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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ26.家電が未来になっていく!? ~身近なロボット化の可能性~
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26-2.ロボット家電ってどんな姿?

 前項では、ロボット掃除機『Roomba』以降の自称“ロボット家電”に対する私の考えを述べてきました。

 本項では、“ロボット家電”の名に相応しい姿、これについて考察を巡らせます。

 

 “ロボット家電”というからには、“ヒトに代わって何かをやってくれるモノ”という逸物を期待したい――と申しますのが私の本音。その点、まだ世界は可能性と伸び代に溢れているように思われます。


 例えば在庫管理。

 備蓄(在庫)があるのを忘れて買い過ぎてしまった――そんな経験はありませんか?

 冷蔵庫やクローゼット、あるいはタンスだって構いません。

 在庫が今どれだけあるのか、そもそも冷蔵庫やクローゼットの中身が今どうなっているのか――それを現在進行系で知ることができたなら?


 『Amazon Go』(※1)というアイディアがあります。

 要は『店内のどこで、誰が、いつ、何を手にし、何を棚へ戻したか』を全部センサで把握してしまおうという力技。棚の一つ一つにセンサを据え、のみならず店内全域をカメラとマイクで絶えず捉え、果ては床にもセンサを敷き詰めるという徹底ぶり。これによってレジをなくし、製品そのものにも特殊な仕掛けを施すことなく(つまり製品のコストは上がらない)、お手軽に買い物ができるという仕掛けです。

 言うなれば“ロボット・スーパーマーケット”とでも呼ぶべき取り組みですね。


 これの思想を家庭内へ持ち込むことができたなら?

 いやいやそのまま持ち込んだらコストが馬鹿にならないし――という悲鳴が聞こえてきそうではあります。


 ですが、ここで私がご提案したいのはもっとお手軽なシステムです。

 使うのは商品に付いているタグやラベルです。食品ならパッケージに印刷されている2次元コード(※2)が使えます。入れる(入庫)時と使う(出庫)時にそれぞれコードを読み取って、管理ソフトウェアへ情報を転送するだけです。結果はクラウド上にでも持っておいて、買い物のときに参照できれば――それだけでも買い過ぎは激減しそうですね。

 例えば冷蔵庫ならその手間一つで在庫管理が楽になるという仕組み。賞味期限だって一見して判ります。さらには家計簿にも転用が利くという代物です。

 必要なのは無線LANに繋がる2次元コード・リーダと管理ソフトウェア――これだけというお手軽っぶり。2次元コード・リーダに至ってはお手持ちのスマートフォンで代用が可能です。


 ことほどかようにロボット家電はアイディア勝負と私は捉えておりますが。


 さて現状、自称“ロボット家電”に搭載されている自称“人工知能(AI)”は人工知能の定義――“ヒトと同等の知能を人工的に再現したもの”(※3)の足元にさえ及んでいるとは言いかねます。せいぜいが「多少気の利いた家庭用電気機械器具の制御システムやゲームソフトの思考ルーチンなどが(人工知能と)こう呼ばれることもある」(Wikiedia)という程度に過ぎません。


 では“人工知能”に相応しい仕事は何か。

 ヒトとのコミュニケーションこそがそれではないでしょうか。言葉を交わし、意を汲み、解り合う――それが私の描く未来絵図。


 そんな高性能、家電の中に収まるの? ――その疑問はごもっとも。ですが『テーマ23.もっと手軽にVRとAR! ~VRとARの普及を加速する可能性~』で提示しました通り、演算機能を本体から切り離してしまえば――あながち夢物語とも限りません。

 演算の負荷をPaaS(Platform as a Service)(※4)でクラウドに逃がしてしまいさえすれば、さてどうでしょう。


 nVidiaが発表した『GeForce NOW』(※5)は、クラウド上で重量級の3Dゲームを処理してしまおうというサーヴィスです。これなら演算結果(ここでは画面映像)を受け取る高速回線さえあれば、それほどのスペックを持たない端末でも大丈夫。これまで最新鋭CPUや最新鋭GPU(Graphic Processing Unit)を搭載した重量級マシンでなければ遊べなかったタイトルが、マシン・パワーの貧弱なノートPCでも楽しめます。

 この可能性がゲームに留まらないのはお察しの通り。重量級の演算はクラウド上の高性能コンピュータに任せて、入力情報(操作情報、すなわち位置情報や身体の動作情報)と演算結果(擬似感覚)だけを高速回線でやり取りすれば、現在のところ最重量級コンテンツであるARやVRをも身軽に楽しむことすら可能です。家電の制御は何をか言わんや。


 そういう観点で家電の未来を見てみると。


 音声制御が台頭の兆しを見せています。Amazonの音声認識ガジェット『Amazon Echo』が搭載――というよりは連携する『Amazon Alexa』(※6)。インターフェイスとしてマウスやキィボードの次代、タッチ操作のさらに次代という位置付けでAmazonが邁進しています。

 なるほど、対話型でヒトのニーズを汲み取り、(家電を始めとした)機能やサーヴィスを提供しようというわけですね。


 この辺りになってくると、より“ヒト”として自然なインターフェイス、というよりむしろコミュニケーションが求められているのではないか――そういう推測が成り立ちます。

 行き着く先は――恐らく家電単体に収まらない機能群をそれを統合制御する“人工知能”、というのが私の描きます未来絵図。

 つまり家が“ロボット化”していくという、これは考証なのです。


 さて現実の未来はいかに出ますやらお楽しみ。


【脚注】

※1 http://www.huffingtonpost.jp/tak-miyata/amazon-go_b_13521384.html

※2 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E6%AC%A1%E5%85%83%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89

※3 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%9F%A5%E8%83%BD

※4 https://ja.wikipedia.org/wiki/Platform_as_a_Service

※5 http://www.gizmodo.jp/2017/01/geforce-now-for-mac-and-pc.html

※6 http://codezine.jp/article/detail/9495





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://ncode.syosetu.com/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

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