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静かな街 

「これが、最後の街だ!!」


 この街で伝説級の能力者を見つけて信用を得れば、萌衣は復活する。萌衣にまた会える。


「なんだか普通の街っぽいな」


 まああくまで見た感じは、だけどさ。もしかしたらまた言語が違うとかそういうのがあるかもしれないし油断はできない。


「なんか、凄い順調だよね」


「そうだな」


 たまたま全員が女だったということもあり、ここまでで信用を得られなかった相手はいない。


『静か』


「ん? どうしたミステ」


『この街 静かすぎる』


「あー、言われてみればそうだな」


 街ってのは普通騒がしいもんだ。だがこの街では、真昼間だというのに人の声一つ聞こえてこない。


「なんだか、不気味ですね……」


「ひょっとして、この街には人がいないとかじゃないだろうな」


 この街に来てからまだ一人も人を見ていない。


「いえ、そんなはずはありません。見てください、どの家にも灯りがついています」


 カリバの言う通り、確かにどの家も暗くない。って、ん? 


「どの家も灯りがついてるっておかしくないか?」


 家を空けるときは、普通は灯りを消す。つまり、全ての家の灯りがついているということは、どの家も空けていないということになる。


「確かにおかしいですね。この街は、家族の誰か一人は必ず家に残っていなければならないとかそういう掟があったりするんでしょうか」


 そんな掟、普通あるか? というかこの静けさ、ひょっとすると家にいるのは家族一人どころか、家族全員なんじゃないのか? 


「なんか、嫌な予感がするな」


 この街は、普通の街では無い気がする。


「あ! 人いたよ!」


「何!? 本当か!」


「うん。ほら、あそこ!!」


 シュカが指差したところには、確かに人がいた。髪の長い女の人だ。なんだ、全住民が引き籠っているのかと思っていたが、そんなことないじゃないか。


 シュカが見つけた人は、ゆっくりとした足取りでどこかに向かっていた。俺達は、話しかける前にどこに向かっているのかを確かめるため、気づかれないように後をつけた。

 女の人は、しばらく歩くと八百屋らしきところで足を止めた。ちなみに八百屋は店主はおらず、野菜だけが並んでいる。


「買い物に来たんでしょうか?」


「多分、そうだと思うけど」


 店主がいないんじゃ何も買えないな、あの女の人は無駄足だったってことだ。

 

 八百屋についてからも、俺達はしばらく様子を窺っていた。だが。


「ずっと止まってますね……」


 もうかれこれ二十分くらい、店主のいない八百屋の前で女は立っていた。


「……そうだな。これ以上何もしそうでは無いし、話しかけてみるか」


 このままただ隠れて見ているだけではもう何も進展しそうにない。俺達は、女の人の目の前へ行くことにした。


 にしてもこの女、なんてやる気のない顔をしているんだ。ただ無気力に、ぼーっとしている。


「あのー、ちょっとお話いいですか?」


「話? まあ、別にいいですけど」


 ゆっくりとした心のこもっていない返事が返ってきた。


「あのー、この街、人が全然いないみたいなんですけど」


「あー、だって多分皆、家に篭ってるんですよ」


 予想していたこととはいえ、住民にはっきりとそう告げられると、その異常さには驚かざるを得ない。一体何故だ?


「私も、八百屋やってなかったんで帰ろうと思います。あー、もう家に食べる物何も無いのにどうしようかなー」


 家に食べる物何も無いって、結構まずいことなんじゃないのか? それなのに、女の人は全く危機感が無さそうに表情一つ変えずに言った。


「あの、少し食べる物を譲りましょうか?」


「ありがとうございますー。いただきますー」


 口ではお礼を言っているのに、全く嬉しそうな様子を見せずに、女の人は言った。


「では、後で持ってきますね」


 おそらく、シュカに頼んでトタースから持ってくるのだろう。トタースには余るほど食材はあるし。


「カリバ、せっかくだし伝説級の能力者の情報も聞いた方がいいんじゃないか?」


「あ、そうですね。あの、この街に凄い能力を持った人っていますか?」


「凄い能力? あー、それなら知ってますよー。海に、陸地を作ることができる女の子なんですけどー」


「海に陸地だと!?」


 そんなこと普通じゃあり得ない。間違いなくそいつは伝説級の能力者だ。


「そいつがどこにいるか教えてくれないか!」


「えー、まあいいですけどー。えーと――」


 感情の全くこもっていない話し方で、居場所を俺達に教えてくれた。


「じゃあ、教えたので私は帰りますねー」


 結局一度も表情を変えることなく、女の人は行ってしまった。


「不思議な方でしたね」


「そうだな。なんていうか、人と話している気がしなかった」


 人であることは間違いないんだけどな。


 ☆


「ここ、ですね」


「だな。じゃあ、行くか」


 コンコンと、扉を二回ノックした。灯りは勿論ついているので、人がいないということは無いはずだ。


「はい。どちら様ですか?」


 しばらく待つと、無表情のおばさんが出てきた。


「あの、こちらの家に、海に陸地を作れる人がいると聞いて来たのですけど」


「あー、娘のことですね。娘に用事ですか?」


「はい、お願いします」


 八百屋の前であった人と全く同じで、この人もまた、ずっと無表情のままだ。


「はいー、私に何か?」


 おばさんに呼ばれて来た女の子は、まだ子供だというのに声に全く気持ちが入っていない。ただ声を発してるだけって感じの味気ない喋り方だ。

 なんなんだ一体。三人連続こんな感じの人だなんて、これは偶然なのか?


「あの、あなたは海を陸地に変えることが出来るのですか?」


「できるよ」


 無表情で、一言そうぽつりと言った。


「カプチーノ様」


「おーけー」


 無表情だとかそんなことはどうでもいい。こいつさえ落とせば、萌衣は生き返るんだ。

 俺は、最後の伝説級の能力者に、左目でウインクをした。


 ウインクをしたものの、相変わらず無表情なので落ちているのかどうかが分からない。いやまあ落ちていないわけないんだが。ま、一応確認しとくか。


「なあ。君が好きな人って誰だい?」


 聞かなくても答えは分かるが、一応聞いておく。


「好きな人? そんなのいないよ」


 無表情で、衝撃的な言葉が言い放たれた。


「なに!?」


 そんなことはありえない。俺のウインクは、あらゆる女に効くはずだ。


「そもそも私、感情って分からないの。だから勿論、恋愛"感情"だって例外じゃない」


「か、感情が分からないだと?」


そんな理由で、俺のウインクが効かないってのか?

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