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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ30.未来のインターフェイスは変幻自在!? ~“ソフト・ワイアド”実現の可能性~
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30-1.インターフェイス――“電脳化”世界の入り口

 コメント欄、感想欄を始めとして、読者の皆様からとても刺激的かつ示唆に富んだヒントの数々をいただきました。読んで下さいました皆様へ、そしてご意見を寄せて下さった皆様へ、感謝を込めて。


 当【SFエッセイ】で折りに触れ申し上げてきた“電脳化”、特に肉体改造を経ずに操縦感覚で電脳空間を渡り歩く“ソフト・ワイアド”。実際にヒトと電脳空間を繋ぐインターフェイスの姿とは――?

 “電脳化”時代を迎えるインターフェイスの明日はどっちだ!?

 マン・マシン・インターフェイス(MMI:Man Machine Interface)、あるいはヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI:Human Machine Interface)(※1)とは、“ヒトと機械の間を取り持つ伝達手段のこと”ですが、そこで使われるプログラムや機器そのものを指すこともあります。

 今回は“電脳化”、特に肉体改造を経ずにAR(Augmented Reality、拡張現実)とVR(Virtual Reality、仮想現実)を駆使して“操縦感覚で”電脳空間を渡る“ソフト・ワイアド(Soft Wired、ソフトワイヤード)”、これにおけるインターフェイスのイメージを巡る思考実験。よろしくお付き合いのほどを。


 現状、一般的なインターフェイスはと言えば。

 こと“電脳化”に関して言えばインターネット環境がイメージとして最も近いでしょうか。

 例えば身近なところで考えるならPC。となると代表的なのはディスプレイとマウスにキィボード。あるいはタブレット端末ならタッチ・パネル――こんなところでしょうか。

 もちろんヘッドセットも忘れてはいけませんね。


 ――が。

 こうして挙げてみると、ヒトと機械ネットを繋ぐインターフェイスは――今のところこれっぽっちでしかありません。“操縦感覚で”電脳空間を渡り歩くには、これではまだまだ貧弱です。


 ちょっと待った――そういう声もあるでしょう。それじゃ“操縦感覚で電脳空間を渡る”ってどんなイメージなの? ――そんな疑問もごもっとも。


 解りやすいイメージをご提示するならば。

 コンピュータ・ゲームの画面を思い浮かべてみて下さい。特にRPG(RolePlaying Game、ロールプレイング・ゲーム)に顕著ですが自分の状態を表すステイタス(ステータス)・ウィンドウ群を思い浮かべていただけるとなお結構。


 ――あれ、邪魔だと思いませんか?


 何が言いたいのかと申せば。

 何が悲しくて貴重なゲーム画面、もっと言うと大事な視界をステイタス・ウィンドウで狭めていなけりゃならないのだろうか――そういう疑問です。

 そう、こう申し上げればよろしいでしょうか――ステイタス・ウィンドウをゲーム画面の外、もっと言えば視界の端へ追いやってしまえないか――そういうイメージです。

 具体的な例として、ARを活用したゲーム・プレイが考えられます。こちらの例(※2)では、ARを活かしてステイタス・ウィンドウをディスプレイの外――つまり空中に描画して、ディスプレイにはただひたすらプレイヤの視界を映しています。


 これを発展させるとどうなるか。


 解りやすいのはネットの情報――ニュースや気象情報、あるいは掲示板といったお気に入りのウィンドウを視界の端、“空中”に常時描画しておく、そんなイメージでしょう。

 そう、視界の中心は空けておいて、隅にそういった情報を常時流しておく――そんなイメージが近いでしょうか。


 ヒトの視野は左右方向で約200°というデータがあります(※3)。しかしながら、全部が全部等しく見えるわけではありません。

 最も情報量に富んでいる有効視野は注視点から水平方向に片側30°づつ、垂直方向に片側20°づつに過ぎないと言われています(※4)(※5)。また、これに次いで注視点を向けやすい安定注視野を取っても、水平に60~90°、垂直に45~70°程度に過ぎないと言われてもいます。これ以外の部分は“視野には入っているけれど、実はそれほどよく見えていない範囲”ということになります。

 ――ここに情報を表示したウィンドウを浮かべたら?

 ARですから、ヒトからすれば“空中に浮いたウィンドウ(ディスプレイ)群”として見えるようにすればOKです。例えばこのウィンドウ群は頭部の動きに合わせて動くようにしておき、目の焦点でポイントすれば正面へズーム・アップされる――そんなインターフェイスが考えられます。

 もっとたくさんウィンドウを開きたいんだけど――そんなニーズに応えるのも難しくはありません。ウィンドウを3Dオブジェクトとして描画すれば済むことです。具体的には、例えば1層目を目から90cm、2層目を同じく100cmの体感距離へ映し出せばどうでしょう。ちょうど最近アニメーションでよく描かれる、“空中に浮いたディスプレイやキィボード”といったヴィジュアルをまさしく体感できる――と申し上げれば合点がいくでしょうか。


 一日中ずっとHMD(Head Mount Display、ヘッド・マウント・ディスプレイ)かぶりっ放しはちょっと――そんな懸念を抱いた向きには。

 コンタクト・レンズ型の視覚デヴァイスというアイディアをご提案。言うなればEMD(Eye Mount Display、アイ・マウント・ディスプレイ)とでも呼ぶのが相応しいでしょうか。あるいはアイ・コンタクト・ガジェット(ECG:Eye Contact Gadjet)と呼ぶ方がしっくり来るでしょうか。

 要は外景を一旦取り込み、携帯端末でAR・VR処理を施した上で、その映像を網膜へ直接投影する――そんなデヴァイスが考えられます。詳細については『テーマ11.今日まとうのはどのアヴァター? ~“電脳化”がもたらす容姿の可能性~』でお話ししましたので、そちらをご覧いただくとしましょう。


 これが実現したとして。

 ネット・サーフィンが素手でできるだけ? ――そういう疑問は早計というもの。

 実際にできることは飛躍的に拡がります。次項ではそのあたりに考察を巡らせてみるとしましょう。


【脚注】

※1 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%82%B9

※2 http://vrinside.jp/news/hololens_ff14/

※3 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%96%E9%87%8E

※4 https://violasiderea.blogspot.jp/2010/02/humans-field-of-view-and-computer-displays.html

※5 http://www.lab.ime.cmc.osaka-u.ac.jp/~kiyo/cr/kiyokawa-2001-03-Hikari-Report/kiyokawa-2001-03-Hikari-Report.pdf





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://ncode.syosetu.com/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

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