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彼女の持つ能力とは

 さて、俺のやるべきことは決まった。こっちの世界を、こっちのカリバの為に救う。

 簡単に決めちまったが、簡単にはいかないであろうことくらい分かっている。だがまあ、やると決めたからには今更逃げるつもりはない。


「よし、じゃあまずは。シュカ、ちょっとトタースに瞬間移動できるか試してみてくれ」


「瞬間移動? そんなものができるのですか?」


 カリバ2が、驚いて聞いた。そうか、こっちのカリバは瞬間移動を見た事が無いのか。


「まあな。最強の能力の一つさ」


 カリバの完全回復とも、ミステの全てを無にする力とも、俺のウインクともまた別種の、最強の能力。


「トタースって、どっちのトタース?」


「どっちでもいい。やってみれくれ」


 俺達のいたトタースに行けるかどうかだが、シュカの瞬間移動が世界を超えるのかどうかはまだ分からない。そして、もし世界を超えずに今の世界の中で瞬間移動を行うのならば、可能性は低いが、こっちの世界のトタースの方に行くことができるかもしれない。どっちにしても試しておくべきだろう。


「じゃあ、行ってみる」


 そうは言ったものの、しばらくしてもシュカの姿はそこから動かなかった。


「えい! えい! えい!」


 何度気合いを入れて瞬間移動しようとしても、それは変わらない。


「行けそうにないか?」


「うん、駄目みたい」


 瞬間移動が出来なかったということは、世界を跨いでの瞬間移動は不可能で、平行世界で瞬間移動をするためには、あっちの世界で行ったことがあるかどうかは全く関係無く、平行世界側でシュカが行ったことがなければならないのか? いやそれとも、そもそも平行世界では瞬間移動自体が出来ないのか?


「シュカ。ちょっと地上に瞬間移動してみてくれ」


「え? うん、分かった」


 シュカは軽く頷くと、すぐに姿を消した。そして、十秒もしないうちに再びここに現れた。


「え? え?」


 何が起こったか分からないというように、カリバ2はあわあわとしていた。


「どうやら行けたみたいだな」


 確定か。シュカの瞬間移動は、平行世界では平行世界で行ったことあるところのみに限定される。


「となると。よし、トタースに行くか」


 次にやるべきことが決まった。


「い、いきなり行くのですか? 危険です! あの街には強い人達が大勢います!」


「昔の俺ならともかく、チカっていう女に会ってからの俺は、自分より強い人がいることくらい理解しているし、いきなり無茶なことをする気はねーよ。とりあえず今からトタースに行く理由は、情報収集と、今後瞬間移動でいつでも行けるようにするためだけだ」


「そうですか、分かりました。止めはしませんが、決して無謀なことはしないでくださいね」


「なんだよ。随分優しいじゃないか」


「あなた達に死なれてもらっては、希望が無くなってしまいますからね。死なれては困るのです」


 素直じゃないやつだな。


「さて、じゃあ早速行きたいんだが、ここからトタースまでどう行けばいいか分からない。だから、今いるこの地点とトタースの場所が分かる地図が欲しい」


 地図が無ければ、俺達はそもそも向かうことすらできない。ここからトタースは、どの方角にあるのかすら知らないのだから。


「地図は渡しません」


「え? なんで?」


 予想外の返答だ。地図が無いと困ることくらいカリバ2にだって分かるだろうに、一体どうして。


「私が自らナビをするからです。地図を見ながら行くよりも、何倍も効率が良いでしょう?」


「そりゃそうだけど、でもトタースって危険なんだろ? そんなところにお前を連れて行くなんて出来ないよ。俺はお前が傷つく姿を見たくないんだ」


 ミステとカリバとシュカと萌衣は、何があっても一緒にいると誓った。だから、当然トタースにも共に向かう。だが、カリバ2は違う。カリバ2と一緒に行く理由は無い。理由が無いなら、大切な人を危険に晒すわけにはいかない。


「そんな真剣な顔で傷つく姿が見たくないなんて言って、私を惚れさせようとしているんですか? 無駄ですよ。私はあなたには惚れません。そっちの私と一緒にしないでください」


「別にそうじゃない。というか、そもそもお前がついてきたって何にもできないだろ? それでもナビがしたいって言うなら、精々トタースの前までだ。トタースに着いたらシュカにここまで送ってもらう」

 

「ふっふっふ。何もできない? いいえ、そんなことはありません。むしろ最高に役に立ちますよ。だって私には、凄い能力があるのですから!!」


 カリバ2の表情は、自信に満ち溢れていた。

 ここまで自信満々だと、もしかしたら俺達の能力を超えるほどの本当に凄い能力を持っているのかもしれない。


「そ、その凄い能力ってのは、なんだ?」


 もしチカ以上の能力なら、役に立つなんてもんじゃない。


「そ・れ・は! 完全回復です! 死にさえしなければ、病気であろうと怪我であろうとなんでも治してしまいます!」


「あー、うん。そっか」


「な、なんですか! なんで驚かないんですか?」


「だって、ねえ?」


「私と同じ、ですもんね……」


 まあ同じ人物なんだし、同じ能力が使えても何もおかしくないか。


「同じ? そっちの私もなんでも治せるんですか?」


「まあ、一応」


「そ、そうですか……。で、ですけれど、これで役に立つことは分かったでしょう! 最後まで一緒に行かせていただきますよ!」


 確かにカリバ2の能力はかなり役に立つ。いくらカリバと同じ能力だとはいえ、回復役が多くて困ることは無い。


「分かったよ。来たけりゃついてこい」


「べ、別に行きたいわけではないですが」


「なんだ? 行きたくないのか? じゃあ別に来なくてもいいが」


 元々連れて行く予定じゃなかったんだし、来ないなら来ないで全然構わない。


「いいや行きます! 行かせていただきます!」


「なんだよ、だったらそう言えよ。じゃ、早速行くか」


 そう言って、まずは地上に出るため、俺と萌衣とミステとカリバはシュカに掴まった。


「ほら、お前もシュカに掴まれ。一気に地上に行くから」


「は、はい、分かりました。というか、ミステさんも連れて行く気なんですか!?」


 シュカに掴まっているミステを見て、カリバ2は驚いて声を上げた。


「当たり前だろ? なあミステ」


『行かない理由が無い』


「危険なんですよ! それに、あなたには色々と質問が」


『何を質問されても 記憶が無いから答えられない』


「そ、そうかもですけど!」


「ま、いいじゃないか。大丈夫、何があってもミステは俺が守るから」


 もう絶対に、大切な人を失うつもりはない。


「わ、分かりました。はぁ……。まさか彼女が、この男にべったりになってるなんて」


「なんだ? ミステが俺に惚れてるのがおかしいのか?」


「おかしいに決まっています。だって彼女は――」


「彼女は?」


「いえ、なんでもありません。ささ、行くと決めたならば早く行きましょう。今こうしている間にも、世界は崩壊し続けているのですから」


「そうだな。よし、じゃあ行こう! 目的地は敵の本拠地、トタースだ!」

次回トタースです。

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