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東西南北

  今この場には、最北端、最東端、最西端、最南端、それぞれの伝説級の能力者が全員いる。

 ここまで来るのに色々なことがあった。その全ては、今日この時のために。


「ドルーワ、聞こえるか!」


 ふわふわと浮いている煙に向けて、俺は叫んだ。


【そんなに大声を出さずとも聞こえておる】


 頭の中に、直接言葉が入り込んでくる。


「なあドルーワ! 伝説級の能力者、全員集めてきたぞ!!」


【ふむ、そのようだな】


「本物かどうかの確認はしなくていいのか?」


 姿を見ただけで、この煙は伝説級の能力者かどうか分かるとでもいうのか?


【本来は確認するべきなんだろうが、おぬしの場合は別だ】


「俺の場合は別? よく分からんが、確認はいいんだな?」


【ああ】


 なんで俺の場合は別なんだ? よく分からんが、やらなくてもいいのなら別に一々やる必要は無い。


「じゃあえっと、確か伝説級の四人をそれぞれの台座に立たせればいいんだっけか?」


【よく覚えていたな。確かにその通りだ】


「よし、じゃあ皆聞いてくれ。この場所に、四つ台座があるのは分かるよな? その台座の上に、それぞれ一人ずつ立ってくれ」


「わたし達が台座に立つだけで、カプチーノは妹に会えるの?」


「多分な」


「なんか不思議だなあ。ねえ、カプチーノの妹ってさ、いったい何者なの? 封印されてたり?」


「封印ってわけじゃないけど、今は普通じゃ会えない場所にいるんだ」


 死んでいる、とはさすがに言えない。そもそも人を生き返らせる方法が存在するということは、この世で最も大きな秘密であり、言いふらすわけにはいかないからな。アイファのことを信用していないわけではないが、人を生き返らせることができるというのを知っているのは、俺の嫁達とトタースに働く一部のメイド、そして、リエカのこの秘密を託してくれた人だけでいい。


「分かった。じゃあわたしはそこの台座に立つよ」


 本当はもっと具体的に聞きたかっただろうに、アイファはそれ以上追及はしなかった。アイファの優しさに、心から感謝する。


「なんだかよく分からないけど、ラブな君の言うことならオールオッケー!! マヤも張り切って台座に立っちゃうよ!!」


 台座に立つのに張り切るも何も無い気がするのだが、協力的なのは非常にありがたい。


「そこの二人も、頼めるか?」


「ウト」


「へ?」


 うとってなんだ? 俺の知らない言葉か?


「ソコノフタリジャナクテ、ウトデス」


「あ、ウトって名前なのか。そっか、ごめんなウト。じゃあ改めて。ウト、頼めるか?」


「アナタノタノミナラバ」


 俺の頼みを、ウトはニコッと笑って快く引き受けてくれた。


「ありがとうウト! えーと、そこの赤ちゃんは」


「あうあう!!」


 どうやらまだ俺からの愛の囁きに浸っているらしく、凄く笑顔だ。


「大丈夫そうだな。よし、じゃあ皆、台座に立ってくれ!!」


 四人はそれぞれ頷き、適当な台座に立った。だが。


「何も起きないぞ?」


 何か起こった様子は一切ない。ひょっとして、もう生き返らせる魔法を手に入れてたりするのか?


「なあドルーワ!」


【なんだ?】


「何も起きないぞ?」


【適当な立ち位置では意味が無い。それぞれ決まった台座に立たなければ】


「そういうことはもうちょっと早く言ってくれよ……。で、その決まった台座ってのはどんなのだ?」


【それは自分で考えねばならない】


「なんでさ!」


【生き返らせるのは我ではなく、お主だからだ】


「なんだよケチだなぁ」


  まあごちゃごちゃ言っても仕方がない。誰がどの台座に立てばいいのかを考えてみるか。

 台座はそれぞれ別の色をしている。おそらく、これがヒントになるだろう。

 色はそれぞれ、東が青、西が緑、南が赤、北が黄だ。アイファは炎を操るから、赤い台座な気がする。んじゃ、次は青を考えてみるか。青というと水だが、水を操るやつはこの中にはいない。うーん、となると。


「別にそんな悩まなくてもいいんじゃないですか?」


 俺が思案顔でいると、カリバが言った。


「なんでだ? まさか、分かったのか?」


「分かったも何も、普通に最北端の街の人は北の台座に、最南端の街の人は南の台座にって感じで立てばいいのでは?」


「なるほど」


 何を悩んでいたのかが馬鹿馬鹿しいくらい単純な答えだった。 


「皆、今の話は聞こえていたな? 立つ場所を、自分の住んでいた街の方角に変えてくれ」


 俺の言葉に、四人は頷き動き出した。まあほぼ間違いなくこの立ち位置が正解だろう。

 すぐに、皆は自分のあるべき立ち位置へと着いた。


「これで合っているんだろうけど、何も起こらないな」


「カプチーノ様の立つ場所も決まっているんじゃないですか?」


「ああ、なるほど」


 その可能性は高い。魔法を得る本人が立ち位置が決まっていないなんておかしいからな。


「ま、普通は真ん中だよな」


 他に台座が残っているわけでも無いし、真ん中で正しいと思う。


「で、真ん中に立ったわけだが」


 何も起こらない。どうなってるんだ? 俺の立ち位置は実は真ん中ではないのか?


「ドルーワ! 何も起きないぞ」


【やれやれ。確かに東西南北で立つ、という着眼点は正しいのだが、それでは意味が無い。お主は世の(ことわり)を逆転するのであろう? ならば、答えは自ずと見えてくるはずだ】


「世の理の逆転……」


 人は死んだら生き返らない。それが世の理だ。だが俺は、今のこの場においてのみ、人は死んでも生き返るという理へと逆転する。あり得ないことを、逆転してあり得ることにする。


「まさか、立ち位置を逆にするとかか?」


 言ってみた矢先、そんな単純なわけないよな、と気づいた。

 だとすると、えーっと。


【分かったのならさっさと立ち位置を入れ替えるがよい。早く会いたいのであろう?】


「え? まさかさっきのが合ってたのか?」


 てっきりもっと難しい仕組みだと。


【わざわざそう分かりにくいシステムにするメリットも無かろうて。そもそもこの儀式において最大の難関は、伝説級の能力者四人を全て集めて信用を得ることであり、立ち位置で頭を悩ますことではないからな】


「なるほど。じゃあ、今の立ち位置を逆にすれば」


【お主の望みは叶うだろう】


「皆、今いる台座とは反対の台座に立ってくれ!」


 答えを知ると、俺はすぐに皆へと指示を出した。


「ちなみに、俺の立ち位置は合っているのか?」


【お主の立ち位置などどうでもよい。この場において、伝説級の能力者全員の信用を得ているものが、魔法を手に入れる】


 じゃあ、俺は別にこのまま動く必要も無いのか。

 

「!?」


 四人が全員正しい台座へと立った瞬間、突然四人はそれぞれ違った色で輝きだした。


「なあ、これって!」


【儀式が始まる。今日、あり得ないことは、あり得ることとなる】


 遂に、萌衣が生き返る!

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