9-1.人型メカの操縦法を振り返る
感想欄を始めとして、読者の皆様からとても刺激的かつ示唆に富んだヒントの数々をいただきました。お読み下さいました皆様へ、そしてご意見を寄せて下さった皆様へ、感謝を込めて。
人型メカは日本人のロマン。実現するとしたらその操縦法は? 誰にだって動かせる? 人型メカ操縦の明日はどっちだ!?
人型メカは日本人のロマンです。そこに思いを致す時、ふと沸き起こる疑問があります――操縦は果たしてどうするのか?
それについて、あるいはぼやかし、あるいは真正面から取り組み(『ファイブスター物語』のモーターヘッドがそうですね)、様々な方法が提唱されてきました。遂には『新世紀エヴァンゲリオン』のように、神経接続という方法論も持ちだされましたね。いずれにせよ、人型メカを巡る操縦法は一つのロマンとして日本人の魂を揺さぶらずにはおりません。
そこで今回は人型ロボの操縦を巡る思考実験。よろしくお付き合いのほどを。
銃は引き鉄を絞れば撃てる――これは万国共通の仕様です。装弾方法にやや個性が見られないわけではありませんが。
例えばオートマティック式なら弾倉を装填し、遊底やボルトを引くことで初弾を薬室へ送り込み、あとは引き鉄を絞る――基本は変わりません。なお、次弾以降については火薬の力で遊底がスライドするため、自動的に弾薬が薬室へ送り込まれる仕組みです。
クルマもしかり。ハンドルとアクセル・ペダル、そしてブレーキ・ペダル――これが基本です。マニュアル・トランスミッションならギア・チェンジの操作機構が加わりますが、これにしたってパドル・シフト(※1)が発明されるまでは、クラッチ・ペダルとシフト・レヴァーの組み合わせでした。
そしてウィンカのレヴァーは、シフト・レヴァーの反対側。これはシフト・チェンジしながらウィンカを操作できるようにという配慮といいます。
走行車線の左右こそ国によって違いますが、操作方法に関わる思想はやはり万国共通と言っても過言ではないでしょう。
もっと複雑な操縦系統を持つ飛行機にしたってそうです。操縦桿とラダー・ペダル、それにスロットル。操縦桿で機体のピッチとロール、ラダー・ペダルでヨーを操作し、スロットルで推力を操る――操縦の基本概念は、冷戦下の東西関係を挟んでいてさえ共通でした。
ですので、例えば『ファイアフォックス』(※2)であるとか『機動戦士ガンダムSEED』(※3)であるとかの作品で描写されているように、“敵陣営の兵器を奪う”ということが可能になるのです。――『ファイアフォックス』は脳波コントロールが主でしたが。
なぜ共通なのか、ということを考えるに、こんな仮説が浮かんできます。
――要は最も扱いやすいからではないのか。
最もシンプルかつ洗練された方法が、操作方法として定着するのではないか――。
あるいは傭兵のような存在を考えても、操作は万国共通であることが望ましいことになります。赴く戦場が変わったとして、それまで戦闘経験がまるで使い物にならないとなったら、それこそお手上げというものです。
まあ、傭兵のような剣呑な例えを出さずとも、国際協力隊のような組織の活躍を支えようと思ったら、やはり操作方法は統一されていた方が望ましいのです。でなければ、せっかく呼び出した才能の活かしどころがなくなります。
では、人型メカの操縦方法、これについてはどうか。
パワード・スーツの場合、基本は解りやすいですね。操縦者の動作を忠実にトレースすればよいのです――と言うより、できないと操縦者が大変なことになってしまいます。そこで遅延をいかに少なくするかが肝になるので、筋肉を走る神経信号であるとか、脳波であるとかを拾って動作を先読みしつつ、実際の動きに備えるくらいの芸当が必要になりそうです。
その点に思いを巡らせるに、パワード・スーツに乗り込むなら、服が邪魔になりそうです。専用の神経信号感知スーツか、いっそ素っ裸という選択もあり得ます。
もうちょっと大型化してくると――これは様々な説が乱立して諸説ふんぷんの状態になります。大雑把に分けるとするなら以下の2つが主な潮流でしょうか。
1.そもそも人型の可動部分は多すぎるので、メカの全身をくまなく動かすには操縦者全身の関節をくまなく駆使せねばならない。
2.操縦者が操作できるレヴァー・スイッチ類には限りがあるので、大雑把な動作はマクロによる学習を駆使し、本当に精密な動作(特に腕と指先)だけは操縦者の動きをトレースして実現する。
格闘戦のギリギリの状態、本当にかすかな気配の読み合いと臨機応変の動きまで対応するならば1.の流れでしょう。
重機のように汎用用途、普段の動きを単純化するなら2.の流れの方が向いています。
ここで思い出していただきたいのは『テーマ7.最強の人型メカを探れ! ~日本人のロマンとその可能性~』での結論です。強度を考えるに、大型化するにつれ強度問題が――特に関節において――顕在化するというものです。よって、格闘戦を考えるなら身長+αのパワード・スーツ、そこまで先鋭化しなくていいなら2.の流れ、ということになります。いわば普段からどれだけ動きを学習しているかが勝負になるわけですね。
基本動作のマクロ入力を共通化すれば大雑把な動きは容易になり、慣熟の敷居も下がります。極端な例を持ち出すならば、格闘ゲームの必殺技コマンドがあります。一連のコマンドを入力することで、予めインプットしておいた動作を実現する、という考え方です。
しかし、本当に繊細な動きが要求される局面にどう対応するか――ここで腕や指先だけならいざ知らず、全身のデリケートな動作が要求されるとしたならば。
例えば災害救助現場などでは、こういった局面にぶち当たる可能性は捨て切れません。
で、私が提案したい操縦方法は別にあります。それについては次の項でお話ししましょう。
【脚注】
※1 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%95%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%90%E3%83%BC%E3%81%AE%E9%85%8D%E7%BD%AE#.E3.83.91.E3.83.89.E3.83.AB.E3.82.B7.E3.83.95.E3.83.88
※2 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9_(%E6%98%A0%E7%94%BB)
※3 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A9%9F%E5%8B%95%E6%88%A6%E5%A3%AB%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%A0SEED#.E7.89.A9.E8.AA.9E
著者:中村尚裕
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