表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ21.変形ロボは実現するか!? ~“男の子のロマン”の可能性~
45/79

21-1.“男の子のロマン”――変形ロボ

 男の子なら誰しも一度は憧れたであろう変形ロボ――憧憬を集めたその存在、実現は果たして可能なのか?

 変形ロボの明日はどっちだ!?

 変形ロボに憧れた記憶は、男の子であったなら誰しもお持ちのことでしょう。あるいは女の子だった方でもときめいたかもしれません。

 これまで本【SFエッセイ】では、“人型メカ”といえば、とりわけ等身大+αのパワード・スーツに焦点を当ててきました――が。

 今回はちょっと子供心に返ってみましょう。変形ロボはどこまで実現可能なのか、今回はそこに思いを巡らせる思考実験。よろしくお付き合いのほどを。


 これまで本【SFエッセイ】で扱ってきた人型メカはと申しますと。

 まず『テーマ7.最強の人型メカを探れ! ~日本人のロマンとその可能性~』では最強の人型メカについて。

 次いで『テーマ12.日本人は巨大ロボットの夢を見るか? ~日本人が求めるロマンの可能性~』では実現し得る巨大ロボットの姿について、それぞれ考察を巡らせてきたわけです。

 要するに最強の形態と最大のサイズを、それぞれ模索してきたことになりますね。

 ですが、そこはあくまで“変形”を前提としない話です。

 ここに“変形”という要素が加わったのなら、話はどう変わるでしょうか――というのが今回のお話。


 そもそも“変形”は何のために行うのか? もちろん特定の機能に適した形態を実現するため――でなければ実際に“変形”する意義がありません。


 まずは根っこのところに存在する疑問はこうです――“変形”しさえすれば何でも有利に傾くのか?。

 答えはもちろん、“そうではない”です。“変形”時の可動部、即ち“関節”に当たる部分には荷重が集中します。つまり、力押しには全く向いていないわけですね。よって変形ロボはあくまでも“人型だけではできないこと”を成し遂げて初めて存在意義を持つことになります。


 例えば『超時空要塞マクロス』で登場したVF-1バルキリー(※1、※2)は、身長約10mのゼントラーディ人と接触・交戦することを想定して人型バトロイドモードを付加されたと設定されています。逆を言えば人型ロボに、大気圏内最速の形態である飛行機の形態を持たせた形ということもできますね。

 『機動戦士Zガンダム』に登場する可変(変形)モビルスーツ(※3)は“空気抵抗を減らして空を飛ぶため”であったり、あるいは“スラスタの推力を後方へ集中して推力を向上させるため”であったりといった目的を持っていたとされています。

 どちらにしても“変形”は“人型より速く移動する手段”として捉えられている――その設計思想が透けて見えてきます。


 では人型では向いていないことは何か――本エッセイでは、まずそこを問うここになります。


 まずは移動速度。人型のままならば、歩く・走ることが移動手段の基本となります。等身大+αのパワード・スーツで考えるなら、マラソン選手並みに走ったとしても速度は時速にして20kmがせいぜいというところ(※4)。長距離移動を考えるに、これでは冗談にも効率がいいとは言えません。


 次に空気抵抗。人型は、まさしくこの意味では全く不利です。前進するためにつぎ込まれた“力”、この大半は空気抵抗で帳消しにされてしまうという話があります。

 次に挙げる例は自転車のものになりますが、空気抵抗の重要性を知るには格好の題材でありましょう。

 これが何かというと、自転車の速度記録(※5)。まず平坦地で通常通りに走った場合の速度記録は84km/h。これでも充分に速いのですが、先導車を使って空気抵抗を極限まで減らした状態では――叩き出された記録は実に264km/hといいます。通常状態での記録のおよそ3倍にも当たりますね。裏を返して考えると、推進力の実に3分の2が空気抵抗で持って行かれる――ということが言えるわけです。


 では“変形”してどうするのか。

 パワード・スーツを既存の輸送機や輸送車で運べばいいじゃないか、という指摘はごもっとも。ですがここはちょっとロマンに話を振ってみましょう。


 まず空を飛ぶのか、あるいは大地を駆けるのか。次項では、まずはそこから考察を巡らせてみましょう。


【脚注】

※1 https://ja.wikipedia.org/wiki/VF-1_%E3%83%90%E3%83%AB%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%83%BC

※2 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%AF%E5%A4%89%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F_(%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA)

※3 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%AF%E5%A4%89%E3%83%A2%E3%83%93%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%84

※4 https://chouseisan.com/l/post-73831/

※5 http://www.geocities.co.jp/Athlete-Athene/2670/miryoku01.html





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://ncode.syosetu.com/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

No reproduction or republication without written permission.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