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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ31.イカロスの夢は実現するか!? ~大空へ羽ばたく可能性~
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31-2.空へ羽ばたけ! ――科学が秘めた可能性

 前項ではヒトが空へ羽ばたくための現実に目を向けてみました。

 本項では、その現実を克服するための方法について考察を巡らせます。


 さて、パワード・スーツで翼を動かして飛ぶとして――必要なものは何か。

 ちょっと考えて思いつくだけでも以下の2つが思い浮かびます。


 1.軽く、コンパクトな動力源

 2.翼となる二肢を合わせた六肢を操る操作方法


 現在主要な動力源と目されている電動モータ、これは意外と容積を食います。そして基本的に1基で1軸の回転動作しか実現できません。

 今回はヒトに翼を付けたいわけですから、モータが食う容積は必然的に外側――早い話が空気抵抗の源となります。

 では薄く、強く、しなやかな動力源は果たして実現し得ないのか――?


 そこに突破口となる可能性を示してくれるのがこちら。

 軽くしなやかな人工筋肉、『エスマスル』の作る『パワースーツ』です(※1)(※2)。

 モータと異なり、かさばらないのが特徴です。


 ヒトの脚の関節は足の付根、膝、足首、この3つしかありませんが、これで実現される動きは複雑を極めます。これをモータで再現しようとすると、関節部分にモータが集中するか、効率が落ちるのを覚悟の上で伝達機構ベルトなどを用い、モータを関節から離して配置する必要に迫られます。

 ただし軽くしなやかな人工筋肉となれば話は別です。ヒトの脚を動かす筋は約50本といいます。これを人工筋肉で実現すれば生物的な、つまり複雑な動きも実現できるだけでなく、生物として自然な動力源の配置も可能です。言うなれば肉襦袢にくじゅばんのような外付け筋肉ですね。

 『エスマスル』の『パワースーツ』はゴムチューブを化学繊維で強化した構造ということですが、素材を変えれば――例えばカーボン・ナノチューブを用いるなど――軽量化の余地は大いにあります。

 また『エスマスル』の『パワースーツ』は収縮・駆動に空気を使いますが、これを電気で駆動する人工筋肉も開発中とされています。

 それが目立たないパワード・スーツ――と言うよりアシスト・スーツ『スーパーフレックス』(※3)です。こちらは実物がまだ公開されていませんが、電気で人工筋肉を直接駆動できるとなると、出力効率の向上が期待できます。

 いずれにせよ、人工筋肉という可能性ならば、1.の“軽く、コンパクトな動力源”というニーズを満たせそうではあります。


 では、こちらについてはどうでしょう――2.翼となる二肢を合わせた六肢を操る操作方法。

 そもそも、“もともとヒトの四肢とは関係ない翼をどうやって操るのか?”という疑問にぶち当たります。

 現在スタンフォード大学で進められているのは、『VRを使って第3の腕を操る研究』です(※4)。

 簡易的ながら、“片手でコントローラを操って“第3の腕”を動かすのが感覚に馴染みやすい”という結果が出ています。


 でも鳥の羽ばたきって精密なんでしょ? これって全部を制御し切れるの? ――そんな疑問もごもっとも。


 鳥のように飛ぶロボットはすでに実用化されています。TEDの『SmartBird』(※5)は翼幅2.0m、全長1.06m、しかしながら自重はわずかに450gというスペックです。これが消費するエネルギィは離陸時で25W、飛行時で16~18Wといいます。

 それどころか鳥のように飛ぶロボットは市販化すらされています。

 『Bionic Bird』(※6)はスマートフォンで操作できる鳥型ロボットです。

 つまり滞空は完全に自律制御できるというわけですね。完全にドローン感覚です。

 これがわずか64ユーロという低コストで手に入ってしまうのが現代の科学技術水準なのです。


 ことほどかように制御技術は熟成を見せています。


 要は基本動作は自動制御に任せて、細かな指図をヒトが行う――そんな姿が私の描きます未来絵図。もちろんコントローラはAR(Augmented Reality、拡張現実)とVR(Virtual Reality、仮想現実)で掌の上に再現、実質は手指の動きで姿勢や羽ばたき方を制御することになるでしょう。この辺りの詳細については『テーマ30.未来のインターフェイスは変幻自在!? ~“ソフト・ワイアド”実現の可能性~』で述べておりますのでそちらをご参照いただくとしましょう。


 自動制御の範囲も操縦者の技量に応じて狭めていけば、自分の感覚で羽ばたくことが可能です。そうなれば、より精密な飛行が可能になるでしょうね。


 というわけで近未来、専用パワード・スーツをまとうことでヒトは空へと羽ばたくことができるであろという、これは考証なのです。


 さて現実の未来はいかに出ますやらお楽しみ。


【脚注】

※1 http://buzz-plus.com/article/2016/05/26/s-muscle/

※2 https://www.youtube.com/watch?v=rXtI38PwokU

※3 http://toyokeizai.net/articles/-/151709

※4 http://www.moguravr.com/stanford-three-armed-vravatars/

※5 http://www.aoky.net/articles/markus_fischer/a_robot_that_flies_like_a_bird.htm

※6 http://www.mybionicbird.com/?lang=en





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://ncode.syosetu.com/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

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