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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ36.ページから飛び出せ! ~書籍の未来が変わる可能性~
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36-1.書籍の夢と、ページという“枠”

 コメント欄、感想欄を始めとして、読者の皆様からとても刺激的かつ示唆に富んだヒントの数々をいただきました。読んで下さいました皆様へ、そしてご意見を寄せて下さった皆様へ、感謝を込めて。


 書籍は永らくページという“枠”、あるいは固定観念に囚われてきました。

 ですが、その“枠”が外されつつあるとしたら?

 進化する書籍の明日はどっちだ!?

 書籍(出版物)といえば、これまでは紙媒体が永らく当たり前のものとして君臨してきました。

 電子書籍が登場したのはつい最近です。それにしたって、“ディスプレイを紙に見立てた”というだけのものに過ぎません。

 要は“手指で触る平面”、可能性がここに縛られていたわけですが。

 今回はこの書籍、その未来を巡る思考実験。よろしくお付き合いのほどを。


 まず書籍といえば、“平面上のもの≒紙”という固定観念がしぶとく根付いているものと私などは考えますが。

 果たしてその常識はいつまで通用するでしょうか。


 そもそもの可能性の始まりは『投影式キィボード』(※1)でありましょう。机にキィボードを投影すると同時に、指のタッチを検知するという優れもの。

 これはCUI(Character User Interface、文字インターフェイス)のヴァーチャル版と言ってもよろしいかと思いますが。


 この進化版とも言うべき製品が、2017年4月に発表されましたSONY『Xperia Touch』(※2)。壁や机に“マルチ・タッチ画面”を投影するというものです。もちろん投影した画面上のタッチ操作を検知して、画面が操作通りに反応します。

 つまりこれは投影式キィボードから一歩踏み込んで、GUI(Graphical User Interface)のヴァーチャル版が実現したと捉えることもできます。


 これのどこに夢が詰まっているかと言って。


 例えば資料書籍の置き換え。

 作業中に資料を漁るとしましょう。あまつさえその資料、特に写真などを凝視しながら作業を進めたいとしたら?

 例えばイラスト描き。人体の筋肉配置などは絶好の資料です。視界の端に捉えながらイメージを膨らませてみたいと思いませんか?

 例えば模型製作。実在のメカや設定資料などを横目に見ながら作業したいと思いませんか? フィギュアなら人体解剖図なんて絶好の資料ですね。

 が、冊子ではすぐに閉じてしまったり、あまつさえ写真や図が小さすぎて泣くこともしばしば。


 これが壁や机へ自由に資料を投影可能となったとしたらどうでしょう。

 それどころか、写真や図を思いのままに拡大・縮小できてしまうとしたら。


 インターネットのWEBサイトでもよく使われる手法――クリックやタップしたら拡大表示、というアレです。要は写真や図だけ別データとして切り分け、高精細データを収録するという考え方ですね。

 何も写真や図といった静止画像に限った話ではありません。動画だって収録できます。

 机上で資料を自由自在に拡大縮小しつつ、それを睨みながら作業するのです。


 さて、ここで気が付いた方もおみえでしょうが。


 この運用、電子データの方が相性は良好です――と申し上げると、まず思い浮かべるのは電子書籍でしょう。

 「ああ、あれね、タブレットとかPCで読むやつね。あれのどこがすごいわけ?」という疑問をお持ちの方もみえるでしょう――が。

 私がご提示したい可能性は、あんな枠に嵌まった形態のことではありません。


 これで書籍(電子書籍を含む)の何が変わるかと言って、“フレームの超越”です。紙面やディスプレイという大きさの制限が取り払われるのです。


 こう申し上げればよろしいでしょうか――ページという概念がなくなる、その時が刻一刻と迫っているのです。


 例えば、こんなソフトが既に出現しています。。

 『むげんメモ』(※3)では、“ページの枠に縛られることなく、ほぼ無限に書き足していけるメモ”を実現しています。

 書きたいことが何行に及ぼうが構いません。それどころか、折り返しすら考える必要もないのです。

 注釈を付けたり書き足したりしたくなったら、余白を拡大して書き込めばいいのです。無限に小さい(あるいは大きい)字で書き込みが可能です。もちろん、閲覧時には自由に拡大・縮小が可能ですから、頭の整理にはもってこい。


 これ、現状では限られた面積のディスプレイ上で使っているにすぎませんが。


 この可能性を書籍に持ち込めたとしたら、さてどうでしょう。

 すなわち、こういう可能性です――“無限に広いページで提供される書籍”。


 どこまでも拡大可能な図や写真を資料として使うことができたら?

 逆にどこまでも視点を引いてみて、いっそ大気圏外から眺める景色を収録できたとしたら?

 どんな余白にも思い付きや注釈をメモできたとしたら?


 『Xperia Touch』で実現できるページは、タッチ機能を保つという意味では23インチが限界ということですが。


 では、こう考えてみてはどうでしょう――画面をどこまでも拡大できたなら?

 次項では、その可能性について考察を巡らせてみましょう。


【脚注】

※1 http://www2.elecom.co.jp/peripheral/full-keyboard/tk-pbl042/

※2 http://www.gizmodo.jp/2017/04/xperia-touch-first-impression.html

※3 http://uia7.com/infinite-note/





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://ncode.syosetu.com/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

No reproduction or republication without written permission.

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