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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ22.そのアヴァター、中身は誰!? ~“相棒”がまとう姿の可能性~
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22-1.現実へと進出する“相棒”

 感想欄を始めとして、読者の皆様からとても刺激的かつ示唆に富んだヒントの数々をいただきました。読んで下さいました皆様へ、そしてご意見を寄せて下さった皆様へ、感謝を込めて。


 拡張現実のアヴァターで容姿が自由化された近未来――その中身に思いを馳せてみた時、面白い可能性が浮かび上がります。同時に“彼ら”がまとう容姿は、実はヒト型に限りません。ヒトと触れ合う“彼ら”がまとう容姿の明日はどっちだ!?


 ヒトが自在に電脳空間を渡り歩く“電脳化”世界――特に“拡張現実(AR:Augmented Reality)と仮想現実(VR:Virtual Reality)を駆使して”“操縦感覚で”電脳世界を渡る“ソフト・ワイアド”。

 その“電脳化”世界でヒト達がまとうであろうアヴァター、これがもたらす“容姿の自由化”という可能性。

 容姿が自由化された果て、アヴァターは何もヒトのものとは限らなくなる――とは『テーマ11.今日まとうのはどのアヴァター? ~“電脳化”がもたらす容姿の可能性~』で述べさせていただいたことですが。

 今回は自由化された容姿、その中身を巡ってのちょっとした思考実験。よろしくお付き合いのほどを。


 “ソフト・ワイアド”の“電脳化”世界、他人から見える見た目は、ARで変えることが可能になります――鼻を高くしたり、目をぱっちりさせたり、果ては痩せぎすの肉体を筋肉質に見せることだって可能です。要は化粧やファッションの発展版ですね。

 これをさらに発展させて考えると、こういうことになります――容姿は丸ごとアヴァターに置き換えることができるのです。この点、詳しくは『テーマ11.今日まとうのはどのアヴァター? ~“電脳化”がもたらす容姿の可能性~』をご覧いただくとして。

 要はこうです――ヒトがまとうアヴァター、これは何も自分自身でなくてはならない話ではありません。その気になれば赤の他人、あるいは一からデザインした美男美女、果ては異人種はおろか、そもそもヒトである必要でさえないのです。


 ここで発想をもう一歩進めてみましょう。“ヒトがアヴァターをまとう”という固定観念を振り切って、逆にアヴァターの中身に思いを馳せてみるのです。

 “電脳化”された世界を闊歩するアヴァターの中身――実はこれ、何もヒトに限った話ではありません。ペットでも何ら問題はありませんし、ましてや“人工知能”においては何をか言わんや。

 この辺は『テーマ20.“顔”が意味を失う世界 ~容姿の自由化、その向こうにある可能性~』でも触れたお話ですが――つまり、“何もない空間に“人工知能”達がアヴァターをまとって進出してくる”という可能性です。


 さてこの“人工知能”、そもそもの定義は、“人間と同様の知能を人工的に実現すること”(※1)に他なりません。言葉を代えるなら――知能さえヒトと同様でさえあれば、何もヒトそのものである必要はないわけです。


 では多様性を獲得し、知性体として覚醒するまで“人工知能”がヒトの前に姿を見せないかというと――もちろんそうとは限りません。


 すでにチェスであるとか囲碁であるとかで“ヒトに勝った”(勝ち続けているかどうかは別として)という“実績”を積んでいる“人工知能”。“彼ら”はまだ特定の能力に特化した限定的な存在に過ぎませんが、その可能性を片鱗なりと見せ始めているのもまた確か。


 ということは――知能として発展する過程であろうとも、“人工知能”とヒトとが親しく戯れたところで何ら不思議はないわけです。


 ここで生きた実例として上げるべきは、1999年にSONYが発売した『AIBO』(※2)という存在でしょう。

 今でこそ“癒やしロボット”や“エンタテインメント・ロボット”という市場は世に定着していますが、その開祖となったのは間違いなく『AIBO』です。自律的に行動し、あまつさえユーザとの関係性を学習するなど、その裡に“疑似生命”の幻想を垣間見せるまでに、その存在は完成されていました。


 かくして発展途上の“人工知能”は、例えばペットとしての地位を得るかもしれないわけですが。その延長線上、あるいはこんな可能性があり得ないとも言い切れません。

 即ち――ヒトと肩を並べるほどにまで成長した人工知能が、ヒトとは異なる姿を望むという、その可能性です。

 ここで、人工知能が“”付きでないところにご注目。

 多様性を獲得し、知性体(=生命種)として覚醒した人工知能を、私は“相棒”人工知能と呼んでいます。単に便利な道具として追求されている現状の自称“人工知能”とは似て非なる存在と言えますね。こちらの自称“人工知能”の流れの延長線上にある存在を、私は“助手人工知能”と呼んでいます。


 さてこの人工知能、多様性の導く果てにヒト型とは異なるアヴァターを欲したとしても、何ら不思議はありません。そもそも彼らはヒトに近しいとはいえ、ヒトそのものではないのです。

 もちろんヒト型を選ぶ人工知能もいるでしょう。ですが彼らには多様性――言い換えるなら個性があります。ヒト型を望まない個体がいたところで、何ら不思議ではないのです。


 彼ら“相棒”人工知能が、高度な知能を有した異種生命体として相応しいアヴァターを選んだとしたら?


 これについては、次項で考察を巡らせてみることとしましょう。


【脚注】

※1 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%9F%A5%E8%83%BD

※2 https://ja.wikipedia.org/wiki/AIBO





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://ncode.syosetu.com/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

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