! 

 

 関口君のズボンが急に破けるなんてことは起こりえないし、窓から入り込んだ強風によって関口君のズボンが吹き飛ばされるなんてこともありえない。

 俺以外の誰かが、関口君のズボンをいきなり脱がすことも考えがたい。中学生ならともかく、高校生でそんなイタズラするやつはいない。


 ああ、そうか……。人生を変えるには、ただ周りの環境が変わることを待っていては駄目なんだ。他人任せで変わるほど、人生は甘くない。俺の人生は俺の行動によって変えるんだ。

 

「クク、クククク……」

「な、なんだ、気味が悪いな……。さっきからいつも以上に変だぞ、ゆうすけ」


 俺は決めた。決意した。

 他でもない俺自身が、関口君のズボンを脱がす……!!

 その果てに俺は、望むべき未来を掴み取るんだ!




 作戦決行時間は、一時限目が終わった直後。

 関口君はいつも一時間目の休み時間にトイレへ行く習慣がある。

 俺は関口君が席を立ったところへ背後から近寄り、関口君のズボンをずり下ろす!

 そうして関口君は、教室のど真ん中でおてぃむてぃむを晒すことになるのだ!


「では、今日の授業はここまでにします。次回は最初に小テストやるからな~」

「え~! 小テストやんのかよ~」


 ぶーぶーと文句を垂れ流す生徒たちを横目に、教師が荷物をまとめて教室を後にする。

 一時限目の終わるチャイムの音が校内に鳴り響く。 

 

 「ふぅ」と一息ついた後、席を立つ関口君。

 ゆっくりと立ち上がり、息を殺して関口君の背後に忍び寄る俺。


 構える。前傾姿勢を取り、狙いを定める。

 躊躇してはならない。ズボン破り裂くつもりでずり下ろせ……!


「……みんな、俺を見ろおおおおお!!」


 俺は大声で強く叫んだ。みんなの注目を集めるべく、喉が壊れてしまうほど強く! 


「は……?」


 背後から発せられた大声に、びくっと反応して立ち止まる関口君。

 だが、今更警戒したところでもう遅い――。


 なぜなら、俺の攻撃は既に完了しているからだ……!!


「うおおおおおおおおおッ!!」

「ちょっ、おま……!」


 関口君……。お前の敗因はただ一つだ。

 それは、俺を怒らせてしまったことと、ズボンのベルトが緩かったことだッ!


「曝け出しやがれぇぇぇぇェェェェェェえ!」

「や、やめろぉぉぉォォォ!!」


 直後――時が止まったかのように、教室内は静まり返った。

 ある者は、関口君の下半身を凝視し。

 またある者は、関口君の下半身に切なげな眼差しを向けた。

 驚愕を隠せぬ者、ただただ状況が受け入れられぬ者。様々な反応をその顔に見せるクラスメイトたち。

 

「せ、関口……。お前、なんで……」

「どうしてパンツ、履いてないんだよ……!?」


 ようやく数名が声を発して、沈黙が破られる。

 男子の嘲笑と女子の悲鳴が混ざり合い、教室内のざわめきは大きくなっていく。


「ぎゃはははははは! ノーパンだぜ、ノーパン! こいつノーパンで登校してんのかよ」

「関口、お前すげえな! 見直したぜ! ……ぷっ、くくくくく!」


 突如としてクラスメイトにノーパン、もといフルチンを公開することになった関口君。

 彼は気が動転するあまり、おてぃむてぃむを隠すこともせずに呆然と立ち尽くしていた。

 しかし、ようやくこの事態が非常にまずいことを理解したのか、


「ちっ……、違うんだこれは! たまたま今日は、パンツを忘れて……」


 苦し紛れの弁明を始めやがった。

 まったく、笑えるぜ! 俺を散々舐め腐っていた関口君が、下半身丸出しで釈明中とはな!

 

 よし! 俺もテンションが上がってきたぜ! 

