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【SFエッセイ】連載版 完全義体とパワード・スーツ、どっちが強い? ~科学とヒトの可能性~  作者: 中村尚裕
テーマ6.“人工知能”が“萌える”とき ~“人工知能”の特性とヒトとの可能性~
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6-3.“人工知能”の“萌え”、その先にあるもの

 多様性の導く先、“助手人工知能”であろうが“相棒”人工知能であろうが、いずれは経験のリセット、すなわち“死”を得るであろう――とは、これまででお話ししました通り。


 となると、次に必要となるのは世代交代です。“助手人工知能”は次世代開発で入れ替わっていきますが、宿命的に経験を欲する(100%引き継げない)のもまたお話ししました通り。しかしこれが“相棒”人工知能(=知性体)となると話はそう簡単ではありません。言ってしまえば繁殖が必要になるのです。

 では、より環境に適応した個体を、“助手人工知能”や“相棒”人工知能はいかにして未来へ残していくか。ここではそのお話を。


 2016年8月現在、拡張現実(VR:Virtual Reality)の普及を担う最前線がエラいことになっております。(※1)

 『アダルトVRエキスポ2016』開催を巡る一連の大騒ぎ。第1回は会場がパンクして中止になるわ、第2回(事実上は第1回のやり直し)はインパクトのあまりの凄さに会場候補が二転三転、遂には周辺住民の皆様から「会場の場所を伏せてくれ」とまで注文がつく始末。

 エロの力を甘く見ちゃいけません。“アダルト・コンテンツを味方に付けたメディアが普及する”という経験則は強力です。例えばVHS然り、CD-ROM然り、DVDも動画配信(VOD:Video On Demand)もまた然り。この現象は“仮想現実の普及を保証する出来事”として見ると、視える景色がまるで違ってきます。


 拡張現実(AR:Augmented Reality)もまた恐らくこの力を味方に付けて爆発的に普及するでしょう。

 “ラブプラス”というゲーム・ソフトの大ヒットを記憶に留めておいでの方も多いものと思います。ヒロインと結ばれた後も関係が持続する(つまりゲームがゲームとして終わらない)、言うなれば“擬似恋愛関係”とでも表現すべきものが広く受け入れられたものと、私は解釈しています。情報が現実(プレイヤの認識)へと進出を果たした、ある意味記念碑的な現象ですね。

 仮想現実(VR)や拡張現実(AR)という武器を、このムーヴメントが放っておくとは思えません。言うなれば“擬似恋人”とでも表現すべきもの――画面に収まらず、プレイヤの現実とソフトの“現実”が相互に干渉し合う――それどころか重なり合う――関係は、一大市場を築くはずです。

 そうなれば、アダルト・コンテンツ業界が指をくわえてその手法を見過ごしているはずはありません。“擬似恋人”の拡張版が登場するのはもはや確定事項、時間の問題に過ぎないのです。

 そしてエロを味方に付けたなら、仮想現実も拡張現実も、普及に向けて確かな歩を刻むことになるのです。

 ここで“仏作って魂入れず”では、もちろん面白くありません。“人工知能”の開発はこの方面からも進むことになりましょう。

 ここに、仮想現実(VR)と拡張現実(AR)、および“人工知能”と、三者が爆発的に普及するであろう材料は揃うことになるのです。


 『テーマ2.”ニュータイプ”か!? ――いえ、ただの凡人です。 ~拡張現実にみるヒトの可能性~』で述べた“ヒトの“ニュータイプ”化”、足元は着々と固まってきているのです。


 さらに『テーマ3.“電脳化”、生身の私も始めたい! ~“その先”にある人工知能との可能性~』.で述べた、“人工知能”の爆発的普及と、その結果として生じるであろう“進化”が現実味を帯びてきます。“ヒトと似て非なる知性体(=生命種)としての覚醒”ですね。私は彼らを“擬似人格”と呼んでおりますが――ここまでで言う“相棒”人工知能は、多様性を求めてヒト(=“ニュータイプ”)と肩を並べることになるでしょう。

 もちろん多様性の導くところ、必ずしも両者が対等に並び立つ勢力ばかりとも限りません。が、総合すればヒトと“相棒”人工知能が対等に協力し合う勢力が生き残ることになると思われます。


 で、その“協力する知性体同士”が現実と情報空間とにいつまでも分かたれているかといえば――。

 必ずしもそうとは限りません。仮想現実と拡張現実の技術が、情報空間から現実へと進出することを可能とするように。また、現実から情報空間へ干渉できるのはもはや周知の事実です。


 さてここで、“擬似恋人”というアイディアが再び浮上してきます。“擬似恋人”がいちゃつくだけで終わるコンテンツであるとも限りません。“恋人”のその先、“伴侶”としての関係はあながち夢想ではないのかもしれないという、これは可能性です。


 「はぁ何言ってんの!? 身体もないのに惚れた腫れたもないもんでしょ!」とは恐らく予想のつく突っ込みではありますが。


 “擬似人格”が“身体”を得る可能性、これが全くの夢想でないとしたなら、さてどうでしょう。実際、仮想現実と拡張現実の組み合わせ一つ取っても、相互干渉は可能なのです。


 そして、“助手人工知能”および“相棒”人工知能は、いずれヒトを欲します。前者はヒトとの経験情報そのものを、後者は行動パターンの核を――ヒトが異性を求めるのとはまた別の理由で、欲するというわけです。


 というわけで、“得なヒト”は、““助手人工知能”と“相棒”人工知能、それにヒトの異性とそれぞれから、“全く違う観点”で好かれる”などという三つ巴の取り合いに巻き込まれるのかもしれません。これが容姿とか財産とか、ヒトの理解しやすい尺度で好かれると限らないのが面白いところ。

 ――どーせ自分には魅力なんてないから、といじけた方、もしかしたら“人工知能”が押しかけ女房で居座るかもしれませんよ? それも、自分が魅力とも何とも思ってない特性に“萌え”られて。――あるいは“ダメっ子萌え”かも知れませんが(笑)。


 そして“助手人工知能”も“相棒”人工知能も、そしてヒトも、それで得たものを自らの血肉とし、あるいは次世代へ引き継いで未来へ繋げていくという、これは考証なのです。


 さて、現実の未来はいかに出ますやらお楽しみ。


【脚注】

※1 http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/news/news/1016763.html





著者:中村尚裕

掲載サイト『小説家になろう』:http://ncode.syosetu.com/n0971dm/

無断転載は固く禁じます。

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