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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ30.未来のインターフェイスは変幻自在!? ~“ソフト・ワイアド”実現の可能性~
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30-2.“電脳化”――可能になること

 前項では、“電脳化”時代のインターフェイス、その入り口についてお話ししました。ですが、それは“電脳化”時代の、まさしくほんの入り口に過ぎません。

 本項では、その本格的な活用について考察を巡らせます。


 さて、前項で申し上げました通り、視覚はARで拡張可能です。

 もっと言うなら、可能性はその遥か上を行きます。“その位置からでは見えないもの”を実際の視界へ重ねて映すことだって可能なのです。

 眼に映るもの――例えば目前に交差点があるとして。建物の陰にあるものを、その場にいながら覗くことだって可能です。

 透視? ――いやいや、これにはちゃんとタネがあります。

 基本の考え方は『テーマ2.“ニュータイプ”か!? ――いえ、ただの凡人です。 ~拡張現実にみるヒトの可能性~』で述べさせていただいているのでそちらをご覧いただくとして。

 要はこういうことです。

 街中に普及した監視カメラ、これらをIoT(Internet of Things、モノのインターネット化)で結んでしまえば、建物を全周から撮影することが可能になります。全周から撮影できればしめたもの、その物体の立体映像を合成することは、技術的にさして難しいことではありません。実際、VR HMD付属のカメラを使って今いる部屋の形状を3Dモデリングする技術『oasis』(※1)も発表されているくらいです。視点が複数あれば、それだけ精度の高い立体映像を合成できるというわけです。

 さらには裏側に隠れているものを覗くこともまた然り。それを現実の視界に重ねて投影すれば済む話です。

 そしてこれは、何も建物の裏側だけに限った話ではありません。もっと距離を置いた先の出来事もまた然り。

 要は“場所を指定しさえすれば、そこで何が起こっているか瞬時に確かめられる”という空間把握能力が手に入るのです。


 実は聴覚も同様です。

 街中には“IoTでネットに繋がったマイク”がすでに数多存在しています。具体的にはスマートフォンがいい例でしょう。これを活用すれば、視覚と同様に聴覚も拡張可能です。

 いやいやプライヴァシィの問題が――そういう声も聞こえてきそうですが。では持ち主のプライヴェートな音声だけフィルタリングして流せば済む話です。赤の他人様の声を拾ってしまったとしても、それは仕方ありませんね。


 かくしてヒトは千里眼と地獄耳を手に入れることとなります――ただし場所を指定しないことには、もちろん見ることも聞くことも思うにまかせませんが。


 入力はさてどうやるか。


 そもそもコントローラはどうするの? ――そういう疑問はごもっとも。視点制御もいいですが、それでは追い付かないこともありますね。やはり五体を駆使してこその“操縦感覚”というもの。

 ジョイパッド? ジョイスティック? キィボード? マウス? トラックボール? はたまたタッチ・パネル?

 答えは単純――どれでも可能です。使い勝手のいいデヴァイスを選べばそれで結構――と申し上げると“そんなもん街中を持ち歩けるかい!”という答えが返ってきそうではありますが。

 私はこれら入力デヴァイスをリアルで持ち歩け、と言っているわけではないのです。

 ではどうするか。

 VR技術を応用すればどうでしょう。手の中にヴァーチャルな入力デヴァイスを再現して、手の中にコントローラやトラックボールなどの感触を再現すればいいのです。親指の動き一つでジョイパッドを操るがごとく、それこそ操縦感覚での入力が可能になります。

 例えばキィボード。VR空間内にキィボードを再現する試みはすでに始まっています。例えば『Cutie keys』(※2)というソフトが実際に提供されようとしています。

 要は、最近のアニメーションでよく描かれる“空中にヴァーチャルなキィボードやタッチ・パネルが浮かび上がる”というイメージ、あれがそのまま実現するものと思っていただければ近いでしょう。


 ちょっと待った、それじゃ入力デヴァイスの触感はどうするの? ――そういう疑問もごもっとも。

 そこは『テーマ27.視覚以外もVR! ~“人工現実”を再現する可能性~』で触れさせていただきましたので、ここでは概略だけ申し上げるとして。

 VR技術を応用すればヴァーチャルに入力デヴァイスの触感を再現することは可能です。さらには同時に、指や掌の動きを感知することも。H2L『UnlimitedHand』(※3)がその可能性を示してくれます。

 要は筋電位をリアルタイムで計測して掌と指の動きを把握する――のみならず。さらには神経や筋肉に電気刺激を与えることで擬似触覚を再現することができるというもの。しかもこれが腕に巻くだけというお手軽さ。もはや軍手のようなVRグローヴを嵌めている場合ではないのです。デヴァイスの状態を目で確認したいなら、もちろん視覚デヴァイスでヴァーチャルに再現、ARで視覚に合成すれば解決です。


 そんなに情報量をさばき切れないよ――そんな悲鳴を上げておいでの方もおいででしょうが。

 そうなると“ヴァーチャル秘書”とも言うべき存在が必要になってくるのではないでしょうか。

 そう、音声入力――対話形式で入力というか、こちらの意を汲んでくれるインターフェイスが望ましいですね。

 そんな思想で開発・発売されたのが『Amazon Echo』――より具体的にはそこに組み込まれた『Amazon Alexa』(※4)です。

 ネットを経由して本体である“人工知能”へアクセスし、話の意図を汲み取り、家電の制御や情報の提供などのサーヴィスを提供してくれるというシステムですね。


 では“人工知能”は会話しかできないの? 家電を制御するのが関の山? ――と思いきや。

 次項ではこの点について考察を巡らせてみましょう。


【脚注】

※1 http://vrinside.jp/news/oasis-tango/

※2 http://vrinside.jp/news/cutiekeys/

※3 http://www.ask-corp.jp/news/2016/10/h2l-unlimitedhand.html

※4 http://gigazine.net/news/20170117-amazon-alexa-expanding/





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://ncode.syosetu.com/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

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