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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ11.今日まとうのはどのアヴァター? ~“電脳化”がもたらす容姿の可能性~
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11-1.アヴァターの時代――“電脳化”時代におけるヒトの容姿

 感想欄を始めとして、読者の皆様からとても刺激的かつ示唆に富んだヒントの数々をいただきました。読んで下さいました皆様へ、そしてご意見を寄せて下さった皆様へ、感謝を込めて。


 拡張現実(AR:Augmented Reality)と仮想現実(VR:Virtual Reality)を駆使して果たされるであろう“電脳化”、それも肉体改造を伴わず、生身のまま操縦感覚で電脳世界を渡り歩く“ソフト・ワイアド”。

 そんな“電脳化”世界で得られる容姿とは? “電脳化”した容姿の明日はどっちだ!?


 経済的に豊かでない時代・地域では“ぽっちゃり型”の方がモテるといいます。そのココロは――“そもそもぽっちゃり体型になるには、裕福でなければならないから”。つまり経済価値観の反映ということですね。

 このことが示すのは、“ヒトの美の基準は揺れ動く”ということです。“美人”の基準――あるいは価値観――は、時とともに移ろうのです。

 では、ヒトがあまねく“電脳化”した世界でいう“美人”像とは、果たしてどんなものになるのか。今回はそこのところを模索する思考実験。よろしくお付き合いのほどを。


 拡張現実や仮想現実を駆使して果たされる“電脳化”、その時代――。では、ヒト達がみんなゴーグルみたいなヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD:Head Mount Display)をかぶっているのかというと、実はそうとも限りません。普通にコンタクト・レンズ型の網膜投影機を装着すれば済むだけのこと、これなら見かけに変わりはありません。


 そんな小型に収まるの? という心配はごもっとも。ただしそれは、ものすごい勢いで払拭されつつあります。

 例えばこんな構造はどうでしょう。

 まず、透明である必要はありません。まずごく薄型のカメラで情景を撮影、それを一旦懐の携帯端末へと無線送信、拡張現実や仮想現実を含めた処理を施し、しかる後に網膜投影機へ返送すればいいのです。あとはその情報を網膜へ直接投影すれば、それで用は足りるというもの。

 ここで搭載されるレンズの厚みは実にわずか6.3ナノメートル。材料は二硫化モリブデンです(※1)。


 網膜投影機は今のところこんな感じになっているそうです。ゴーグルというよりサングラス。これだけでも従来のHMD(Head Mount Display)と比べれば随分スリムになっていますね――Microsoft『HoloLens』(※2)。

 これはCPUを搭載したPCということですから、網膜投影と無線通信だけに機能を絞れば相当に小型化の見込みは立ちそうです。


 では、電力はどう供給するのか? ――その疑問はごもっとも。こちらを解決するアイディアとして、こんな技術はどうでしょう。“空気マグネシウム電池”です(※3)。

 マグネシウムと酸素を電極とし、電解液には塩水――つまり涙を利用するのです。これならマグネシウム電極を時々電池交換感覚で交換すれば、継続して使い続けることができます。

 同じマグネシウムと塩水を使うアイディアの可能性を示すのがこちら――塩水発電で光るLEDランタンです(※4)。

 こちらはもう一方の電極が炭素ですが、海水(≒生理食塩水、つまり涙と同成分)でも発電可能とありますから、かなり可能性を感じますね。


 仮にそのコンタクト・レンズ型網膜投影機を今風に呼ぶなら――“アイ・コンタクト・ガジェット(ECG:Eye Contact Gadget)”とでもいうところでしょうか。


 さて、こんな具合に身軽に“電脳化”ガジェットを身に付けて出歩く世界。ヒト達はあらゆる物体を立体視し、あまつさえ物陰という物陰の裏を認識し、さらには遥か遠くの音さえ聞き分けて、“ニュータイプ”のごとく感覚を拡張しています。――この辺の詳細は『テーマ2.”ニュータイプ”か!? ――いえ、ただの凡人です。 ~拡張現実にみるヒトの可能性~』をご覧いただくとして。

 眼に入る景色は拡張された現実です。つまり、実物そのままである必要は全くありません。ヒトは好きなアヴァター(Avatar、アバター)をまとっていてもいいわけです。


 これが意味することは何か。

 他人の眼に映る自分の外見、これを好きにカスタマイズできるということです。


 肌荒れやそばかすが気になる? ――フォト・レタッチのごとく、アヴァターの肌を好みに修正すればOK。

 鼻や眼の形が気に入らない? ――整形手術を経ずとも、アヴァターの外見を好みに変えればいいのでは。

 いっそ有名芸能人並みのルックスを持ってみたい! ――もちろん、難しいことじゃありません。アヴァターの外見は、何も自分自身でなければならない理由などないのです。仮に流行の顔が世の中に溢れ返ったって、一向におかしくありません。


 ――そう、いっそ一からデザインしたアヴァターをまとっていたって一向に構いやしないのです。

 実はこの一点、既存の価値観の少なくとも1つを間違いなく引っくり返す威力を秘めているのですが。次項ではそれについてのお話を。


【脚注】

※1 http://ex-press.jp/lfwj/lfwj-news/lfwj-science-research/12574/

※2 http://meleap124.blogspot.jp/2015/06/hololens.html

※3 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A9%BA%E6%B0%97%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%8D%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E9%9B%BB%E6%B1%A0

※4 http://www.green-house.co.jp/products/life/led/ledlight/gh-led10wb/





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://ncode.syosetu.com/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

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