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感情の戻った二人

 ドクターナミミの持っていた機械を破壊し、感情を奪われていた人達は皆感情を取り戻した。

 大人しかった街が、あっという間に活気づいていく。まるで別の街に来てしまったかのようだ。


「さて、まずはミステとカリバを連れてくるか」


「そうだね。二人ともじっとしていられないだろうし」


 最後の伝説級の能力者はこの街にいるので、その女の子を落としてから2人のところに行くってのもありもしれない。だが、今までずっと一緒に行動していたのに、最後の一人を落とす時だけ別行動ってのはな……。

 俺達は全員、同じ目的「萌衣の復活」を目指して頑張っている。だからこそ、最後まで全員でやり遂げたい。


「じゃ、飛ぶよ。トタースまで」


「おう」


 萌衣が生き返るまで帰ってこないつもりでいたトタースに、当たり前のように行ったり来たりしている。萌衣が生き返ったら、謝らなくちゃいけないことがたくさんできちまったな……。


 シュカの手を握り、俺達はトタースの自分の城へととんだ。


「カリバとミステはどこにいるかな」


「まあ普通に考えれば俺の部屋じゃないか? ここ最近は皆あそこのベッドで寝てたし」


 皆それぞれの部屋を持っているというのに、ダラダラモードの皆は移動する気が全く無く、食卓から一番近い俺の部屋で過ごしていた。


「じゃあ行こっか、カプチーノの部屋に」


「そうだな。そこ以外はパッと思いつかないし」


 2人で長い廊下や階段を止まることなく走っていく。なんか、家って大きければ大きいほど良いってイメージがあるけど実際は大きすぎると普通に面倒だ。こんな大きな城にしなければよかった。


「カプチーノ様!!」


 走っていた俺達に、馴染みある声が投げかけられた。


「カリバ! それにミステも! なんでこんなところにいるんだ? てっきり俺の部屋にいるもんだとばかり思ってたんだが」


 俺の部屋まではまだそこそこ距離がある。それにこんなところ、普段は外に出る時くらいしか通らない。一体どうして。


「あの、突然感情が戻って、いてもたってもいられなくなりまして、これからあの街に向かおうと」


 カリバの言葉に、シュカもこくりと頷いた。


「あの街に向かう!? なーに言ってんだよ。こっからあそこまでどれだけ離れていると思ってるんだ。歩いて行ったら一週間以上は余裕でかかるぞ」


「分かっています。分かっていますけど、でも。カプチーノ様が心配で!」


「馬鹿か、俺はそう簡単にやられるような人間じゃない」


 なんせ俺は体力も防御力も最強だ。チカみたいな存在がいない限り、俺が負けるようなことは決して無い。


「それはそうですけど……」


「というか心配も何も、お前の感情が戻ったってことはどういうことか分かるだろ?」


「まさか、ナミミを倒したのですか!」


「ああ」


「さすがですカプチーノ様! それに比べて私は、ずっとボーっとしていて、何もすることができませんでした……」


 申し訳なさそうにカリバは言った。


「気にするな気にするな。俺だって感情戻らなきゃあお前と同じだったさ」


 たまたま感情が戻ったから戦えただけ。萌衣の部屋に行くことが無ければ、俺はずーっと感情を失ったまま、ナミミに会いに行くことすらしなかっただろう。


「でもカプチーノ様。どうやって感情を取り戻したんですか?」


「カリバ、あんた見て分かんないの? 今のカプチーノ、明らかに変なところがあるでしょ」


「変なところ? いえ、別に何も」


 シュカが何を伝えたいのかが分からずに、カリバは疑問符を浮かべた。


「あ・た・ま! ブラで縛ってパンツ被ってるじゃない!!」


 ビシッと俺の頭を指差してシュカは叫んだ。


「あー、言われてみればそうですね」


「なんで今まで気づかなかったのさ! どう考えてもおかしいでしょこれ!」


「カプチーノ様に会えたのが嬉しくて、そんなところに気づく余裕が無かったので……」


「余裕なくても普通気づくから! というか、カプチーノとは別にそんな久しぶりってわけでもないでしょ!」


「だって、感情を失っていた時は、情けないことにカプチーノ様への愛を忘れていたんですよ! だから、大好きという想いを持った状態で会うのは一週間振りなんです!」


「はいはいそうですか。私だったらむしろ、一週間振りにカプチーノに会ったら、真っ先に大好きなカプチーノの顔を見るからすぐに気付くけどね。で、話し戻すけど、感情の戻った理由なんだけどさ。その被ってるパンツが、カプチーノの感情を守ったんだよ」


「パンツが守った!? そのパンツ、一体誰のなんですか!」


「気になるところそこ!? どうしてパンツで戻ったのかじゃなくて!?」


「だって、カプチーノ様を守るとかかっこいいじゃないですか。そのパンツの主、羨ましすぎます!」


「そ、そう……。まあ別に隠す必要も無いから言うけど、そのあんたが羨ましがってるパンツの主、シスタだってさ。ついでにブラもシスタのやつ。カプチーノは、シスタのパンツの匂いを嗅ぐと感情が元に戻る変態さんだったらしいよ」


 なんか言い方に棘があるな……。実際に本当に萌衣のパンツで感情戻るから否定はできないけども。


「シスタさんの、ですか。私のじゃ駄目だったんですか?」


 うるうるとした瞳を向けながら、カリバは俺に聞いた。


「別にそんなのどうでもいいだろ。ほら、さっさと行くぞ。最後の伝説級の能力者を落としに」


「ど、どうでもよくなんてないですよー。というか、それ被ったまま行くんですか?」


「ああ、これ外れないからな。固く縛り過ぎて」


「そうですか……。なんか、それをずっと付けているとなると、カプチーノ様がシスタさんだけをずっと愛しているみたいに思えて普通に辛いんですけど」


「そんなこといったってなあ。これ取れないし――って、あれ?」


 俺の顔から、突如パンツが消えた。あんなにぎっちり縛られていたのに。


『消した』


「ミステ、なんでさ」


 別にパンツが好きな変態だとかそういうわけでは決してないんだが、俺を守ってくれたパンツが無になってしまうと普通に悲しい。


『被りたいなら代わりに私のパンツを被って』


「いや、別に被りたくはないけどさ……」


 そもそも俺、性欲でパンツを被っていたんじゃなくて、ナミミを倒すために被っていただけだし……。


『消しても問題ないはず』


「いや、でもさぁ……」


 すごく腑に落ちない。なんで消されたんだ、俺のパンツ……。


『それともう一つ カプチーノにやらねばならないことが』


「やらねばならないこと? なんだ?」


 今度は俺の履いているパンツでも消す気か?

 

『お礼』


「お礼?」


「あり……がと」


「お、おぉ……」


 ボソッと、ミステはか細い声で呟いた。

 久しぶりに聞いたミステの声。顔を逸らしながらの照れくさそうな言い方も相まって、俺は思わずキュンとしてしまった。

 心から思う。感情が戻ったミステは、最高に可愛いな、と。

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