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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ25.戦隊ロボは本当に強いのか!? ~集団操縦の可能性~
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25-2.多様性を味方につけろ!――集団操縦の可能性

 前項では巨大ロボ操縦の合理性について考察しました。

 本項では操縦者が集団、つまり多様性を持っていることを活かした戦い方について考察を巡らせます。


 集団操縦と言ってまず思いつくのは。

 いっそ全員で一斉に操縦行動を取ってはどうでしょう。“拳で語る合議制”とでも表現するのが相応しいでしょうか。

 全員が同時に操縦動作を取って、その中から最適解を取るというわけですね。得手不得手の克服――このアイディアにはそういう側面があります。

 議長役として相当に優秀な人材、または人工知能が必要になりそうですが、この方法なら最小公倍数的に脳力をまんべんなく引き出せそうではあります。

 ――ところがこの方法、それ以前に操縦者に違和感出まくりで悪酔いしそうです。何せロボが5人中4人の思った通りに動かないわけですから。しかも採用・不採用は議長役にしか判らないときています。ロボ酔いに悩まされる戦隊ヒーロー……ちょっと見たくない図ではありますね。


 あるいは完全交代制、相手との相性を見越して最適な適性を有した操縦者に操縦を委ねる――という手もあり得ます。あの図体は相手に合わせたものであると同時に、5人分の搭乗スペースを確保するもの、というわけですね。


 様々なシチュエーションにおける戦法を考えるに、機転がものを言う場面は多いはずです。戦隊ロボの相手は多様を極めます。そんな敵を相手取る戦隊ロボにとって、機転は生命線と言えましょう。力押しだけで勝てる相手ばかりなら何も苦労はしないのです。


 そう、敵は数を利して多様性を味方につけているのです。これに単騎立ち向かい続けるには、戦隊ロボは多様性を内包しなければ勝ち続けられないことになります。1戦や2戦ならまだしも、何十という数の多様性を敵に回すとなれば、いつかは“蟻の一穴”となる盲点を衝かれて戦隊ロボは敗北を喫することになるのです。


 なので、戦隊ロボの集団操縦、その意義はここにこそあると言えそうです――つまりは数に物を言わせて多様性の強さを押し出してくる敵、これにわずか単騎で立ち向かうために“単騎の中に多様性を内包すること”です。


 多様性、ここでは戦局を切り拓く機転に繋がる“気付き”とでも申し上げればいいでしょうか。これは1人より2人の方が多いはずです。では5人いたら――機転の可能性はそれだけ拡がることになりますね。

 ブレインストーミング(※1)で行われるような発想の誘発で戦法をリアルタイムに変えることができたなら、敵を退け続けるだけの機転を得る機会は自ずと拡がります。


 ブレインストーミングの四大原則は以下の通りです。

 ・判断・結論を出さない(結論厳禁)

 ・粗野な意見を尊重する(自由奔放)

 ・量を重視する(質より量)

 ・アイディアを結合し発展させる(結合改善)


 つまりは個々の頭の中にある“気付き”をいかに伸ばすか――そこで勝負をかけることになるわけですね。


 よって、搭乗者は厳選に厳選を重ねるべきです。よくあるヒーローものの“ぽっと出の独断専行型熱血漢がある日突然リーダになる”というシチュエーションでは、恐らく戦隊ロボは戦い続けられません。


 少なくとも、以下の項目については選抜条件として必須事項でしょう。

 ・目的意識の共有:そもそもここですり合わせができなければ、共同で戦隊ロボに乗り込む意義が損なわれます。

 ・ある程度の協調性:つまり“独断専行型”は即座に排除されることになります。“ニヒル”気取りも怪しいですね。

 ・ある程度の“異端児”の容認:多様性を重視し、硬直を回避するからには、切り口の異なる視点も必要です。この点では“熱血漢”も“ニヒル”も否定することはできません。ただし、協調性が水準以下では論外です。

 ・まとめ役、つまりリーダは包容力に富んでいること:リーダは様々なアイディアに耳を貸す必要に迫られます。少なくとも建設的な思考法の持ち主であることが求められるわけですね。実社会におけるリーダの理想像と同じです。ここでも“独断専行”はもっての外、“ニヒル”も不適格ということになります。


 合議制だと判断に時間がかかるんじゃないの? ――その指摘はごもっとも。よって普通に議論している余地はありません。長々とくっちゃべっている暇はないのです。

 よってまず、通常言語より高速に意志を伝達する手段が必要になります。

 例えば神林長平先生の『敵は海賊』シリーズ(※2)では、主人公たち海賊課刑事は高速言語を操ります。表現と発声を極限まで簡略化して、その分意思伝達を早めるという方法ですね。

 あるいはこんな方法論も考えられます。喉や顔の筋肉に生じる神経信号を表面筋電位として感知し、発声を先取りして意思表示するというのはどうでしょう。この表面筋電位を利用した義手も作られているほどですので、手の届かない技術ではありません(※3)。


 つまり、戦隊ロボの戦闘としてはこんなイメージが湧いてきます。


 ・当初は敵の手の内を探りつつ逃げ回り、時間を稼ぐ。

 ・稼いだ時間でブレイン・ストーミング、攻略法を組み立てる。

 ・攻略法に最適な操縦者を選抜してメインの操縦を任せ、残りは火器管制などの支援に回る。


 つまりは短期決戦に弱いわけですね。その代わり長期戦には強いわけですが。


 並みいる敵を単騎で退け続ける戦隊ロボに求められること――それは単騎としての強さもさることながら、操縦者の多様性でもあるという、これは考証なのです。


 さて現実の未来はいかに出ますやらお楽しみ。


【脚注】

※1 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B0

※2 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%B5%E3%81%AF%E6%B5%B7%E8%B3%8A

※3 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AD%8B%E9%9B%BB%E7%BE%A9%E6%89%8B





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://ncode.syosetu.com/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

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