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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ35.未来が“印刷”されていく!? ~3Dプリンタが切り拓く可能性~
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35-1.3Dプリンタって? ――素朴な疑問

 コメント欄、感想欄を始めとして、読者の皆様からとても刺激的かつ示唆に富んだヒントの数々をいただきました。読んで下さいました皆様へ、そしてご意見を寄せて下さった皆様へ、感謝を込めて。


 3Dプリンタと聞いて「所詮は印刷でしょ?」などと侮るなかれ。

 とんでもない可能性がそこに秘められていると言ったら、果たしてあなたは信じますか――?

 “印刷”が生み出す未来の明日はどっちだ!?

 プリンタと言えばもはやお馴染み、インクを使って紙の上へと2次元情報を印刷するツールですが。

 今回は印刷は印刷でも、立体を“印刷”する3Dプリンタ、これが秘めた可能性を巡る思考実験。よろしくお付き合いのほどを。


 空中に立体描画――これはVR(Virtual Reality、仮想現実)ですでに実現可能です。Googleの『Tilt Brush』(※1)がそれを可能にするソフトウェアですね。

 描いた“立体画”はVRやAR(Augmented Reality)で視点を変えつつ鑑賞することが可能になります。


 これ、現実空間上でも再現可能――といったらどうお思いになるでしょうか。

 与太話? ――いえいえ至って真面目です。


 3Dプリンタ(※2)を使えばいいのです。

 もう少し詳しく申し上げるなら。VR空間上に描いた3次元画像を“設計図”として取り込み、3Dプリンタで“印刷”してやればよいのです。

 この3Dプリンタ、“プリンタ”とは呼ばれますが、通常言い習わされるプリンタ(2Dプリンタ)とは決定的な違いを持っています。

 それは何か。

 2Dプリンタは対象物――例えば紙――への着色を目的としているのに対し、3Dプリンタは“立体空間”における粒子の配置を目的としているのです。

 にも関わらず両者とも“プリンタ”と称されるのは、インクにせよ粒子にせよ、“然るべき位置に色素や粒子を配置していく”という意味において軌を一にしているから、と捉えることができます。


 “粒子”って言うけど、なんで立体じゃなくて粒子なの? ――そういう疑問もごもっとも。その疑問には、こうお答えしておきましょう――世の物体は、大なり小なり粒子の集合体なのです。その代表格が原子や分子。とはいえ3Dプリンタにそこまで細かい制御が期待できるかどうかは、その時代の技術レヴェルによるところ大です。なので、ここでは“粒子”という表現を使っています。最終目標は原子や分子と捉えていただければいいでしょう。


 ちょっと待った――そうおっしゃりたい向きもあるでしょう。空中にどうやって粒子とやらを固定するの? 普通落ちるんじゃない? ――そういう疑問をお持ちになった方もいらっしゃるでしょう。

 ではどうやって粒子の立体配置を可能にするのかといえば。

 いきなり空中に粒子を浮遊させることは、もちろん不可能です。よって“印刷”工程の間、粒子を下から支えるものが必要になります。

 よって、3Dプリンタが取りますのはこのような成形工程。


 まず、“印刷”する物体を水平に輪切りにした断面図、これを描いていきます。1つや2つでは到底足りません。それこそ無数の、具体的には“印刷”に使う粒子の積み重ねる層の数だけ、断面図を描くのです。ちょうどCTスキャン(※3)やMRI(※4)で得られる断面図の連なり、あれを思い浮かべていただくとイメージしやすいかと。


 次に、実際に粒子を3Dプリンタで配置していきます。

 まず最初は土台となる最底部から。

 次にちょっとだけ上、粒子の厚み分だけ上がったところへ。

 次にもうちょっと上、もう一段階だけ、これまた粒子の厚み分だけ上がったところへ。

 以下繰り返し。


 無数の断面図を積み重ね、物体を立体空間上に“印刷”していくのです。ちょうどこの断面図が“印刷”という単語のイメージに合いますね。3Dプリンタとは“無数の断面図を“印刷”し、それを積み重ね行く機械”だと捉えれば、なるほどこれも“プリンタ”には違いないわけです。

 ここで肝となるのは、完成後に“ただの空間”になる部分。ですが完成形では往々にして、この“ただの空間”のその上方へ粒子が配置されることがあります。よって、後の工程で配置されるであろう粒子の“支えとなるもの”(支持材)を置いておく必要があるという次第。よって完成直後の“印刷”物は、支持材(粒子状のもの)に埋もれている状態となるわけですね。この支持材は最終工程で取り除かれ、晴れて“印刷”物は現実世界へ姿を現すというわけです。


 粒子同士の結合はどうするの? ――そんな疑問もごもっとも。

 方法は様々ですが、レーザで溶かしてくっつける方法もあれば、化学反応で固めるものもあります。要は“印刷”物に適した結合方法を使い分ける――そうご理解いただければ早いでしょう。


 でも、結局はただのカタマリを作るだけでしょ? ――ところがそんな単純なものでは終わりません。


 その点については、次項で考察を巡らせることにしましょう。


【脚注】

※1 http://www.moguravr.com/tilt-brush-pv/

※2 https://ja.wikipedia.org/wiki/3D%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC

※3 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF%E6%96%AD%E5%B1%A4%E6%92%AE%E5%BD%B1

※4 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%B8%E7%A3%81%E6%B0%97%E5%85%B1%E9%B3%B4%E7%94%BB%E5%83%8F%E6%B3%95





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://ncode.syosetu.com/n0971dm/

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