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Proxy war  作者: くーがー
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コンラッド攻防戦1

ミリタリーとか余り詳しくない(ゲーム知識のみ)ので、気になったところがありましたら是非ご指摘お願いします。或いはこういった戦いが見たい!という要望などありましたら是非。行き当たりばったりで書いております。

あの日の事は、今でも鮮明に覚えてる。


レンガ調の家々が建ち並ぶ町を、必死に駆けていたんだ。

脇目も振らず、上手く肺に酸素が入らなくて、ボーッとする頭と感情を押さえつけて。


家々を反響して体に叩きつけてくる爆発音。耳許を掠める弾丸。


それらから逃げていた。恐怖を押さえつけながら、ただ足を動かしていた。



最初は、一人じゃなかった。


自分と同じ傭兵達、それも新兵ばかりの部隊に配属された。

人数にして50数名の一個中隊だ。

皆、新しい迷彩服に身を包み、その手には黒光りする銃が握られていた。


あるものは大声で歌を歌い、あるものは回りと会話する。

各々が好きなことをしつつも進んでいた。ただ一つだけ、同じであったのはここにいる全員が、これから起こるであろう出来事に期待していたのだ。


その場所はすでに、戦場であると言うのに。


一瞬だった。


轟音と、光。瞬き一度程の間を置いて衝撃と熱が全身を襲い吹き飛ばされた。


次に目を開けた時に見えたのは、大きなクレーターと前を歩いていた仲間達が倒れている光景だった。


呆然。からの恐怖。


先程まで、確かに会話していた仲間達がそこで倒れている。そして、あと一歩進んでいたら死体の仲間入りをしていたであろうことに。


それからは、爆発から逃れた仲間達とも散り散りになりつつ走った。

ただ怖くて、逃げ出したのだ。





もう走れない。そう思ったときだ。

建物の影から手が伸び、引きずり込まれた。


「やめッ…!」


思わず言葉を発したが口を塞がれてしまう。


「落ち着け、仲間だ。」


そう言った男は静かに、と人差し指を口許に立てながら口を塞いでいた手を離す。

そこは裏路地の様な場所だった。自分を引きずり込んだ男以外にも数名、それぞれが路地の入り口を警戒している。


「仲間?…それじゃあ、ネクプラスの方ですか?」


「傭兵だから、正確には違うけどな。あんた、新兵だろ?初戦か?」


男からの問い掛けに頷くと、ついてねえな。と男は苦笑する。


それもそうだ。周囲は敵兵に囲まれている絶望的な状況。そんななか新兵など邪魔にしかならないだろう。


「あー、多分勘違いしてるだろうから言っとくけどな、ついてないのはあんたの事だぞ?

まあ、とりあえず自己紹介だ。どうせ短い付き合いになるだろうけどな。」


男はそう言って手を差し伸べる。


「仁兵衛だ。今回は工兵として参加してる。」


「…リックです。」


お互いに握手し、自己紹介を済ませる。他の人達は手をあげて挨拶してくれる。…いい人達だな。


「それにしても、リックか。あんた本当ついてないな、初戦で死神部隊とは…」


「死神部隊?何ですか、それ?」


名前からして怖そうだ。


「有名な傭兵団だよ。出会って生き延びたヤツは居ないってんで死神部隊って呼ばれてる。

んで、この戦場には奴らが来てんのさ。運の悪いことにね。

連中どうやったのか、ジャミングされて通信機が使えない。その上、鬼の様に強くてな。もう殆どネクプラス陣営は残ってないんじゃないか?」


通信不可能。絶望的だ。

なにせ、後方に状況を知らせることができず、応援要請も出来ない。


「隊長、本格的に不味いですよ。音が消えた。」

「くそっ、速すぎるな…。」


音が消えた?