 ずり下ろしたズボンから手を放した俺は、立ち上がって関口君に向かい、


「え~~~~? 何が違うんですかぁ、関口くぅん? 昨日や一昨日は関係ないでしょうに。今日関口君がノーパンなのは、疑いようのない事実なんじゃありませんかねぇ……?」

「て、てめえ……!」


 俺の煽りを受け、関口君がもの凄く怒った形相をする。

 ははは! フルチンでそんな顔されてもまったく怖くねえぜ!


「許さない……。絶対許さないぞ、ゆうすけ!」

「俺は別に許されなくっても構わないぜ。それより、関口君は早く考えた方がいいんじゃないか? 誰もが納得する、パンツを履かない理由をさぁ!」

「ぼっ、僕は、ただ……。締め付けられるのが嫌いなんだよ! そうだ、開放感だ! 開放感を求めていただけにすぎない! 文句あるかてめーっ!」


 こいつ、開き直りやがったぞ!

 何かと神経質な関口君は、下半身も神経質だったらしい。

 

「文句はないよ。でも、なんかその言い方は引っかかるなぁ。今日だけではないんじゃないの、ノーパン登校」

「そっ、それは……!」


 これまでもノーパン登校していた疑惑が浮上し、クラスの女子たちから「え、まじありえないんだけど!」という声や、「やだ、キモイ!」といった声がチラホラ聞こえ始める。

 関口君はというと、顔を真っ赤にして今にも泣いてしまいそうだ。

  

 ああ、愉快だ……! まったくもって愉快愉快! こんな晴れ晴れとした気持ちは久しぶりだ!!

 

 こんな良い気分になれたのも、下着の色が見える能力のおかげだぜ!

 この能力で、俺の人生は変わった。今この瞬間だって、俺の視界に映る全ての下着の色は丸わかり!

 あの子のパンツも! あの子のブラも! 全部全部ぜーんぶわかる! 

 この能力に例外はない! 下着なら誰の下着だろうが、色が――――

 

「………………あれ?」


 あれれ、おかしいなぁ。

 なんとなく、自分の下着の色を見てみようと俺は頭を下げてみたんだ。

 そうしたらさ、下着が見えないんだ。ズボンしか見えないんだ。

 

 え? それが普通だって? 

 いやいや、俺には下着の色が見える能力があるんだ。ズボンを通り越してパンツの色が見えるはずなんだ。

 でも見えないんだ。ああ、そういえばずーっとごわごわと違和感があるなと思っていたんだ。この違和感はノーパンを経験していないとわからないものだ。

 

 関口君のノーパンに対し、ごわごわしていて気持ち悪そうと思ったのも、俺がノーパン経験者(現在進行系)だからだったんだ!

 

 そう、俺はノーパンだったのだ!!

 

「ちくしょう……。ちくしょう……! ゆうすけ、君のせいで僕の学園生活はおしまいだ……!」

「え、ああ……?」


 自分自身のノーパンに気づいた俺は、関口君の言葉に上の空で応える。

 もう復讐なんてどうでもいい。パンツを履いていないという状況が、俺の股間と心を不安にさせる。

 

「もう、どうにでもなっちまえ……! はは、ははははは! そうだ、僕はノーパンだ! ノーパン関口だ! だから、ゆうすけ――」

「……はい?」


 俺の上の空な反応に構うことなく、関口君は言葉を続ける。

 狂気を宿した瞳を真っ直ぐに俺へと向けて、両腕を前に突き出し、


「――――君もノーパンになれぇぇぇぇぇぇぇぇええええ!!」


 関口君は俺のズボンを掴みにかかってきた。

 

「ちょっ、らっ、らめぇぇぇぇぇぇえええ!」

「ははははっ! ノーパンはいいぞォ! 君もノーパンになって、ノーパンゆうすけになるんだ!」

「い、意味がわからねえよ!」


 ガシッと関口君の両手が、俺のベルトに引っかかる。

 ベルトごとズボンが下方へ引っ張られることで、下腹部が強く圧迫される。

 関口の野郎、めちゃくちゃ力入れやがって……! このままじゃズボンが脱げる前に、内臓が飛び出ちまう!

