刻むは錆び世
止まる時計の針を指で押す。
残された二本の針が褐色の指に追いやられ、重なり合って流れ出す。
真実になりえぬ偽りの時間。
住むも叶わず。詠むすら叶わず。
問えば望みを返し。望めば妄言を吐く。
吹きすさぶ灰色の風に打たれ、針は錆びを訴える。
一層褐色を纏う指はそれに応えず盤をなぞる。
意味もなく、時もなく。標を失くした針は巡る。
一に止まれば後悔し。六に止まればやり直し。
繰り返し、繰り返す。
錆びに割かれ朱色が飾る。
終に盤の数も穢れ、針押す指も止まる。
ならば、すべては。