精神は大切
これからちゃんと物語をすすめていこうと思いますのでお願いします。
「はぁはぁ、彩夏のやつどこまで行ってんだ、まったく。『目視転移』」
こんな感じでさっきから葬送は目視転移を使って彩夏との距離を詰めていった。ここは街道付近なので視界を遮るものもなくかなり見渡しがいい場所なので一度の転移で500mは進んでいた。
このまま行くとたった10回ほどで追いつくという計算になるのだが、残念なことに葬送は方向音痴だ。しかも重度の。
いちいち転移したら方角を確認し、何処に飛んだらいいかを考える。
そのせいでスムーズに行けばほんとにチョイチョイっと行けるはずはずなのに葬送はその7倍も時間がかかっている。
あと、葬送は知らないが、MPが0になっている時はステータスに下方修正がかかりほとんどのステータスが(1)になってしまうのだ。
その為MPを使わない転移スキルも体力切れで連続して使用できなくなっているのだ。
そしてもうひとつ。MPの回復についてだ。MPの回復は、1回復するのに何分かかる。というのではなく全て回復するのに1日(固定)という法則で動いているので最大MPが1ということはそれだけMPの回復が遅くなるということだ。
だが、そんなことを知らない葬送にとって、
「ああ!いらつく。本当に面倒臭い。転移って全然使えないじゃん。いちいち疲れるし。」
ステータスの下方修正が効いていることなど知らない葬送は転移というスキルを使うとすぐバテるものだと思っているのだ。
まぁそんな少しばかり頭のネジが抜けていそうな葬送も頑張り、ようやく彩夏を目視できる場所まで移動することができた。
「はぁはぁ、良かった!……あ!さっきの恨み絶対晴らしてやるからな!」
彩夏を無事に見つけることができて喜ぶ葬送だが、忘れてはいけない。
そう!さっき彩夏に身代わりにされたあの恨みを!葬送は一瞬忘れていたようだったが。
「さてさて、どんなことをしてやろうか。…そういえば」
ニヤリ
そんな効果音をつけたくなるほど悪い笑みを浮かべた葬送。
策士葬送再びここに参上!である。
『目視転移!』
そして、葬送は彩夏の後ろに音も風も立てることなく到着した。
恨みを晴らすべく「彩夏復讐計画プランA」を選択した。
もちろんプランAといっているのでプランは他にも用意していた。ただ、プランBまで…
そしてそのプランAとは、
「スキル『恥さらし!』」
策士葬送が考えたプラン。それはよく分からない葬送のスキルの一つ、「恥さらし」である。なぜ持っているのかすらも不明なスキルだが名前が名前だけにきっと相手に恥をさらさせるスキルなのではないかと考えたのだ。
そういう考えより使った結果は…
「わ!なに!あ、そうくん。さっきは逃げてごめんねテペペロ。あ…そうくん。その、すごく言いにくいんだけど、ズボンの前が破れてる…」
相手に恥ずかしい思いをさせようと思ったら逆に自分が恥ずかしい思いをしてしまうという。
しかも女子の前でだ。
これほど恥ずかしいことがあるだろうか。いや、ない。いや、ない!
(…なぁりりあ、このスキルって、)
『あら、言ってなかったかしら。そうよ、お察しの通りこれは自分の恥をさらすスキルなのよ!』
まさかと思い聞いてみた葬送だったが嫌な方の予感は当たりこのスキルは自分に向けてのスキルだったのだ。なんと意味のない。
そのことに最近気の短い葬送は、
(ほぅ、知ってて話さなかったのか。ならそれ相応のお仕置きが必要だよなぁ。『天使化!』りりあに命ずる。彩夏の体を支配し土下座をするのだ!)
実態を持たない精神生命体は高位なものであれば数秒間ならば誰かの体を支配することが出来る。これは天使化のスキルを得たことで新しく分かった情報である。
そうして、葬送はりりあと彩夏に土下座をさせるという一度に二人を辱めることが出来るというプランBを選択したのだ。
しかし、いくら恨んでいるとはいえ女子たちに土下座をさせるのは男としてどうなのだろうか。
「『ちょっ、やめて!…ご、ごめんなさい。』」
「ふははは、いい気味だ。…よしもういいや。顔上げて―、そうくんは皆のことを許しましたー。」
一瞬ブラック葬送が垣間見えたのだが、その直後には恨みが晴れたのか、普通に戻る…どころか逆に壊れてしまった。
さぁどうしたことか、どうして異世界にきてたった二日でここまで人格が変わることが出来るのだろうか。
異世界にきて浮かれているのか、異世界に来たストレスなのか、それとも二人のレディによるいじめが原因か。
どれにせよこれは精神的なダメージによるものだろう。
ギュ
「ごめんねそうくん。もうしないから…ってことで仲直りしたからギルドに報告に帰ろう!」
壊れた葬送を後ろから抱きしめた彩夏。
謝って反省したのだろうかと思った直後、何事もなかったかのように話すことのできる精神力。すごい、すごすぎる。
「わかった!あやちゃんギルドに行こー」by葬送
こうして、葬送たちはクロエムの町の冒険者ギルドへと帰っていったのだった。