表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/203

風林火山

 伝説級の能力者四人の体が、それぞれ台座の色と同じ色で光りだした。

 赤ちゃんが青く、ウトが緑に、アイファが赤く、マヤが黄色に光り輝いている。


【ここに、新たな力が生まれる】


「新たな、力……」


 それは、萌衣を生き返らせる奇跡の力。

 って、ん?

 ルドーワの声が聞こえたと思ったら、いつの間にか俺は知らない場所にいた。


「ど、どこだここは!?」


 周りは暗闇。それ以外は何もない。


「カリバ! ミステ! シュカ!」


 俺の叫びに、誰も答えることは無い。くそっ。どうなっちまったんだ!?

 闇雲に、地も空も無い暗闇を泳ぐ。誰か、誰かいてくれ!


【青は風】


「あうあう!!」


「お、お前は!」


 ルドーワの声と共に、赤ちゃんが姿を現した。暗闇にも関わらず、何故か赤ちゃんと俺の体のみははっきりと見える。


「なあ赤ちゃん、ここがどこだか分かるか?」


「あう?」


「そうか。そりゃそうだよな」


 首を捻った赤ちゃんを見て、赤ちゃんもここがどこだか知らないのだと分かった。


「ぐっ!?」


 急に、風が吹き始めた。壁も足場も無いこの場所では止まることもできず、俺はただ風の吹くままに流される。

 どれくらい流されただろうか。止まること無い風の中、俺は虚空を見つめる。ああ、ここはどこまでも、何も無いんだな。

 不思議なことに、どれだけ流されようとも赤ちゃんまでの距離は変わらない。俺と赤ちゃんは、近づきすぎることも遠くなりすぎることもなく、一定の距離を保っている。


【緑は林】


 再び声が聞こえた。今度はなんだ?


「いてっ!」


 風に流されていると、何かにぶつかった。

 暗闇なので、それが何なのかはよく見えない。だが、この匂いは――


「木か?」


 確認をするべく鼻を近づけると、草木の匂いが鼻腔をくすぐった。手触りも、普段木に触れた時と同じようにざらざらとしているし、これは木で間違いないと思う。

 なぜ木がここにあるんだ? さっきまではこんなもの無かったはずだ。何も分からないまま、依然として風はやまず、触れている木と共に流されていく。


「カプチーノ」


「ウト!」


 俺と赤ちゃんしかいなかった世界に、ウトがいた。暗闇の中にも関わらず、ウトの姿は赤ちゃんと同じようにはっきりと見える。一体いつからいたのだろう。もしかしたら、見えていなかっただけで最初からいたのか? その答えは分からないけれども、出会えたことに喜びを感じた。


「ウト、ここがどこだか」


「ワカリマセン。イツノマニカココニイマシタ」


「俺と同じか」


 一体ここはどこなのだろう。俺は、どうやってワードルからこの場所へと来たのだろうか。


【赤は火】


 またルドーワの声が聞こえた。そして突然、暗かった世界に明かりがついた。


「おぉ!」


 辺り一面が木や花だらけだ。地面も無いのに、それらは宙に根を張っている。当然その根は根の体を成しておらず、風に流されている。

 流れている木や花の一部は、真っ赤に燃えていた。これが明るくなった原因か。火は次々と、風によって燃え広がっていく。

 なんか、暑いな……。さっきまでは暑くも寒くも無かったのだが、今はもう暑くて仕方がない。


「赤ちゃん、ウト、大丈夫か?」


 これほど暑いと、二人が心配だ。


「ウン。ダイジョウブ。トッテモアツイケド、ナゼダカゼンゼンヘイキ」


「あうあう!」


 それなら良かった。確かに俺も、かなり暑いはずなのに全然平気だ。


「あ、カプチーノ!」


「やっぱり来たか」


 次にアイファが現れることは、今までの流れからしてなんとなく分かっていた。


「もちろん、お前もここがどこかは知らないよな?」


「もちろんっていうのが引っかかるけど、うん、わたしもここがどこだかは分からない」


「ほんと、どこなんだよここ」


 暑いし風吹くしで、あまり長くいたい場所では無い。


【そして黄は山】


 頭の中にルドーワの声が響く。

 ま、次はマヤが来るんだろうな。ここまで来れば誰でもわかる。


「おっ」


 何も無かった場所に地面が出来た。今まで風の吹くままに流されていたのと変わって、とりあえずは足場を手に入れた。

 俺達と同じように流れていた木や花は、地面に根をはっていく。地面があるだけで、世界は全く違ってくる。


「さて、そろそろ来るはずだが」


「あ! 皆集まってる!!」


 やっぱり来た。俺達がいたのを見つけ、マヤは大きく手を振った。


「ねえねえ、ここどこ? マヤ達なんでこんなところにいるん?」


「分からん。俺達も全員気が付いたらここにいたんだ」


「マジ!? えー、帰れないとかマジあり得ないんティー!! まあでも、君と一緒ならそれはそれでいいかも、なんて!」


「どのみち帰れなきゃいずれ餓死しちゃうっての」


 うーん。四人が全員集まったのはいいが、ここからどうすればいいんだ?


「な、なに!?」


「ナンダカカラダガヒカリハジメマシタ!」


 伝説級の能力者四人が、全員それぞれ別の色で光り始めた。ここに来る前に見た光と同じ色だ。

 だがあの時よりも、今の光の方がずっと眩しい。思わず目を閉じてしまいそうなくらい光輝いている。


【それらを受け入れ、新たなる力を】


「なんだ!?」


 四人が放つ輝きが、俺に向けて一直線に伸びてきた。


 なんだろう。凄く心地いい。

 ぽかぽかとした暖かさが、全身を包み込む。ずっと身を委ねていたい。


 やがて俺の体は、様々な色を放ち光り出した。伝説級の四人の誰よりも強く、俺から発する光がこの場全体を包み込む。


【今、新たな力が誕生した。さあ目を覚ませ、お主の手には、希望の光が満ちている】


 世界がぼやけていく。見えていたものが、見えなくなっていく。そして――


「カプチーノ様!」


 カリバの声がした。


「あれ? ここは――」


「ワードルですよ! カプチーノ様と伝説級の能力者さん達は、さっきまで皆眠ってしまっていたのです」


「そうか」


 だったら、さっきまで見ていたのは夢、なのか? 夢にしては木にぶつかった時に痛みはあったし、暑いという感覚もあったんだが。


【カプチーノ、お主、何か変わったことは無いか?】


「変わった事? あ!」


 胸の奥に、何か力強いものが溜まっている感覚がある。


【お主は既に魔法を手に入れておる。後は、発動するだけだ】


「発動、するだけ……」


【そうだ。生き返らせたい人物を、心を込めて叫べ。さすれば、お主は】


「復活させることが……できる!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