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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ25.戦隊ロボは本当に強いのか!? ~集団操縦の可能性~
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25-1.団結は力!?――集団操縦の位置付け

 感想欄を始めとして、読者の皆様からとても刺激的かつ示唆に富んだヒントの数々をいただきました。読んで下さいました皆様へ、そしてご意見を寄せて下さった皆様へ、感謝を込めて。


 男の子のロマン、戦隊ヒーロー。彼らの奥の手ともいうべき巨大ロボは、ファンの眼を引きつけてやみません。が、その姿に素朴な疑問が湧き上がるのもまた確か。――操縦は一体どうやるの!? 集団操縦の明日はどっちだ!?

 戦隊ヒーローは男の子の憧れです。ことにクライマックス、活躍する戦隊ロボは男の子たちの羨望の眼を集めずにはおきません。

 しかしこの戦隊ロボ、よくよく見ると戦隊全員がコクピットに就いております。一体どうやって操縦するの? ――そんな疑問も素朴に頭をよぎります。

 そこで今回は巨大ロボを集団で操縦する、その可能性に考察を巡らせる思考実験。よろしくお付き合いのほどを。


 人型ロボから他の形態への変形、これについては『テーマ21.変形ロボは実現するか!? ~“男の子のロマン”の可能性~』で触れていますので、ここではかいつまんで申し上げますと。

 変形ロボ(合体ロボ)は変形機構そのものが弱点です。理由は単純、小さく複雑な変形機構(つまり関節部品)に全身の荷重が集中するからです。なので変形・合体ロボは力押しに全く向いておりません。『機動戦士Zガンダム』辺りに登場する可変モビルスーツにしても、一撃離脱を身上とする旨の設定がなされています(※1)。

 つまりよく描かれる“合体・変形ロボが敵の巨大ロボ(怪人)と壮絶なバトルを繰り広げる”という構図は、端から難題を背負っていることになります。

 よって、ここはひとまず戦隊ロボを“非変形の巨大ロボット”として考察してみましょう。


 大きさ。この点は『テーマ07.最強の人型メカを探れ! ~日本人のロマンとその可能性~』でも考察しましたので、詳細はそちらに譲るとして。要は敵以上の図体はもはや害以外の何物でもありません。その理由は骨格素材に求められる強度にあります。身長が増すに連れて幾何級数的に必要強度は増加するのです。しかもこれ、素材の強度であって太さや断面形状ではそう簡単に補えないレヴェルなのです。

 さらには操縦者、特に脳を含めた中枢神経を襲うGも身長に比例して増加します。殴り合うだけで失神する戦隊ヒーロー、というのも締まりませんね。脳までチップ化する――というのではもはや改造人間の枠からさえ外れてしまいそうです。

 よって戦隊ロボの体格は敵より小さく、せめても同程度に抑えるのはもはや大前提です。相手も大型ロボ、戦隊ヒーローも同程度の大型ロボという前提で考察を巡らせます。


 さて集団操縦。

 集団で操縦したら――というと真っ先に思い浮かぶのは戦車(※2)。車長、砲手、操縦手の3人体制がメジャーですね。

 ですが、戦車の操縦方法は“分担操縦”とでも言うべきものです。要は腕や脚や胴体を分担して制御するようなものですね。同様に、船の操船もこの“分担操縦”に相当します。

 ではこれを巨大ロボの操縦に適用したなら――そもそも歩くだけでも一苦労、そういう事態に陥りかねません。ただでさえややこしい巨大ロボの操縦に、共同作業という混乱要因をわざわざぶち込むようなものです。

 ちょっと考えてみれば解ることですが――殴る蹴るの格闘動作、いや普通に歩いたり物を掴みに行ったりという単純動作だけでも、腕や脚単体で完結するほど単純な動作ではないのです。

 普段からの動作学習を駆使するか、あるいはパワード・スーツのように動きをトレースさせるか、はたまた一から動作を入力するか――いずれにせよ、補助こそあれど“メインとなる操縦者1人で操縦した方が合理的”と考えるのが自然というもの。


 例えば笹本祐一先生の『ARIEL』(※3)、主役人型メカARIEL(エリアル:All Round Intercept and Escort Lady、全領域要撃/支援レディ)に搭乗するのは機長、操縦手、砲手の3人ですが、実は人型としての動作を担うのは操縦手1人に過ぎません。機長は総合判断と操縦サポート、砲手は戦闘時の火器管制に回ります。


 では集団操縦のメリットは全くないのかというと。

 これまで当【SFエッセイ】では、絶望的なまでのジャミング下に置かれることを前提に人型メカの姿を追求してきました。外部からの支援が期待できない1対1の対峙を考えた時、こんな可能性が頭をよぎります。


 ――多様性を持っている方が強い局面があるのではないか?


 当【SFエッセイ】では多様性がもたらす強さについてたびたび言及してきました。なれば多様性を利して戦うにはどうするか?

 次項では、多様性を活かして戦い続ける方法について考察してみましょう。


【脚注】

※1 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%AF%E5%A4%89%E3%83%A2%E3%83%93%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%84

※2 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%A6%E8%BB%8A

※3 https://ja.wikipedia.org/wiki/ARIEL





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://ncode.syosetu.com/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

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