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2クール半ばで不本意ながら唐突に訪れる、よくあるアレ

「・・・・・」


なんの前触れもなく

もっさり現れたソレに俺は思わずため息を付いて空を仰ぐ

青い空を見上げると、高く高くはるか上空を、羽ばたく白い鳥が見えた。


仕方ない、アレやるか・・・

もさっとしたアレに全く動じす真っ直ぐ前を向いたウサミミ少女の方を向き

元気よく俺は語る。


「それじゃ、今までの旅のことを振り返ってみようか!」


「一体なんの話です?」


「いや───、まぁ。なんとなく?」

宣言って必要だと思うんだよね、俺は。



今回からご覧になってる観測者様へ、とりあえずこの冒険の書を詳細かつ克明に

ご説明申し上げよう。こう見えてオレは律儀なイケメンメガネなんだぜ。


何らかの理由で絶命した俺は、よくある臨死体験をへて、ここで目を覚ます。

隣にはイケてるウサミミ少女。どうやら異世界物ってやつらしい。

ただ残念なことに、最初に出会うお約束のキャストである神的存在が

ウサ子が言うには十数年前に逃亡。



つまり、目的や理由を全部、棚上げいや───、取り上げられたまま

この異世界物は、最初の一ページで物語が閉じているのだ。



この場所、半径400m程、超たっかい所にある、色が白いまっ平らな地面。

うさ子が言うには先月辺りまでは、500m程有ったらしいが

ここ一ヶ月で100m程、急激に()()んだらしい


真ん中辺りに平行に並ぶ朱と青の古いベンチ、その向かいに

二代目と張り紙された古い林檎箱にぺらぺらな古座布団そして、その後ろ。

この地平のど真ん中に、今回新たに顕現なされたニューカマー!林檎の巨木。

思わず歌いだしたくなるほどに、気になる木だ。


なぜ林檎の木だと分かるかって?そりゃ真っ赤な林檎が3つ実ってりゃな。

以上、説明おわり。


まぁ───、それしか無いんですわ。この異世界。



この世界、世界って言うほど立派なもんじゃないけど

俺たちの居るこの場所の仕組みがこれまで起きた事象の数々によって

徐々にだが分かってきた気がするが───

突然現れたこの林檎の巨木を、俺はどう理解したらいい?


いや───、理解なんてやめておこう。

どーせ俺にとってはマイナス要因でしかないんだろうさ。


そんな世界で、俺とうさ子がいつも居るのはその中心。

今となっては林檎の木の下と言えるそこに何故俺たちはいつも居るのか?


まぁ別に、限りなく地平の端に拠点、そうね───、たとえばこの場合

朱と青のベンチを移して、うさ子と吊り橋効果的に必然的な恋に落ちるのも

いいかもしれないが、中心部に居なさいと言わんばかりに

ベンチなど、人が使うものが樹の下に集積してるあたり、たぶん───

この世界では、地の利を活かした俺の恋愛戦略はありえないんだろうな。


とまぁ、俗にいう異世界物の最初の一コマ目しかない閉じたココで俺は

世界の中心で愛だの恋だのを叫ばせても貰えない、というわけだ。



「・・・・」



恋愛物語の可能性模索する俺を、隣のベンチからうさ子が

ジト目で睨んでるのでこの話はここでおしまいだ。

いいか?二度としない。

彼女は俺の心を殺す天才なんだ。



「んあー・・・。」



───にしても、さっきから、林檎の巨木の後ろからなんか・・・

視線を感じるんだが? そりゃもう見つけてくださいと言わんばかりに───。


うさ子もそれを知ってか、彼女はその木に向かって真っ直ぐ向けられた視線を

ゆっくりと俺に見つめ直した。


俺は頷き、うさ子の座るベンチの前までゆっくりと赴くのだった。


「あぁ、解ってる。その前にうさ子、大事な話がある。」


うさ子が巨木の裏より向けられるその視線の元を、細く小さな指で差すのを

制するように俺はその華奢な手を包み込むように、両の手で柔らかく握る。


「神さんに先日の、観測者の話をするのはやめようと思う。」


俺はうさ子の耳元でそう囁いた。

この場合の耳元が、一般的な耳の位置か彼女の頭の上のそれを指すのか。

とうぜん前者だということは──、皆様にお伝えしておこう。


「何故・・・です?」


「神には、あまり色々なことを考えずに、自由に書いてもらいたいんだ。」

「そりゃ書いちゃダメな事も有るだろう、表現に苦労することも有るだろう。」

「でもな、そういった(しがらみ)で、この世に無い物を新たに作るっていう」

「貴重な経験や楽しみを、無くしてもらいたくないんだ・・・」


俺はそう囁いてうさ子の細い体を抱きしめた。


「メガネ・・・」


消え入るような声でうさ子が俺の名前を呼ぶ。

俺は彼女の腰に回した手を少々強引に自分に引き寄せ、彼女の小さな口元に

唇を重───


「これは、生殖行為の願望に基づく不埒な行いと解釈してよろしいのですか?」

「正当な理由を元に正義を執行しても、よろしいのでしょうか?」


普通にイヤっ!とか、ヘンタイ!て言えるようになろうね


巨木の幹の後ろで耳まで赤く染め

オロオロしながら覗き込むその顔の主に対し、小さな紅葉模様を頬に湛えた

俺は、若干ながらささやかなる勝利を感じたんだぜ!




では改めて

二代目創造主(神)は林檎箱製の玉座へ、俺は青いベンチへ、うさ子は・・・

まぁ動いてないので朱色のベンチに座ったまま。それぞれの定位置に着いた。

約一ヶ月半、この世界を事実上放置した事に、創作者は罪悪感を

感じているのか?

神はさっきから下を向いたままだ。



「・・・・」


「・・・・」



いいか、このまま俺が発言しないとな、神とウサ子の「・・・・」4万文字で

構成された現代アートを、この先2年ぐらい見ることになるぞ観測者様方。

そんなの見せられるのは、まず俺が御免なので、話を前に進めよう。



「神さんよ、いいや創造主」



沈黙を打破する俺の発言に神はビクッと肩を震わすも、真っ直ぐ真摯な面持ちで

こちらを見る。


「俺はうさ子と結婚した。今夜が初夜の予定だ。」


「・・・・はぇ───、は・・はぃ?」


「今すぐにでも死にますか?メガネ」


どうだい観測者?これが主人公様の力、パゥワーだよ。

自然に咲かない切り花の一部にはな、バーナーで茎を炙るとショックで

水が上がってきれいに咲くんだ。

会話という花g───



『ターン』


   ドサッ




「メ、メガネさん!!あのー・・ウサ子さん・・・何処からそのような銃を」


「神が下さぬならば我が下す。正義、執行。」




教訓:物語が停滞すると、主人公生死不明のまま総集編が展開される。








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