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集い

「なあマヤ、ちょっと来てほしいところがあるんだが」


「いいよ! 君の為ならどんなところでも行っちゃう!」


 マヤは、信用しきった真っ直ぐな眼で俺を見る。


「そいつは助かる。よし、じゃあシュカ、ワードルまでとんでくれ」


「了解! ついに、始めるんだね」


「おう!」


 今日、萌衣は生き返る。

 皆それぞれシュカの体を掴む。後はワードルまで一っ飛びだ。


「はい、到着!」


「え? え?」


 初めてシュカの瞬間移動を経験したマヤは、戸惑って辺りを見渡した。まあ一回目は普通驚くよな。


「ここどこ?」


「ここはワードルって言って、お前が必要な場所だ」


「必要な……場所!」


 どうやら自分が必要な場所ってのが気に入ったらしい。目をキラキラと輝かせて辺りを見回している。


「さてシュカ、どんどん他の皆も連れてくるぞ」


「分かった」


 この場には、伝説級の能力者一人のみを連れてきても何も意味が無い。四人全員いてこそ意味がある。


「カリバとミステはここで待っててくれ。ちょっと残りの三人連れてくるから」


「分かりました」


 カリバとミステが頷いたのを確認すると、俺はシュカの手を握った。


「さて、まずはアイファから連れてくるか」


「おーけー!」


 シュカの返事と共に景色が一変する。ここはもうワードルでは無い。


「やっぱり暑いな……」


 ワードルとは気温が違い過ぎる。まだ着いたばかりだというのに、既に背中まで汗でびっしょりだ。


「アイファが住んでいる家の場所は覚えてる?」


「まあ大体はな。それに、あの家の近くでは色々あったし」


 アイファを落としに来た時のことを思い出す。あの二人は今、どうなっているだろうか。まあ、普通に上手くやれているとは思うけれど。

 記憶を頼りに、俺達は難なくアイファの家まで来た。


「あ、カプチーノ!」


 家にノックをする前に、俺達の通った道と反対方向からアイファが来た。持っている鞄を見ると、どうやら買い物帰りなようだ。


「妹ちゃんに会うために、私の力を借りに来たんだよね?」


「そういえば、アイファには萌衣のことを伝えてあったんだったか」


 アイファの恋心を俺から逸らすために、俺は萌衣のことを話した。アイファは、俺のことを好きだったというのに、俺の幸せのために、手を貸すことを約束してくれた。


「うん。ずっとカプチーノが来るのを待ってたよ」


「そうか。本当はもっと早く来るつもりだったんだけど、準備に色々手間取ってな。で、どうだ? 父親とは」


「意外と前とそんなに変わってないかも」


「そんなもんか」


「そんなもんだよ」


 そういえば、俺も萌衣と結婚したからといって、萌衣との関わり方とか全然変わらなかったな。案外、誰もがそういうもんなのかもしれない。


「父親は今どこにいるんだ?」


「お仕事だよ。パパ、今まではお魚屋さんをやってるって嘘ついてずっと召喚士として稼いだお金で家計をやりくりしてたみたいなんだけど、あの嘘をきっかけに本当にお魚屋さんになっちゃったの」


「マジでか! ちなみに、そのお魚屋さんには行ったことあるんだよな?」


「もちろん。というか、ついさっき行ってきたところだし、ほら」


 アイファが鞄の中身を広げると、そこにはびっしりと魚が入っていた。

 

「ほぉ、こいつは美味そうだ」


「よかったら、家で食べてく?」


「いいや、今日は妹に会ってあいつが一番好きだったものを食べに行く予定なんだ」


「そっか」


 俺の言葉を聞いて、アイファは少ししょぼんとした。


「だけどまあ、後で必ず食べに来るよ。その時は、妹を連れてな」


「よーし! じゃあその時は、今日食べるらしい食べ物に負けないくらい、美味しいお魚料理をつくっちゃうんだから!」


 アイファはすぐに笑顔を取り戻し、ガッツポーズをした。やっぱり女の子は、笑顔が一番だ。


「そいつは楽しみだ。じゃ、そろそろ行きたいんだが、その前に父親に出かけること伝えとかなくちゃだよな?」


 あの父親のことだ。勝手に連れて行ったら何をしでかすか分からない。


「いや、大丈夫だよ。今のパパはわたしのことを信用してるから、ちょっとくらい家を空けても全然問題ない!」


「そりゃ助かった。じゃあ、行くぞ」


「えーと、行くのにどれくらいかかるの?」


「三秒ってところかな」


「三秒!?」


 俺の返事が予想外だったようで、アイファは声を上げて驚いた。


「言っておくが、嘘じゃないぞ? とりあえず、こいつの体のどこかしらに触れてくれ」


 そう言って、俺はシュカを指差した。


「この人に触れればいいの?」


 頭に疑問符を浮かべながらも、とりあえず俺の言うとおりにアイファはシュカに触れた。


「じゃあシュカ、頼む」


「了解!」

 

 元気よくシュカが頷く。そして。


「はい到着!」

 

 あっという間にワードルに着いた。


「ど、どうなってんの!?」


 何が起こっているか分からずに、アイファはキョロキョロと辺りを見回した。


「ちょっと瞬間移動しただけだよ。そんじゃ、あそこのカリバ達と一緒に待っててくれ。またすぐ戻ってくるから」


「瞬間移動!? もう何が何だか……。とりあえず、わたしはここで待ってるだけでいいんだよね?」


「ああ、そうだ。よし、じゃあ次行くぞシュカ。次はあの、言語が分からなかった女の子の所だ」


 言語が分からなかったため、もちろん名前すら知らない。だが、きちんと落ちている。


「ほい到着!」

 

 瞬間移動で、あっという間にイーストまで着いた。


「さて、どの辺だったかなあ。あの子と会ったのは」


 他の街と違って、この街にはあまり思い出も無いので、よく覚えていない。


「ねえ、あの子じゃなかったっけ」

 

 シュカが指差した方向には、確かにあの時の女の子がいた。なんという偶然。


「おーい!」


 大きな声で呼んでみると、女の子は俺達の存在に気づき、俺達のいるところまでトコトコと走ってきた。


「ア、アノ、コンニチハ」


「!?」

 

 片言だが、言っていることが分かる。以前は意味の分からない言葉を話していたのに。


「この街の言語は違うんじゃなかったのか?」


「アノ、アナタガコノマチノヒトデワナイトワカッタノデ、イッパイコトバヲベンキョウシタンデス」


「おぉ」


 俺は何にもしてあげられないのに、この子はわざわざ俺のために勉強を……。なんだか申し訳なくなってくる。


「なあ、ちょっと来て欲しい所があるんだけどいいか?」


「ハイ、モチロン」


 にぱーっと笑顔で女の子は頷いた。この子、改めて見ると結構可愛いな。


「シュカ、とんでくれ」


 女の子の手をシュカに握らせてから、俺は言った。

 

「おーけー!」

 

 シュカの返事と共に、俺達は一瞬でワードルに戻ってきた。

 さて、後はあの赤ん坊を連れてきたら終わりか。

 萌衣は今日、生き返る。

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