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蘇生

 遂にこの時が来た。

 俺の妹であり俺の大切な人である萌衣の、復活の時だ。


「なあ、この魔法ってのは、どこでも使えるのか?」


【うむ。使いたい時に使えばよい】


「分かった。じゃあ、ここでは使わない」


 生き返ったところがこんな味気ない場所じゃあ萌衣はがっかりするだろうしな。


「皆、力を貸してくれてありがとう!」


 ここに集まってくれた四人の能力者達に、最大限の気持ちを込めて感謝をした。


「シュカ、皆を元の街に送ってやってくれ」


「了解。で、シスタはどこで生き返らせるの?」


「決まってんだろ。俺達にとって最も思い出に残ってる、あの場所だよ」


 いろいろ考えてみたが、あそこ以外は考えられない。


「まあ、多分そうだろうとは思ったけど。さて、じゃあ伝説級の能力者の皆さん、順番に元の街に送りますので私のところに来てください」


「え? マヤ達もう終わり? マジでなんのために来たし」


「俺にとってとっても大切なことを、お前はやってくれたんだよ」


 マヤ達は、文字通り萌衣の命の恩人だ。彼女達の協力が無ければ、萌衣の復活は不可能だった。


「マジで? じゃあ、マヤに超感謝しちゃってる感じ?」


「ああ。超感謝してる」


「マジか! じゃあもう結婚まで秒読みじゃん! 幸せな気持ちでゴーホームしちゃう!」


 なぜ結婚まで秒読みなのかは全く分からないが、とりあえず納得してくれたみたいで助かった。


「カプチーノ」


「なんだ?」


 アイファに名前を呼ばれ、俺はアイファの方を向いた。


「妹のこと連れてくるの、楽しみにしてる」


「おうよ。そん時は美味い魚料理、いっぱい食わせてくれや」


「うん!」


 笑顔で頷くアイファに、俺も笑顔を返す。魚料理、超楽しみにしてるからな!

 それから伝説級の能力者達は、俺と一言二言話してから、全員シュカによって送られていった。萌衣が生き返ったら、絶対にまたあいつら全員に会いに行こう。


「さて、シュカ」


「うん、分かってる。じゃあ皆、掴まって」


 俺とミステとカリバは、それぞれシュカの体の一部を掴んだ。どこだか言わなくても、全員今から行く場所が分かっていた。だって萌衣を生き返らせるなら――


 ここっきゃないもんな。

 瞬間移動を終え、俺達は結婚式を行ったあの草原にいた。

 ずっと好きだった萌衣が、俺と結婚をした場所。少なくともこっちの世界では、ここ以上の場所は無い。


「じゃあ、言うぞ?」


 緊張で、心臓が破裂してしまいそうなほどバクバクと鳴っている。

 後は生き返らせたい人物を、心を込めて叫ぶだけ。たったそれだけで生き返る。こっちの世界ではシスタって名前だが、俺にとっては萌衣だ。「萌衣」と叫ぼう。

 よし、やるぞ。やるんだ俺!

 しかし、いくら気合を入れても声がなかなか出てこない。どうしてだ。俺はこんなにも萌衣に会いたいのに。


「カプチーノ様、怖いのですか?」


「怖い? どうしてだ?」


「さっきからずっと黙ったままです。もしかしたら失敗するかもしれない、そうしたらもう他にどうすればいいか分からない、そんな感情に支配されているんじゃ」


「……」


 自分でも気づかなかった、自分の心。それをカリバに気づかされた。そうだ。俺は怖いんだ。失敗を、恐れているんだ。


「大丈夫ですよ」


「え?」


「シスタさんは生き返ります。だって、こんなにもカプチーノ様に想われているのですから」


「俺に、想われている……」


「はい。だから、叫びましょう。腹の底から全力で」


「そう、だな! 俺があいつをこんなにも想っているんだから、生き返らないはずがないよな!」


 ありがとうカリバ。背中を押してくれて。

 今度こそ言おう。一度気持ちを落ち着けてから、大きく息を吸い込み、肺に空気を溜めた。手はガクガクと震えているが、もう恐れない。だって、失敗なんてするはずはないのだから。絶対に萌衣は生き返るのだから。


 よし。


「萌衣えええええええええええええええ!!!」


 人生で最も、大声で叫んだ。心も、ありったけ込めた。


「あっ……」


 見惚れてしまうような美しい光が、俺の目の前に発生した。

 その光は、やがて人の形へと変わっていき――


 気がつけばそこに、俺の最愛の女性が立っていた。


「うぅ」


 萌衣を見た瞬間、俺の中の防波堤は崩れた。まるで滝のように、涙が溢れてくる。こんなに泣いたのは、生まれて初めてかもしれない。何度も目を拭っても、涙は消えることなく流れ続ける。


「え? ちょっ、お兄ちゃん? なんで泣いてるの!? というか、わたし怖い男の人がいっぱいいる街にいたはずだよね? なんでここに?」


 久しぶりに聞いた声。その声は、目の前にいる彼女が本物だと確信するのに十分だった。この声に、俺は何度も励まされて、何度も助けられて。


「え? ほんとに何が起こってるの? 皆いっぱい泣いて、なんか悲しいことでもあったの?」


「いや、悲しいことなんてない。むしろ、嬉しいことがあったんだ」


 これ以上の喜びが、この世界に存在するだろうか。俺は今、あらゆる人類の中で最も幸福を感じている。


「萌衣!」


 我慢できず、俺は涙を流したまま萌衣に抱き付いた。萌衣の体は、とても暖かい。


「ど、どしたのお兄ちゃん! う、嬉しいけどさ、そんな突然抱き付いたら、びっくりするよ!」


「萌衣、萌衣、萌衣!」


 涙も、想いも、溢れて止まらない。俺は、こんなにも萌衣が好きだったんだな。


「お兄ちゃん、苦しいよぉ」


 俺は、萌衣を強く強く抱きしめた。もう二度と離さない。もう二度と離れない。


「萌衣」


 抱きしめたまま、俺は呟く。


「何? お兄ちゃん」


「おかえり」


 俺達のところに、おかえりなさい。

これにて蘇生編はおしまいです。

次話から新編です。

新編ではミステの正体が……!

そして、シスタが復活したので今までいなかった分シスタもいっぱい書く予定です!

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