9-2.人型メカの【SFエッセイ】的操縦法
前項では、人型メカの操縦法について、既存の方法論から考えた方向性を申し上げました。
本項では、【SFエッセイ】的に人型メカの操縦法を提案していきたいと思います。
まず想像を巡らせるに、アニメやマンガで描写される操縦スペースでレヴァーを盛大に操るあの動き――あのスペースは果たして本当に必要なのか? という疑問が湧いて出ます。そんな余裕ないんじゃないの? と。
もっと突っ込んで考えるなら、人型メカを操るに、レヴァーやスイッチは果たしてあれだけの数で足りるのか? という命題に行き着きます。“いざ必要な時”に限定するとしても、微細な動きを再現しようと思えば、レヴァーやスイッチは膨大な数に上るはずです。
いつどれを操るか、という手順の問題もさることながら、それらレヴァーやスイッチ類を設置するスペースにこそ問題は潜んでいるように思えてなりません。
ただでさえ人型メカの操縦室が広く取れるとは思えません。先にも申し上げました通り、大きくなればなるほど関節に無理が来るからです。そこへ駆動機構や動力を押し込めようとすれば、勢い操縦室に割ける空間は狭くならざるを得ないのが道理というもの。
そこを解決するに当たって、考えられる方法論は主に2つ。
1つは遠隔操縦化です。
戦闘を想定しないなら、遠隔操縦大いにアリです。これも『テーマ7.』で触れました通り。危険な場所に赴くリスクを回避し、なおかつヒト並みにデリケートな作業を行う災害救助活動や大規模事故処理、あるいは極地での活動などでは、この方法が大いに役立つことでしょう。
操縦方法はパワード・スーツと同様です。拡張現実と仮想現実で人型メカの動きを操縦者にフィード・バックし、直接ヒトが人型メカに実際の動作を具体的に入力するのです。これなら直感的に、あらゆる動作を入力することが可能です。人型メカ操縦に関する慣熟訓練も最小限で済みます。
この方法論で行くなら、拡張現実と仮想現実を駆使した遠隔操縦パワード・スーツという方法論もあり得ます。ヒトという中身のない、等身大+αの遠隔操縦の人型メカという形ですね。“操縦は遠隔地で、拡張現実と仮想現実を駆使して、ヒトが実作業感覚で行う”というものです。パワード・スーツの操縦感覚はそのままに、遠隔地から操縦できるのがこの方式のメリットということになりますね。
しかし、これではロマンに欠けることは否めません。ロボは直接操縦してこそなんぼのもんじゃ! という叫びは私自身の中からも湧いて出てきます。何より『テーマ7.』で触れましたように、遠隔操縦が不可能な局面で人型メカを操るにはどうすればいいのか!? という命題がクリアできていないのです。
そこで提示したいのがもう1つの方法論、それが操縦感覚で人型メカと繋がる“電脳化”、しかも肉体改造を必要としない“ソフト・ワイアド”です。
“ソフト・ワイアド”って何? という疑問については、大雑把にはこう申し上げましょう――“肉体改造を伴わない、拡張現実(AR:Augmented Reality)と仮想現実(VR:Virtual Reality)を応用した操縦感覚の“電脳化””――と。詳しくは、『テーマ3.“電脳化”、生身の私も始めたい! ~“その先”にある人工知能との可能性~』をご覧いただくとして。
ここで考える“ソフト・ワイアド電脳化”の姿は、言うなれば全身の筋肉の微細な動きを神経信号感知スーツで拾い、拡張現実と仮想現実を駆使した操縦室(と操縦者の装着するスーツ)で、人工知能(“”付きでないところにご注目)のアシスト付きで、仮想のレヴァーやスイッチを動かす、というものです。既に触覚を再現するガジェットも開発されています(※1)。
操縦者は入れ代わり立ち代わり現れる仮想のレヴァーやスイッチを操って人型メカを操縦することになります。仮想レヴァーやスイッチを適宜入れ替えるのは人工知能の役割です。
――ここまで来ると、レヴァーを動かすような大雑把な動きは必要ないかも知れません。むしろ人型メカを動かすのにレヴァーのような大振りな装置を操る理由は、むしろ失せていくと言っても過言ではないでしょう。
これで、操縦スペースを最小化しつつ操縦の自由度を最大限に確保し、人型メカの内部に操縦者を収めることが可能になります。
かくして“電脳化”、特に“ソフト・ワイアド”と人型ロボの制御は結びつくであろうという、これは考証なのです。
さて、現実の未来はいかに出ますやらお楽しみ。
【脚注】
※1 http://www.moguravr.com/glove-one/
著者:中村尚裕
掲載サイト『小説家になろう』:http://ncode.syosetu.com/n0971dm/
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