 

「わ、悪かった! 俺が悪かったから、その手を離せ!」

「はははははは! そうか、そうだよな、ベルトを外せばいいんだよなぁ!」

「おっ、おい……! 何を――」


 関口君はカチャカチャと音を立てながら俺のベルトを外しにかかる。

 必死に抵抗を試みるも、吹っ切れて脳のリミッターが解除された関口君の馬鹿力を前に為す術はなく。


「よし、外れたぞ! 脱げぇぇえええ!!」

「あっ……!」


 次の瞬間、俺のズボンは勢いよく脱がされた。

 露わになる下半身。

 下半身に集まる視線。

 

 ……ああ、すーすーするなぁ。ひんやりとして気持ちがいいなぁ。

 でも、どうしてだろう。

 開放感よりも、人としての大切な何かを失ってしまったような……。

 

「はは。はははは! これは驚いたよ、ゆうすけ! 君も僕の仲間だったんだな!!」


 関口君が満面の笑みを浮かべながら、俺の肩をバシバシと叩く。

 そんなに嬉しそうな姿を見せられると、俺も嬉しくなってくるぜ!

 

「おっ、おい……。こいつもノーパンかよ!」

「クラスに二人もノーパンがいるってどういうことだよ!?」

「まさか、他にもパンツ履いてないやつがいるんじゃねえだろうな?」


 関口君のノーパンが開示された時とはまた違ったどよめきが、教室内に沸き起こる。

 誰もがこんな事態、予想していなかったのだろう。みんながみんな、何が何やらといった様子だ。

 

「おっ、俺はノーパンじゃないぞ! 何なら、パンツ見るか!」

「見せなくていいわボケ! これ以上ノーパン男子がいてたまるかよ!」


 能力によって俺にはわかる。これ以上ノーパン男子はいない。

 このクラスでノーパンなのは、俺と関口君の二人だけだ。

 

「……そうだ、関口君。俺とお前は同志だ! ノーパンブラザーズだ!!」


 下半身が急速に冷やされたことにより、俺の脳は未だかつてなく冴えていた。

 この事態は俺にとって、必ずしも最悪なものじゃない。

 そもそも、俺が一番望んでいることは何だっただろうか?

 

 ……そう。穏便で円滑な人間関係だ。

 俺は奇跡的に得た能力で、関口君に復讐を果たそうとした。けれど、それで満たされるのは短期的な満足感だけだ。

 俺がこの能力で本当に自分の人生をより良いものにしたいと思うのなら、能力を復讐に使うだなんて選択、してはならなかった。

 

 俺はこの能力を、もっと長期的な視点で活かさなければならなかったんだ!

 能力をきっかけに、関口君との人間関係を良好にする。

 復讐なんかよりも良い方法が、確かにここにある!

 

「ゆうすけ、君ってやつは……」

「関口君、今まで悪かったな。俺はようやくわかったんだ。これが俺たちの在るべき姿だって」


 嘲り笑う声も、冷ややかな眼差しも、ノーパンで通じ合った俺たち二人にとっては取るに足りないことだ。

 目と目を合わせる俺と関口君。

 ガシィッ! と手を強く握り合い、俺たちは同時に言った。

 

「ノーパン、最高ーッ!!」


 そして俺と関口君は、一週間の停学処分を受けた。


 

 

 これは余談だが、関口君とノーパン仲間になって数日後に俺の能力は失われた。

 きっとパンツの色が見える能力は、神様が悩める俺にくれたプレゼントだったのだろう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

能力者といえば争うイメージが強いですが、やっぱり平和が一番ですね!

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