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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ32.“電脳化”で国境が溶ける!? ~ヒトの繋がりが切り拓く可能性~
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32-1.国境――“電脳化”で意味を失うもの

 コメント欄、感想欄を始めとして、読者の皆様からとても刺激的かつ示唆に富んだヒントの数々をいただきました。読んで下さいました皆様へ、そしてご意見を寄せて下さった皆様へ、感謝を込めて。


 “電脳化”で繋がったヒトを前に、既存の枠組みはヒトを縛る“理由”を失います。その“理由”が失せた時、現れ出るであろう可能性とは?

 “電脳化”が変える世界情勢の明日はどっちだ!?

 “電脳化”、特に肉体改造を経ずに操縦感覚で電脳世界を渡り歩く“ソフト・ワイアド(Soft Wired、ソフトワイヤード)”。

 これの威力、その可能性については折りに触れてご紹介してきましたが。

 今回はその可能性の及ぶ範囲、その巨大さについて探る思考実験。よろしくお付き合いのほどを。


 以前“ロング・テイル(Long tail、ロングテール)”(※1)という言葉をご紹介しましたが。

 要はこんな現象とでも申し上げればよいでしょうか。“どんなにニッチなものでも、ネットを介して世界中を探せば、需要と供給は必ず繋がる”――詳しくは『テーマ24.“電脳化”であなたもエリート!? ~AR・VRで施す英才教育の可能性~』をご覧いただくものとして。

 この“ロング・テイル”、元はネット販売に端を発する用語ですが。それが示す可能性はもはや販売に留まるものではありません。

 例えば教育。『テーマ24.』でも触れましたが、いかに特殊な才能(需要)であろうとも、それを育てる師(供給)は“電脳化”で探り当てることが可能になります。加えて、教育も遠隔地からその大部分をAR(Augmented Reality、拡張現実)とVR(Virtual Reality、仮想現実)で供給することが可能です。つまり誰もが“その道のエリートやエキスパート”になることができるのです。

 これが意味するところは何か。

 需要と供給は“電脳化”世界を通じて繋がります。才能ももはや例外ではありえません。

 才能は、たとえ遠隔地からであろうとも育てることが可能だということ――話はもはやここに留まりません。ひいては、才能はいかなる遠隔地からでも供給できるということにも繋がります。


 才能は、地理的障壁を超えて供給されるのです。


 地理的障壁、という迂遠な言い回しを使いましたが。はっきり言えばこういうことになります――国境はもはや意味をなさない、と。


 いやいや経済格差とかあるからそれは無理――そういう言い訳は通用しません。

 カネの電子化という可能性はすでに存在しています。ビットコイン(※2)を始めとした仮想通貨だけでなく、Felicaのような電子マネーも考え合わせるに、さらには預金が電子管理されている現状をも考え合わせるに、まず通貨の大半は何らかの形で電子化することが確定しています。

 そもそも日本の経済が何で回っているかと言って、そのほとんどは国債(※3)で調達した“実態のない貨幣”です。2014年度の国債発行残高は実に885兆円といいますから、40兆円という国家税収の実に22倍強というカネが電子的にひねり出されて流通していることになります。つまり実態のあるカネは、すでに出回っているカネの、実に5%にも満たないのです。


 これと“才能の需要と供給”のどこに接点があるかと言って。

 まずは“教育における需要(才能)と供給(師)”、これが国を軽くまたいで繋がるのはすでにお話ししました通り。

 次に“労働条件の需要(仕事)と供給(才能)”、これまた国を軽くまたいで繋がります。

 すると何が成立するかと言って、それは“国境を無視した仕事と報酬のやり取り(経済)”です。依頼主(雇用主)が国境をまたいで才能(労働者)を雇うことができることになります。


 いやいや“電脳化”に不可欠なネット・インフラ自体が貧困国には存在しないし――そんなことが言い逃れになる時代は、もはやとうの昔に過ぎ去りました。

 人工衛星ネットワークで世界中どこにいても手軽にインターネット環境を構築できる、そんな構想が進行中です(※4)。

 電力は太陽光発電ファームで賄えば済む話、この構想によれば貧困国でも手早く“電脳化”を進めることができることになります。


 結果。世界中であらゆる分野の“才能”が花開く、その可能性がここにあります。その気にさえなれば誰でも何らかの“エリート”、“エキスパート”になることができるわけです。

 そして地理的障壁を超えて、才能は調達・供給し得るものになります。当然、それに伴う報酬のやり取りも軽々と国をまたぐことになるのです。


 可能性は、もちろんここで収まるわけではありません。

 さらなる可能性については、次項で考察を巡らせてみましょう。


【脚注】

※1 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%AB

※2 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%B3%E3%82%A4%E3%83%B3

※3 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E5%82%B5

※4 http://gigazine.net/news/20160215-terabit-satellites/





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://ncode.syosetu.com/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

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