コンラッド攻防戦2
昨日は酷い目にあった…
そんなことを考え枕元に放り出したフルダイブVR用のHMDを見る。
そもそも、ディスプレイとは名ばかりで意識を仮想空間に送り込む為の物なのだが、昔の名残で呼び名は変わってないらしい。
意識を仮想空間にって正直よく分からないのだけど、身体に悪影響は無いのだそうだ。
なにせ、医療現場でも使われているそうだし。
なんにしても、昨日やったゲームProxy warはきっともうやらないだろう、凄い怖かったし。
リアル過ぎるのも考えものである。
ゆっくりと着替え、リビングへ出ると父はスーツで新聞を読み、母はちょうどご飯を並べているところだった。
「おはよう、父さん、母さん。」
「おはよう、陸。」
「あら、おはよう。ご飯出来てるから食べなさい。」
「うん、頂きます。」
これが、我が家の朝の風景、代わり映えしない、けれどもどこか落ち着く何時もの朝だ。
「よし、今日はここまでだな。黒板写し終わったら消しとけよー。」
チャイムが鳴ると同時に教壇に立っていた先生は教科書とファイルを小脇に挟んで教室を出ていく。
「おいおい、どうしたよ陸。なんか、疲れてんじゃん?」
授業が終わると同時に話しかけてきたこいつは後ろの席の友人である信也だ。
小学校から高校現在までと結構長い付き合いになる。
「いやさ、信也が薦めてきたゲームやってみたんだよ。Proxy warってやつ」
「お、マジか!どうだったよ?凄かったろ?」
「うん、凄かったけど、リアル過ぎてね…凄い疲れた。正直もうやりたくないかなって。」
薦めてくれた信也には悪いとは思うけれど、怖いばかりで楽しくなかったのだからしょうがない。
「え?おっかしいな。そんなはずは無いんだけど…。」
なにか考え込む信也だが次の授業のチャイムが鳴り、席に戻っていく。
教壇にはいつの間にやら次の授業の先生が立っていた。
「わかったぜ!陸!」
そう言って信也が飛び込んできたのは昼休み。食堂でカツ丼を食べている時だった。
「わかったって…何が?」
「ほら!さっき言ってたろ、リアル過ぎるって。あれ多分リアリティー設定高めになってるんじゃないか?」
リアリティー設定?
聞きなれない言葉に思わず首を傾げる。
「何、それ。」
「文字通りの現実感の調整?っていうのかな。どういう原理かは分からないけど、設定を低くすると現実感が薄れるんだよ。
もちろん高いとそのゲームが現実であるように感じられるんだけどな。」
「へえ、そんなのあったんだ。」
「だからさ、もっかいやってみようぜ?設定低くしてさ、俺も今日ログインするから、一瞬にやろうぜ!」
頼むわ!と顔の前で合唱。
「んー、そう言うことならまた、やってみるか。」
「まじで!やった!」
ただし
「少しでも無理だと思ったら辞めるからな、おっけー?」
「おっけーおっけー!」
よっしゃー!とガッツポーズで喜ぶ信也をみていると、少しは頑張ってみるかと思えた。