新たな仲間
どうしたものかとしばらく悩んでいると、謎の少女の前に、突然七色に輝く文字が現れた。
文字は、『ずっと 一緒』と書かれている。
「なんだこれ?」
「これは魔法で書かれた文字ですね。私も見るのは初めてです」
「そんなものもあるのか」
俺のいた街トタースで、もう大体の魔法は見たつもりだったのだが、まだまだ知らない魔法があるのか。
「一応確認しておくけど、お前はこんな魔法持ってないよな?」
「ええ」
「ということは」
この魔法を使ったのはこの謎の少女というわけか。
「ずっと一緒、どういうことでしょうか」
ずっと一緒……。
この一文だけでは、さっぱり分からない。
だが、文字が書けるのなら、意志疎通ができるはずだ。
だったら直接女の子に意味を聞こう。
「なあ、ずっと一緒ってなんだ?」
少し屈んで、女の子と目線を合わせて話す。
すると、すぐに新たな文字が浮かびあがった。
『ずっと 一緒 約束 あなたと』
「えーと、あなたってのは、俺のことか?」
俺の問いに、少女はコクリと頷く。
「じゃあ、俺がお前とずっと一緒と約束したと?」
再びこくりと頷く。
「カプチーノ様は、初対面なのですよね?」
「ああ、そのはずだ」
俺の記憶にこんな女の子はいない。
だが、忘れているという可能性もある。
「えっと、君は、トタースの子かい?」
ふりふり、と女の子は首を横に振った。
「じゃあ、トタースを訪ねてきたことはあるかい?」
ふりふり、と一つ前の質問と同じ反応を示す。
なら、やっぱり俺はこの子と会っているはずがない。
俺は異世界に来てからトタースから出たことは無いんだ。
一体どういうことだ?
「誰かと勘違いしてるのでしょうか?」
「そうなのかもな」
俺の顔は、平々凡々としている。
誰かと間違われるのも無理はない。
しかしそれを聞いた少女は、首を横に何度も振ると、新たな文字を出した。
『カプチーノ 約束』
「勘違いじゃない、のか?」
少女はふんふんと、大きく二回こくりと頷いた。
「うーん」
ますます分からない。
『約束』
「いや、お前が約束って言っても、俺はそんな約束知らないんだ」
『知らない 当然』
「当然?」
『あなたと私 初対面』
???
もう訳が分からない。
俺とこの子は初対面。確かにそうだ。俺はこの子のことを知らない。
だけど、この子は俺と約束をしたんだろ? だからここにいるんだろ?
「顔を合わせずに約束したってことか?」
俺の質問に、少女は首を横に振る。
『私とあなた 初対面 違う』
「え?」
さっきは初対面と言ったのに、今度は初対面じゃない?
どちらかが嘘なのか?
『あなたと私 初対面 だけど 私とあなた 初対面 違う 私 あなた 約束 一緒』
「ごめん、君が何を言いたいのかが俺には分からないよ」
『全てまとめると』
「これからあなたと共に、私も行動する」
『ということ』
伝えることは全て伝えた、といった感じで、少女は俺の顔をじーっと見つめた。
「あなた、喋れたのですね」
少し間を置いてから、突然声を発した少女に、カリバは驚きつつそう呟く。
俺も驚いた。
だが、俺が驚いたのは、この少女が透き通るような綺麗な声を発したことだけではない。
少女は言った。
「これからあなたと共に行動する」と。
つまり、このよく分からない女の子と、俺達は一緒にドラゴンを退治しに向かわなくてはならないのか?
それって。
足手まといにも、ほどがある。
世界一強いドラゴンに、こんな幼い女の子を連れて、俺達は挑まなくちゃいけないってのか?
いや、だが、それはそれで。
面白いのかもしれない。
俺は不思議と、この女の子と共に行動することが苦では無かった。
だから。
「おーけー。一緒に来いよ」
少女の発言に、俺は悩むことなく、乗ることにした。