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ノース

「あっつ……」


 なにこの暑さ、霧砂漠よりも更に暑いぞ。もう全身汗だらけでかなり気持ち悪い。誰か俺にアイスと扇風機をください。


「ここが最北端の街ですね。街の名前はノースです」


 はぁ……。こんなところで伝説級の能力者探しをしないと行けないのかよ……。早いとこ見つけちゃって、さっさと出よう。


「ねえ、なんでそこら中に炎があるの……」


 シュカの言う通り、街の至る所に炎の付いた燭台があり、それらが暑さを底上げしている。その炎さえ消えてくれればきっと丁度いい温度になるのに。


「そもそも探すにしても、伝説級の能力者はどのような能力なんでしょうか?」


「伝説級って言うくらいだから、何か凄い能力なんだろうけど、あんまピンと来ないな」


 攻撃系なのか、俺みたいな特殊能力系なのか、それすらも分からない。


「ま、とりあえず街を歩いてみるしかないだろ。その能力を使って商売でもしててくれるとこっちとしては楽なんだけどな」


 逆に人に隠しているような能力だと、見つけるのはかなり難しい。そうでないことを願いたい。


「あ、あそこ!!」


「ん? どうした?」


 シュカが、声を上げてある場所に指を指した。まさかもう能力者を見つけたのか?


「あそこに大量のモンスターがいる!」


「え? マジで?」


「マジマジ! この街襲われちゃうかも!!」


 よーく目を凝らして、シュカの指差す方向を見てみる。はっきりとは見えないが、確かにモンスターがいるような。

 って、それってかなりまずいんじゃないか!?


 モンスターが襲ってきて街が崩壊状態になってしまうと、能力者探しどころではなくなる。というか、もしかしたら能力者が殺されてしまうかもしれない。


「ミステ、あのモンスター消せるか?」


『私 そんなに目がよくないから モンスター見えない だから無理』


「となると、急いで向かうしか無さそうだな。行くぞ!!」


   ☆


「うようよいる……」


 近づいてみると、リスみたいな見た目をした、人くらいの大きさのモンスターが何十体も空を飛んでいた。強さはそれほどでも無さそうだが、この数を相手にするとなるとかなり大変そうだ。ま、ミステがいるから平気か。


「じゃ、シュカは下がってろ。ミステ、カリバ、いくぞ!」


 このレベルの敵相手ならカリバも十分戦力になる。多い敵を倒すには味方も多い方がいい。

 にしても、空に飛んでいる敵を相手にするとなると、地上戦と違って戦うのは難しいな。俺は空を飛ぶことはできないし、面倒だがジャンプして一匹一匹倒していくしかない。


「さて、やるか!!」


 モンスターへの距離を、人混みを掻き分けながら少しずつ詰めていく。


 って、なんかおかしくないか?

 あんなに大量のモンスターが街にいるというのに、なんで街の住人達は全く怯えていないんだ? 住人は誰一人として、臆することなく普通に行動している。

 モンスターが見えていないのか? いや、そんなこともないようだ。何人かはモンスターを見上げている。あくまでただ見上げているだけで、全く恐がってはいないのだが。

 なんなんだここの街の人達、危機感が無さすぎるだろ。襲われて死ぬかもしれないんだぞ?


「なーんか守ってやる気無くなっちゃうけど、ま、戦うか」


街の住人達がどうなろうとどうでもいいが、伝説級の能力者に死なれちゃったら困るからな。


「!?」

 

 突然の出来事だった。モンスターに飛び込もうとした俺の頭上を、真っ赤な炎が一直線に飛んでいった。

 なんて炎だ……! 直接触れたわけでも無いのに、とんでもない威力を持っていることが分かる。あれに少しでも触れたら、俺は一瞬で塵となっていただろう。


 モンスターは何十体といたにも関わらず、さっきのたった一撃の炎で全員燃えて消えた。もう今は、モンスターの残骸すら残っていない。

 あまりにも一瞬だった。早く、熱く、力強い炎。なんだったんだ今の炎は?


「ふぅ~。終了終了」


 呆然としていると、俺の背後から何かをやり遂げたような声が聞こえてきた。

 声のした方を振り向くと、そこには中学生くらいの髪の赤い女の子がいた。


「今のは、お前がやったのか?」


「そだよ。この街はわたし以外は戦えないからね」


 この女の子が、今の炎を……。

 こんな華奢な体のどこから、あれほどのエネルギーを持った炎を出せたのか。正直見た目は全く強そうじゃない。いや、見た目と強さは関係ないか。チカだって見た目はちっとも強そうじゃなかったし。


「カプチーノ様、おそらくこの方は」


「ああ、間違いない」


 こいつは伝説級の能力者だ。あんな炎、どう考えても普通じゃない。まだ一度しか見ていないが、一度見れば十分分かる。


「君達、旅の人? だったら今のモンスターに驚いたでしょ」


「モンスターに驚いたっていうか、お前に驚いたよ」


「あはは。ごめんごめん。一応手は抜いたつもりだったんだけど、いきなりあんな炎出てきたらそりゃビビるよね」


 あれで手を抜いていただと!? なら手を抜かなければどれだけの炎を出せるんだ?


「おー、もう終わっとったか。おつかれ、アイファ」


「パパ!」


 痩せ気味の男が、女の子に優しく声をかけた。パパと呼んでいるし、多分この子の父親だろう。


「よしよし、よく頑張った」


 男は女の子の頭を何度も撫でた。仲の良い親子だな、微笑ましい。

 

 さてさて、お父さんには悪いが、早速この子を落とさせていただくことにする。伝説級の能力者が女であった以上、落とさない手は無いんでね。


 俺は女の子の目をじっと見ると、右目でウインクを決めた。一人目の伝説級の能力者、攻略完了!


 

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