彼の怨み今だ消えず
俺は、今や落ちぶれ亡国となった国の王子だった。少なくともあの日までは平和だった。
兄は厳格でありつつ優しくいつも俺と妹のマリーのわがままを聞いて、微笑んでくれた。
父は、王として国に尽くしている分、俺はそこまで思いでは少ないがいつも元気か?とか勉強の進みは聞いている、頑張っているな。と少しの時間であったが気にかけてくれていた。
母は、怖い人だった。勉強に厳しくいつも怒られていた気がする。でも抱き締めてくれた腕や褒めてくれた声は確かに愛情がこもっていた。
妹はいつも俺と張り合ってた。兄上の取り合いもしたし、勉強だって。でもいつも隣にいたアイツは、俺の片割れだった。
あの日、兄上の起こした過ちですべてが滅びた。
燃え盛る炎、人が積み重なり倒れている、剣がぶつかり合う甲高い音、呻き声、妹のぐったりする姿。謁見の間から血にまみれた兄。リュクスに抱えられた俺を見て睨み付けられた。その後に斬りかかってきた騎士たち。リュクスがなんとか倒すと兄が襲いかかってくる。殺すと静かに怒りを込めた声でそういった兄の姿はすごく怖かった。リュクスは攻撃を避けながら僕を抱えたまま逃げんことを選んだ。そして、リュクスに保護され、あの出来事の真相を聞いた。
下らない理由で家族を、国民を殺したアイツが俺は許せなかった。
必ず俺があの日の悔恨を晴らす。そして国を取り戻し、復興させる。
あの日以降、暫く辺境地の伯爵のところにお世話になり、その後、リュクスと共に難民として隣国の下町で暮らしていた。
「マルク、少しお話良いですか?」
念のため、リュクスからはマルクと呼ばれ、名もそうなのっている。何かあったときの保険だそうだ。
「なに?リュクス」
振り替えるとニコニコとした相変わらずの顔があった。約10年程俺の面倒を見て、いや、教師としていたときを含めると正確には12年だろうか?その長い間ともにいるがこいつが年を取っているのか未だに不思議なほど顔や姿に変化はない。
「あなたには酷なことを教えてしまいます。とうとう見つかりました。貴方の兄を」
「っ!!!どこに!どこにやつはいるんだ!」
「まぁまぁ、慌てないでください。彼は今あの因縁の土地にいるそうです。貴方のことです、すぐにでも乗り込むつもりでしょう?」
リュクスに突っ掛かったがこいつはいつもにこにこしながら何でもないことのように言う。それは俺を気遣ってか、はたまた何か思惑があるのか、なんにせよ今はこんなことどうでも良い。
「当然だ。俺はあの男を殺し国を取り戻す!!その為に、力を蓄えてきた、お前が一番よくわかっているだろう!」
「えぇ、私が助けたあの日から君の瞳には決して消えない炎が燃え続けていましたから。場所は、貴方の故郷。どうやら彼は志を共にする者たちと地下にこもっていたようです。」
「彼奴!!自分が滅ぼした国の地下にいるだと!?国民を殺し、父や母、妹まで殺したくせに!のうのうと!!許さない!今すぐに斬りに行く!!」
「今日は日も暮れています。明日の朝行きなさい。」
リュクスはにこやかにいった。こいつの家族だって友達だってあの事件で殺されたのに、なんで笑うのか、いや、今はそんなことはどうだっていい。明日やつの首を落とす。それしか考えられない。考えてはいけない。
明日、必ず殺してやる