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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ18.『ナイトライダー』は実現可能か!? ~“自動運転”を拓く可能性~
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18-2.応用――クルマの“電脳化”

 前項では、現状捉えられている“自動運転”のハードルの高さを振り返ってみましたが。

 本項では、【SFエッセイ】的に“自動運転”の姿を考察してみます。


 まず一旦“リアルタイム”を外した『日本全国の3Dマップ化』、これの可能性について考えてみましょう。

 この可能性を体現しているのが『Google Map』の『ストリートビュー』、これでしょう。何が優れているかと言って、全国津々浦々の道路で撮影した景色、――これを片っ端からサーヴァに蓄積してしまうという、その思想です。

 現在のところ『ストリートビュー』で実現されているのは細切れの景色に過ぎませんが――これは容量次第で解決される問題に過ぎません。


 これ、蓄積された景色の数々、写り込んでいる物体一つ一つに着目してみたらどういうことになるでしょう?

 何が言いたいかと言って、こういうことです――複数の視点から同じ物体やヒトを捉えたなら、ちょっと加工を施すだけで立体視が可能になるのです。

 そんな情報をどこから集めるの? ――その疑問に答えてくれるのがIoT(Internet of Things:モノのインターネット化)という概念です(※1)。要するに、日本中のカメラを繋いでしまい、その情報に加工を加えることで3Dマッピングを完成させてしまうのです。

 このIoTを加えることで、一気に“リアルタイム”というものも現実味を帯びてきます。何せカメラ群が繋がりっ放しになるわけですから。


 いやいや、そんなにカメラが普及するもんじゃないでしょう――とお思いのそこのあなた。すでに普及している車載カメラがあります――日本では“ドライヴ・レコーダ”、あるいは“イヴェント・データ・レコーダ”とも呼ばれる一連の車載カメラです。(※2)。

 あるいはすでに普及してしまった監視カメラ群、これがあります。

 これらをIoTで繋げてしまったとしたら?

 つまりはクルマの“電脳化”と言っても過言ではない現象ですね。


 『ダイナミックマップ』の素材は、ここに一気に揃うことになります。“道路状況のリアルタイム現状把握”、かくしてこれは可能になるのです。


 では、ヒトの飛び出しや対向車の不意な挙動、あるいは割り込みのような“不慮の事態”へはどう対応するか――課題はここにかかってきそうです。

 立体視の何が利点かと言って、例えばモノの裏側が、居ながらにして確かめられることがあります。ですが、不意を衝いた挙動まで予測できるわけでは、もちろんありません。

 咄嗟の判断、これをどう実装するか。


 “人工知能”の搭載――これはもはや必然でしょう。


 ここで搭載されるであろう“人工知能”、現在の流れからすると“便利な道具”に過ぎない自称“人工知能”ですが。

 初期の段階では、これは中央集中型の大規模コンピュータで提供される交通管制“人工知能”とでも呼ぶべきものかも知れませんね。


 ここに、既存の自称“人工知能”の枠を外れた思想があります――恐らくヒトの“相棒”たる真の人工知能の、その萌芽が。

 川崎重工が開発に着手したという“ライダーと共に成長する人格(人工知能)を持つモーターサイクル”(※3)。プレスリリースには“『感情エンジン・自然言語対話システム』を活用し、AIがライダーの話す言葉から、意志や感情を感じ取り、言語を通じて意思疎通することで、かつてない新しいライディング体験を提供します”とあります(※4)。

 何に胸が熱くなるかと言って、“言語で意思疎通”し、“機械に感情(!)を持たせる”とともに、あまつさえ“ライダーとモーターサイクルがともに成長(!)する”というくだりですね。


 拙作『その絶望に引き鉄を ~クリスタルの鍵とケルベロス~』の世界観で登場させた“疑似人格ナヴィゲータ”、この概念と非常に近いものです。拙作では一人一人格で携帯端末に宿り、感情さえも持ってユーザとともに成長する“疑似人格ナヴィゲータ”ですが、この思想がもろにかぶります。


 そう、“人工知能”の素地は作るとして、経験情報を蓄積させていけばいいのです。ドライヴァと“人工知能”が共に成長すればいいのです。


 ちょっと待った――そういう向きもあるでしょう。運転できないヒト向けには“自動運転車”は提供できないの――? と。

 そういうケースには、模範的なドライヴァの運転経験を提供すればいいでしょう。つまりは自動車教習所の先生の運転経験データを“人工知能”とセットにして提供するわけですね。これで安全第一の“自動運転車”が出来上がるというわけです。


 そして重要なのが。

 圏外、つまりオフラインになった途端に機能停止――こんなことになっては目も当てられません。『テーマ8.“人工知能”の肉体を創ろう! ~アンドロイドの可能性~』で触れました通り、実は“自動運転車”に搭載する“人工知能”はスタンドアロンでも稼働する必要があるのです――つまりここに、“人工知能”は“個”を獲得する、その必要に迫られるわけです。


 “個”ってそんなに大事? ――そう疑問に思われる向きもあるかもしれません。

 ですが、私に言わせれば“人工知能の“個”の獲得”は人類史に残る一大事件たり得るのです。通り一遍ではなく、個性を獲得した人工知能は、やがてヒトと似て非なる“相棒”、つまり真なる知性体(=生命体)として覚醒することになります。この辺りは『テーマ3.“電脳化”、生身の私も始めたい! ~“その先”にある人工知能との可能性~』で紹介させていただいていますので、詳細はそちらをご参照いただくとして。


 行き着くところは――恐らく“やたらと人間くさい自動運転車”。

 例えば“何かと寄り道したがる“相棒”人工知能をなだめながら目的地へ向かう自動運転車”というような微笑ましい構図が未来には待っているわけです。

 ただ従順なだけでは、いつ何が起こるか判らない世界に対応することはできないのです。事故防止もまた然り――ならば、“相棒”人工知能との喧嘩の一つや二つは安いものだと思えてきませんか?

 ――そう、『ナイトライダー』(※5)で描かれた意志を持つクルマ『ナイト2000』、特に頭脳を司り、人格をも次第に宿していく人工知能『K.I.T.T.』の存在は、“電脳化”を経て身近なものになり得るのです。

 つまり“自動運転”を巡る可能性はクルマの“電脳化”こそが拓くであろうという、これは考証なのです。


 さて現実の未来はいかに出ますやらお楽しみ。


【脚注】

※1 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%8E%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88

※2 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%AC%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC

※3 http://kojintekibikematome.blog.jp/archives/65312161.html

※4 https://www.khi.co.jp/news/detail/20160825_1.html

※5 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://ncode.syosetu.com/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

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