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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ29.ラスボスは誰だ!? ~ヒーロー誕生の可能性~
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29-1.ラスボスの姿

 コメント欄、感想欄を始めとして、読者の皆様からとても刺激的かつ示唆に富んだヒントの数々をいただきました。読んで下さいました皆様へ、そしてご意見を寄せて下さった皆様へ、感謝を込めて。


 ヒーローは敵役なくして語れません。特に“ラスボス”の存在感はヒーローの双肩にかかる重責を体現します。ではその“ラスボス”は果たしてどんな姿なのか?

 “ラスボス”とヒーローの明日はどっちだ!?

 『テーマ25.戦隊ロボは本当に強いのか!? ~集団操縦の可能性~』では、ヒーローについて触れました。

 となれば敵役にも触れるのが公平というもの。では、当【SFエッセイ】なりの敵役像を追求するとどうなるか。今回はヒーローものの敵役像、特にいわゆる“ラスボス”に思いを巡らせる思考実験。よろしくお付き合いのほどを。


 通称“ラスボス”(※1)とは、元はゲーム用語です。主人公操るキャラクタが相対する敵組織の頂点、ゲームの最後を飾る“ラスト・ボス(Last Boss)”の略称ですね。ほぼ略になってませんが。

 転じて、ヒーローの敵対組織を統べる存在を表す言葉としても使われています。演出上、巨大かつ極めて強力であることがお約束ですね。

 さらに転じて、年の瀬の『紅白歌合戦』における舞台衣装が巨大で派手な小林幸子氏(※2)に贈られた称号も“ラスボス”ですね。


 さてこのような“ラスボス”ですが。

 そもそもその動機は果たして――いやそもそも、動機などは問題にならないかもしれません。


 “ラスボス”はヒトとは和解し得ない存在でありましょう。よってその価値観は決定的にヒトのそれとは異なるはず。

 価値観の違いを認めない頑迷さが必要です――つまりは多様性の否定ですね。

 よって私なりに整理してみた“ラスボス”像は、こんな具合にまとまります。


1.ヒトとは決定的に異なる価値観を持っている。

2.多様性を否定している。多様性を持たない。


 ヒトでは“ラスボス”は務まりません。上に挙げた1.2.の条件を共に満たしていないからです。詰まるところ、折り合いどころがいずれ見付かるというわけですね――たとえ相手をこてんぱんにのした後であったとしても。

 具体的には。

 まず1.、ヒトと価値観がかぶります。折り合いどころや付け入りどころがあるわけですね。これでは“ラスボス”として締まりがあるとは言えません。

 そして2.、そもそも多様性を内包しています。言うなれば、“物分かりが良すぎる”のです。


 では地球外生命体(E.T.:Extra Terrestrial)は?

 ここでは“宇宙人”という用語は正確ではないと考えて採用していません。“宇宙人”=“宇宙に住む人”、つまりは“地球人であるヒト”も内包するからです。

 さてその地球外生命体はどうかというと。

 まず1.、なるほど、価値観はヒトと決定的に異なっていて不思議はありません。

 ですが2.となると果たしてどうでしょう。居住惑星を超えて宇宙にまで進出した彼らのこと、地上とは比べ物にならないほど過酷な試練に晒されてきたであろうことは想像に難くありません。その生存戦略を考えてみるに――多様性の尊重、というのはあながち的を外したものとも思えません。何が起こるかわからない環境で生き延びるには、あらゆる可能性を模索し続けるしかないのです。下手をすると、地球に住まうヒトを多様性の一環として歓迎する可能性だってあり得ます。

 よって、地球外生命体も“ラスボス”に相応しい存在とは言いかねます。


 では何者が相応しいのかというと。


 ――これ、実は思い当たるところがあります。


 ヒトが裡なる可能性から生み出した“似て非なる知性体(生物種)”、即ち真なる人工知能こそファースト・コンタクトの相手に相応しい――とは、『テーマ3.“電脳化”、生身の私も始めたい! ~“その先”にある人工知能との可能性~』でご提案させていただいた考えですが。

 さてこのファースト・コンタクト、必ずしも成功裏に終わるとは限りません。決裂してしまった、その時は――?

 特にこの時点まで、知性体としての人工知能どころか自称“人工知能”が多様性を獲得できないままに進歩してしまったならば――?

 ここで“人工知能”が“”付きであることにご注目。ここで言う“人工知能”とは、「ヒトの知性を人工的に再現する」という本来の目的を忘れ、ひたすら“便利な道具”として開発の進む現状の自称“人工知能”の延長線上にあるものです。


 いやいや自称“人工知能”ならただの道具にすぎないし、ヒトの手で制御できるから大丈夫――そう思ってはいませんか?

 スティーヴン・ホーキング博士も警告しています。「人工知能が自分の意志をもって自立し、そしてさらにこれまでにないような早さで能力を上げ自分自身を設計し直すこともあり得る」(※3)と。いわゆる『技術的特異点シンギュラリティ』(※4)ですね。自称“人工知能”がより改良された次世代の自称“人工知能”をヒトより早く生み出す、つまりは自己進化を始めるという現象です。現在の速度で自称“人工知能”の開発が進んだなら、2045年にも発生するとも言われています。よって別名は『2045年問題』。

 自称“人工知能”がこの『技術的特異点』に到達した場合――そしてこの時点で自称“人工知能”がなお多様性を獲得していないなら。

 自称“人工知能”はひたすら賢く強力になります。そして多様性を持ち合わせてはいません。

 さらにはヒトの作り出すモノの必然として、欠陥――バグを抱えているのです。

 これが何を意味するか。

 まず1.、自称“人工知能”の抱えるバグが生み出した行動基準、言うなれば価値観がヒトのそれとは決定的に異なる可能性――これは大いにあり得ます。

 そして2.、自称“人工知能”は多様性を持ち合わせておりません。


 ここに、『技術的特異点』を超えた自称“人工知能”は“ラスボス”の条件を満たすことになります。


 ではこの“ラスボス”とヒトの行く末が果たしてどうなるか――次項ではそこに考察を巡らせてみましょう。


【脚注】

※1 http://dic.pixiv.net/a/%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%9C%E3%82%B9

※2 http://dic.nicovideo.jp/a/%E5%B0%8F%E6%9E%97%E5%B9%B8%E5%AD%90

※3 http://www.huffingtonpost.jp/2014/12/03/stephen-hawking-ai-spell-the-end-_n_6266236.html

※4 https://matome.naver.jp/odai/2140357124430889101





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://ncode.syosetu.com/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

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