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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ1.完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~電脳化と拡張現実の可能性~
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1-2.追記

2016.08.17 いただいたご指摘を元に追記をいたしました。ご指摘・応援下さいました皆様、誠にありがとうございます。

【追記その1】

 義体化に関する人権問題、実際の普及には大きな壁が立ち塞がるでしょうね。

 まず、“心身の不自由な状態から普通のヒトへ近付くことができる”という段までは、まずそこそこの理解は得やすそうではあります。

 問題は次の段階。“ヒトとしての可能性を超える義体化”に関しては、特に宗教方面の強い抵抗が予想されます。そもそも“ヒト(特に自分の属する民族)こそが神が与え給うた進化の最終形態”とする宗教(普及率が馬鹿になりません)からすれば、禁忌感が先立つこと、まず予想に難くありません。どころか、“進化”という概念そのものに禁忌感を抱いていると思しき宗教もある(これもまた普及率が馬鹿にできません)ぐらいですから、抵抗は生易しいものではないでしょう。

 ですが、走り幅跳びで義足の方が世界記録を更新しちゃったように、“義肢や義体を持ったヒトが生身のヒトに勝ってしまう”場面が増えるにつけ、この禁忌感は危機感に取って代わられると思います。“神の与え給うた肉体=サイコー!”という概念の転覆ですね。

 スポーツだけならレギュレーションで逃げられる部分もありますが、現実――特に戦場とかになると生き残ってナンボの何でもありですからね。危機感が禁忌感を覆すまでの時間は、それほど長くないかもしれません。

 ただこの辺、“知恵の力(これも禁断の実だったりするわけですが)で肉体の枷を超える”という“ハード・ワイアド”の概念に対する禁忌感は、“肉体の改造を最小限に抑える”という“ソフト・ワイアド”という概念へ流れやすい気もします。

 と考えてみるに、“完全義体対パワード・スーツ”という構図とは、“宗教観・倫理観のぶつかり合い(“生身なんてほぼいらない”VS.“肉体は神聖”というような)”にも繋がるわけですね。


【追記その2】

 興味深いご指摘をいただきました。“完全義体は物理運動において人体のスペックを超え得るので、人体の制約に縛られたパワード・スーツが勝るとは限らないのではないか?”というもの。

 パワード・スーツは“乗員の身体と神経を鍛えに鍛えた場合”を大前提に考えていました。この辺、記述していなかったのは素直に私の落ち度です。申し訳ありません。

 一方で、義体は義体で“スペックを使いこなせるよう生身の部分(特に脳神経系)を鍛えに鍛える必要がある”、ということにもなります。人間に限らず、具体的にイメージできないような運動はできない、という限界があると思われますので(反射運動は“脳神経系にイメージを本能的に刷り込まれているもの”とイメージして書いています)。

 いずれにしても、“生身の部分を鍛えに鍛えるということ”が大前提になって来ます。

 なので、この点は“完全義体もパワード・スーツも心身を鍛え抜いた(操り慣れ切った)状態で相対する”という条件が付く――どんなにスペックが高かろうが操り手の神経が追いつかなければ猫に小判――という前提でお話しすると。

 完全義体は“物理的速度・加速度で人体の枷を外れることができる”という利点を持つ反面、“人体の未解明部分を持ち得ない”という弱点を抱えてもいます。今でも“細菌を含む人体内の生態系は第二の脳として働いている”とする説があるように、“ヒトは生身でどこまで速く反応できるのか”という限界についても未知数の部分はある、という。(※1)

 詰まるところ、例えば“完全義体がパワード・スーツにいわゆる“後の先”を取られる可能性も否定できない”という可能性もあるわけです。“最高速度はともかく、反射速度で義体が負ける時が来るかもしれない”という可能性ですね。あるいは義体の加速度(G)に中枢神経系が耐え切れない、といった現象さえ起こるかもしれません――まあ、こちらはパワード・スーツとて条件は同じではありますが。最後は神経戦、あるいは反射速度の戦い(第二の脳を使った生身の方が適応力などで勝てるか、など)、あるいはそもそもどちらが先に相手の懐へ忍び寄るか(ストーキング、Stalkingの技量)、そういったところの勝負へ収斂していくものと思われます。いみじくも『攻殻機動隊(原作)』では、完全義体の草薙素子自身が“肉体のスペックを気にするよりも、必殺の位置まで相手に気付かれず忍び寄る技倆をこそ身に付けろ”という旨の発言をしているくらいですし――とか書いちゃうとタイトルの意味が失せかねませんが(汗)。


 ここで余談。義肢レヴェルの義体化を施したヒトは、パワード・スーツに対してスペックではまず勝てないと踏んでおります。例えば下半身だけを義体化(高速化)したとして、全力加速したら――途端に生身の上半身が置いて行かれます。つまりちぎれちゃうんですね。なので、義肢レヴェルの義体化は、あくまで人体のスペックに合わせた代物でないと役に立たないということになります。以上、余談でした。


 ただ“施術した最新の時点”に限って言えば、完全義体(“ハード・ワイアド”)の方が有利に立つであろうことは想像に難くありません。しかし人体の解明が進むにつれ、あるいはインターフェイスが進化するにつれ、生身を残した側(“ソフト・ワイアド”のパワード・スーツ)が有利に立つ可能性は高くなる、ということが申し上げたかった――ということになります。この辺は考察をより深める必要ありです。まだまだ考察の余地の残るテーマです。

 ご指摘、応援下さいました皆様。誠にありがとうございます。


【脚注】

※1 https://www.blwisdom.com/linkbusiness/linktime/future/item/8636.html





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://ncode.syosetu.com/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

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