一体何の事を話しているのかと思考するも、すぐに気付く。


先程まで五月蝿いくらい響いていた爆発音、銃声が聞こえなくなっていた。


「わかったか?リック。

そう、ここは戦場だ。戦場で音がないのは異常なんだよ。つまり…」


…市街地の味方は、戦闘不能になっているということ。自分や仁兵衛さん達のように隠れている可能性もあるがそれでも、ほとんど残って居ないだろう。


「どうするんですか?これから。」

「どーしたもんかね。孤立無援で四面楚歌と来たもんだ。」


やってられんな。と仁兵衛は無精髭をなぞる。


「…尾長、朱木、状況知らせ。」


「尾長、異常なし、敵影ありません。」

「朱木、同じく異常なし。敵さん退いたみたいよ。」


と、路地入り口を警戒しつつも二人の声が帰ってくる。


「よし…走るぞ、お前ら。

ここからなら西門まで10分ってとこだ。死神にバレる前にさっさと離脱する。いいな?」


「「「了解」」」

「りょ、了解!」


走って10分…行けるか?いや、行くしかない。いつ、敵が戻ってくるかも分からないのだから、腹を括るしかないんだ。


恐らくは緊張が顔に出ていたのだろう。

仁兵衛さんは苦笑しつつも、自分の肩を叩き


「そう、気張るなよ。あんまテンパってると転けるぞ。」


まったくだ。気楽に行こうや。と他の隊員の方も緊張を解そうとしてくれる。

ここが、戦場ではないと錯覚してしまいそうな位には暖かな空気が流れていた。



「よし、総員準備はいいな?

カウント10で飛び出すぞ、尾長、カウント頼む。」


「了解。9、8…」


仁兵衛さんを筆頭に、尾長さん、朱目さんと続き最後に自分の順番で

肩に手を置いて並ぶ。


「7、6、5…」


カウントが進むにつれて、手を置いた肩越しに皆が緊張するのがわかった。おそらくそれは仁兵衛さんとて例外では無いのだろう。


「4、3、2…」


ゴクリと、誰かが喉を鳴らす音が聴こえた。


「1…」


ゼロ。


その瞬間、仁兵衛さんを筆頭に飛び出した。

飛び出した瞬間…






仁兵衛さんが倒れた。



一拍置いて空気が爆たかのような乾いた音が響き渡る。


「…っ、え?」


困惑。そして理解。


広がる血溜まりをみて()()()()のだと、理解した。

恐らくは、後頭部から綺麗に頭を撃ち抜かれたのだ。


「狙撃されてる!走れ!」


誰かの叫びで我に帰り、弾かれたように走った。


それが、僕の初戦であり、死神との出会いだったのだ。













ターン!と空気が破裂するような音が響く。聞き慣れた音だ。


「ターゲット1、ヘッドショット…確認。」


誰が聴いている訳でもないが呟き、報告する。


鈍く光るボルトを引き次弾の装填を済ませ、何時ものようにスコープを覗き、対象の頭に合わせ、トリガーを引く。

再度破裂音が響き、対象が前に倒れる。


「ターゲット2、ヘッドショット…確認。」


狙い、撃ち、装填。

もはや作業と化したその工程を淡々と、かつ丁寧に行っていく。

対象の行動など問題ではない。走っていようが伏せようが、見えていれば撃ち抜ける。

事実これまではそうだった。そしてこれからもそうだ。


「上手い…。」


しかし、彼女は逃した。いや、逃がしたのではない、()()()()()()のだ。

それは、建物や瓦礫、あまつさえ仲間すら隠れ蓑にして狙いを絞らせないように立ち回って見せた。


『あー、あー、マイクテスマイクテス。静流さん聴こえますかー?』


突如、耳許より聴こえる声に少し驚くも、いつもと変わらぬ声音で答える。


「…聞こえてる」

『おー!よかったよかった。漸くバラまいたチャフの効果が消えたようでして、確認ついでに通信をと思ったわけですよーはい!』


相変わらず五月蝿い、と思うも何時ものことなので気にしないようにする。


「こっちは終わった…けど、逃げられた。…一人。」


え!?と通信機越しに驚きが伝わる。


『静流さんが逃がすとは…まあ、増援までの時間稼ぎは十分ですし、いいでしょう。

それ以外のターゲット4名はしっかり落としたんですね?』

「…もちろん。逃がしたのは多分新兵。兵装が初期のそれだったから…間違いないと思う。」


獲物を逃がした。

その感覚はえらく久しい気がして自然と口許に笑みが浮かぶ。


『新兵ですか!それはいい!是非うちに欲しいですね!』


ははは!と彼は冗談めかして笑う。


『敗戦濃厚のところを押し返して殲滅、通信妨害で本隊の到着も遅らせました。死神部隊としては十分な働きでしょう。

それじゃ、本丸で待ってますんで速く帰ってきてくださいねー。これ以上はサービス残業になっちゃいますので!』


ブツッと電子音が鳴り通信が切れる。

報酬分は働いた。そう言うことなのだろう、私も戻ろう、と愛銃を手に取り立ち上がるともう一度西門の方を見た。


あの新兵はこれからどうするのか、再び会えるのか。と、死神部隊として動き出してから初めて逃した獲物を思い。


死神部隊ナンバー2、不可視の死(インビジブル)と呼ばれる彼女は微笑んだ。


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