仲間
荒れ果てた地、城だったものの瓦礫の山。
城壁もなにもない。本当の荒れ地となってしまった我が国、
シェリエ。
襲撃してきたものたちも荒れたこの地の復興もできず人もおらずで手付かずにされた。
昔話では、ここに最厄が眠ると言う伝説もある。
「シュレイツ殿下...いえ、王様。この地へ足を運ばれましたがいかがなさいました?護衛の我々にも目的を教えてください。貴方を守りたい志は皆同じです。」
後ろに控えていた騎士、バロンが声をかけてきた。振り返ると皆一同に不安そうな顔をしていた
。
「それはすまないことをしたな、本当だったら一人でいく予定だったのだがな。」
とこぼすと彼らはいけません!!と声を揃えて訴えてくる。
「あなたはこの国の希望。決して失ってはならない方なのです。我らがいない間に御身になにかございましたら民と妹君に顔向けできませぬ」
「そう、ありがとう。でも、俺がいなくても世界は回る。顔向けできなくてもこの国を守る騎士だろう、ちゃんと民を導け。それが君らの仕事だよ」
彼らはなんともいえない顔をした。ボコッと頭を殴られる感覚がした。それは容赦がされておらず、ズキズキと痛みが主張してくる。
「レイ!お前よくあそこまで俺に説教しておきながら自分がどうなろうとどうでもいいなんて言い方できるな?ん?わかってる?」
顔をそちらに向けると怒った顔をしベルがいた。
ベル、ベルシェーマス=ジェルモント。彼はシェリエ帝国に仕える貴族の三男で捻くれていたところを拾った。言い方は悪いが出会い頭に貴族だの王族だの糞食らえ!お前もそう思うよな!と俺にタメ口かつ上から目線で言ってくるやつは初めてだった。あれこれ言い合いをしていると母上に見つかり説教され、それからまぁいろいろあって家臣になってくれた良い友だ。
「この国が滅びるときお前が支えるといったんだろ。この国も国民も。背負う覚悟をしたんだろう。あの事件の犠牲を。お前には生きる責任も、国を建て直す責務もある。死なれたらその重みが俺にもマリーちゃんにもかかるだろうがこの野郎!」
「いったいなぁ、俺が軽率だった。でも相変わらず口が悪い。お前までついてくるとは思っていなかった。」
「マリーちゃんからお前の様子がおかしいと昨日の夜俺の部屋まで知らせに来たんだ。明日外には出るなと言われました、もしかしたら何か大変なことが起きてしまうかもしれないから兄様についてあげてくださいといわれてな。この後いったい何が起きるんだ?」
「奴から、手紙でマルクスが今日ここ来るんだと。あいつは俺を怨んでいる。そしてマルクスに真実を知られないようにきっと彼奴は、リュクスは近くにいると思う。だから俺はいかなくてはいけないんだ。」
後ろにいた騎士たちが息をのむ音が聞こえる。それはそうだろう。彼らの中には大事な友を失ったものも、家族を失ったものもたくさんいる。城下の皆を助ける代わりに城内の人々の避難は遅れ、亡くなった人も多くいた。リュクスが率いる内部犯に翻弄されたのも確かなのだ。
「そういうことなら余計に殿下一人で行かせるわけにはなりません。我らはあなたに仕え、あなたを守るためにいる騎士です。」
「本当にリュクスからの手紙か?大体どうやってお前の元に送って来たってんだ?」
「魔石の能力でそういうのがあると聞いたことがある。それにこれが届いたとき俺は発行した光が消えたとたんにこれが机に置かれていたんだ。その魔石に間違いはないだろう。」
そういえば、ベルはなるほど、と呟いた。俺が辺境の地にいた伯爵や、同盟を組んで、仲良くしていた隣国の王子と連絡を取っているのを知っていたからだろう。
「それと、付いてくるのは構わないが、マルクスとは一対一で会わせてくれ。お前たちは周囲の警戒、リュクスの位置の把握に力を入れてほしい。」
「それはお願いか?命令か?」
鋭い目つきで俺をにらむ。たぶん危険にあまり出てほしくないのだろう。
「すまないな、命令だ。だが彼奴を逃がしたくはない。頼むよ」
「「「「かしこまりました。我が王よ」」」」
彼らは一同に跪き、頭を垂れた。
「すまないな」
「ほんとだよ、馬鹿王め」
小さくこぼした声はめざとく拾われ、その返しに俺は小さく笑みを浮かべた。