13-1.“電脳化”が学校を引っくり返す
詰め込み教育、右へ倣え、閉鎖社会……そんな学校のマイナス・イメージは“電脳化”で吹っ飛ぶ?
“電脳化”時代を迎えた学校の明日はどっちだ!?
まずは学校教育を引っくり返すと思われる“電脳化”、特に“ソフト・ワイアド”の定義から。
詳しくは『テーマ3.“電脳化”、生身の私も始めたい! ~“その先”にある人工知能との可能性~』をご参照いただくとして、要はこういうことです。
“電脳化”、これはネット上に存在する情報資源を自在に操ること――ネットを自在に渡り歩くこと、と表現していいかもしれません。詳細は後述させていただくとして、簡潔に述べればそういうことになります。
次に“ソフト・ワイアド”。特に肉体改造を施すことなく、拡張現実(AR:Augmented Reality)と仮想現実(Virtual Reality)を駆使して“操縦感覚”で“ネットを自在に渡り歩く”――すなわち“電脳化”を、私は“ソフト・ワイアド(Soft Wired、ソフトワイヤード)”と呼んでおります。
ちょうどサイバーパンクに登場する概念、脳を含めた中枢神経に改造を施してネットに直接接続する“電脳化”、即ち“ハード・ワイアド(Hard Wired、ハードワイヤード)”とは逆のアプローチですね。
さらに『テーマ3.』では“相棒”人工知能(現状の自称“人工知能”とは別物です)が一人一人格のレヴェルで普及し、ヒトを補佐するであろうことにも触れております。
さて今回はこの“ソフト・ワイアド”を軸とした“電脳化”が進んだ世界、ここでの学校教育について思いを巡らす思考実験。よろしくお付き合いのほどを。
ネットに繋がることの便利さは何かと言って、その豊富な情報にいつでもアクセスできること、これを筆頭とすることは論を待ちません。
ここで言う“豊富な情報”とは、何も百科事典的な知識に限ったことではありません。街中の監視カメラを利用した立体視や千里眼、あるいは地獄耳とでも呼ぶべき空間把握能力の拡張や、刻々と移り変わる情報データから導かれる近未来予測までもがその中には含まれます。ヒトは“ニュータイプ”のごとく拡張された空間認識能力を手に入れるのです。この辺りの詳細は『テーマ2.”ニュータイプ”か!? ――いえ、ただの凡人です。 ~拡張現実にみるヒトの可能性~』をご覧いただくとして。
ではその“ニュータイプ”にふさわしい教育とは何か。まずはそこに想像を巡らせてみましょう。
もちろん、百科事典的な意味でもネットを参照することは、“電脳化”しているからには、いつだって、いくらだって可能になります。よって、従来から揶揄されてきた“詰め込み教育”、これは必然的にその意義を失うでしょう。
――テストのときはネット禁止? “電脳化”した社会にあって、それでは現実という“実戦”にそぐわないことはなはだしいと言わざるを得ませんね。“電脳化”した現実から目を逸らすこと、これは学校教育の本意ではないはずです。
つまりこれまでの学校教育、特に日本で熱心に行われてきた“詰め込み教育”は、“電脳化”を前にして意義を失うのです。
いわゆる“How to 本”は、ほぼ壊滅するでしょう。
学習塾も、一部の優れた講師を除いて生き残れはしないでしょう――それにしたって、いわゆる詰め込みではなく、人生訓や生存戦略を実践で教える講師陣に様変わりするはずです。
習い事、これも“電脳化”で様変わりします。例えば書道やソロバン、それに楽器などは、遠隔地にいながら手取り足取り指導できるのです。
武道のような運動にしたってまた然り。これは実戦ではありませんから危険は限りなくゼロになります。それこそ本当の実戦(例えば柔道の乱取りであるとか)は実体験するしかありませんが、その手前までは、相当なレヴェルまで仕上げることが可能になります。
これら拡張現実と仮想現実の提供する可能性を前にして、学校が提示できることは何か。
例えば『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』(※1)で、主人公インディの父ヘンリー・ジョーンズ博士の科白にこういう趣旨の至言があります。
「なぜ記録を残すかって? 忘れてもいいようにするためだ!」
――そう、知識は必ずしも頭に詰め込んでおく必要はないのです。どこをどう調べれば理解できるか――それさえ知っていれば用は足りるのです。
例えば“図書館の主”とでも称すべきヒトは、図書館の蔵書全てを諳んじているわけではありません。どこを調べれば何が判るか――それを熟知しているだけです。言うなれば“目次”、あるいは“索引”としての能力に秀でているわけですね。
この考え方は記憶の外部ストレージ化――あるいは外部記憶化と言い換えてもいいでしょう。
要は情報の海から、必要なだけの情報を、いかに――それも素早く――拾い上げるか、この方法をこそ学ぶべきなのです。
簡単なところでは検索能力、もっと発展させると問題解決能力、さらに発展させると目標を設定し克服する能力――そういうことになりますね。
これについては、次項で考察してみましょう。
【脚注】
※1 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%BA_%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA
著者:中村尚裕
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