謎の少女
街を出てから大分歩き、日も暮れ、そろそろ休もうかと思っている時に、それは起きた。
ちょんちょん。
ちょんちょん。
後ろから、何故だか俺はちょんちょんと突かれ続けている。
「なんだカリバ、甘えたいのか?」
普段カリバは、俺にこんなちょっかいを出してくるような女ではない。
このちょんちょん攻撃、一体カリバはどういうつもりなのだろう。
ちょんちょん。
ちょんちょん。
とうとう我慢できなくなり、後ろを歩いていたカリバの方を振り向いた。
「あれ? カリバ、じゃない?」
確かに俺の後ろにカリバはいた。
だが、俺のことをちょんちょんと突いていたのは、カリバではなく、知らない女の子。
歳は十歳くらいだろうか。
幼い顔立ちの、ピンク色の髪をした女の子が、俺にずっとちょんちょんしていた。
「カリバ、こいつは誰だ?」
「分かりません。先程から、なぜだかカプチーノ様の後ろをずっとくっついていたのです。男だったら容赦なく斬りかかるのですが、こんな小さな女の子に手を出すのもどうかと思い、しばらく様子を見ていたのですが、さっさと逃がした方がよかったでしょうか?」
「いや、別にいいけど」
俺に危害を加えそうにも見えないし。
小さな女の子は、ボーッと俺の顔の方を見ている。
「えーっと、お嬢ちゃん、どうしたの?」
このまま放っておいても仕方が無いので、話しかけてみた。
「……」
が、女の子は全く何も答えてくれない。
それどころか、口を開けようともしない。
なんなんだこの子は。
「この子、やっぱ家族のところに帰してやった方がいいよなぁ」
俺は小さな女の子を黙って見過ごすような駄目な男ではない。
「でも、どこの家の子かも分からないのでは、どうしようもありませんよ」
「だよなぁ」
何も話してくれないので、この子のことがさっぱり分からない。
このままでは家族を見つけるのは無理だ。
「それに、おかしくありませんか、この子」
「おかしいって?」
「この周り、人が住んでいるような場所が全く無いんですよ」
「!?」
言われて気づく。
この辺は見渡す限り木ばかりで、人が住んでいるような場所は見当たらない。
「わざわざ遠くから、この女の子はこんな木しか無いよな場所に来たってことか」
「おかしいですよね?」
「ああ、絶対変だ」
まだこんな幼い女の子が、もうすぐ暗くなるっていうのに、一人でこんなところに来るとは思えない。
一体、この女の子はどうしてこんなところにいるのだろうか。