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予言

 

 どれくらい戦っただろうか。俺もツヨジョももうへとへとだ。


 だが、この疲れは決して嫌な疲れじゃない。


「これで、決めます!」


 ツヨジョから気迫が伝わってくる。


「んじゃ、俺も次で決めるかな! うぉぉおおおおおおお!」


 シュカとの修行でやりまくった気合い溜めをして、全力を右手に注ぐ。


「「おりゃぁぁあああああああああああああああ!!!」」


 二人の最後の力を振り絞った声が重なった。


 ズドン!! 拳と拳が、ぶつかり合う。あまりの威力に、まるで空気が震えているようだ。


 手は既に感覚を失っている。


「うっ……」


 もう腕を下ろしたくなるが、諦めるわけにはいかない。この勝負には、萌衣の命がかかっている。


「どうやら、実力はほとんど同じくらいなようですね」


「だな」


 悔しいが、俺はツヨジョより強くは無い。


「なら、ここは勝ちを譲りましょうか」


「へ?」


「カプチーノが私に勝たなくてはいけないのには、何か理由があるのでしょう?」


「ああ」


「私は、ただ戦いたいという欲求を満たしているだけです。だったら、もうその欲求は十分に果たせたのだし、負けても何もありません」


「でも、さっきお前は自分が勝つって!」


「その予定だったのですが、もう体力もありませんので。このまま続けても、負けないかもしれないですが勝てないですし」


「そうか。じゃあ、俺が勝ちでいいんだな?」


 せっかく勝たせてくれるのだから、ここは素直にその気持ちを受け取っておきたい。


「はい。ただし条件があります」


「条件?」


「また後で、勝負をしましょう。その条件が飲めるなら、私は負けます」


「交渉上手だな」


「あなたほどではありませんよ」


 そう言って、二人で笑いあった。


「これで俺の勝ち、か」


 なーんかしっくりこないが、これでも勝ちは勝ちだ。


「さて、ツヨジョさんが負けてしまいましたし、私は予言をしないといけないですね」


 予言はいけないことだとか言ってたくせに、大天使様はちっとも嫌そうじゃない。それどころか、ニコニコとしている。


「あんたさては、こうなることが分かってたんじゃ……」


「さて、どうでしょうね」


 うふふ。と大天使様は笑っている。


「そもそもよく考えれば分かるじゃありませんか。予言はいけないことだと言いながら、私はツヨジョの成長のためだけに予言をして帝王杯に向かわせましたし、私があなたの女性を落とす能力を知っていたのは、どう考えても予言でしょう? 完全に私的に使っているじゃないですか」


「ということは、まさか――」


「予言、別に使ってはいけないなんてことはないんですよねー。私が決めた特別な天使にしかしてないっていうのも、制限をつけてなかったら色んな人が予言を求めに来て私が面倒くさくなってしまうからですし」


「な、なんてこった……。つまり俺がツヨジョと戦ったのは、ただ大天使様が試合を見たかっただけってことか?」


 もしそうなら完全にしてやられた。


「それは少し違いますね。ツヨジョさんとあなたを戦わせたのは、ツヨジョさんの成長のためですよ。ツヨジョさんには、中天使様になってもらおうと思っていまして、そのためにはもっと強くならなきゃなんですよね」


「ちゅ、中天使様? なんですかそれは」


 ツヨジョは困ったように首を傾けた。


「大天使の私と普通の天使の間の存在です。天使の中でもそこそこ偉くなれます」


「聞いたことがありません! そんな立ち位置」


「それはそうでしょう。私が自ら考えたのですから」


「み、自ら?」


「そうですよ。なんか、大天使だけじゃつまらないなあって」


「つまらないって」


 なんかこの人、すっげえ自由な人だな。


「いいじゃないですか、偉くなれるのですから。さて、では予言しましょうか。どのタイプの予言をご所望ですか?」


「どのタイプって?」


「私の予言には四種類あります。一つ目は、ただ未来を見る予言。二つ目は、自らの成長を促す新たな未来を切り開く予言。三つ目は、今より下の生活にいくための未来を閉ざす予言。そして四つ目は、まあ四つ目はいいでしょう」


「なるほど」


 ただ未来を見るだけが予言じゃないってことなのか。


「どれを選べばいいんだ?」

 

 未来を見ることを提案したミステに尋ねた。


『一つ目』


「二つ目じゃなくていいのか?」


『今の未来を見るべき 二つ目は"自らの"と言っていたし シスタのことではなくカプチーノの成長の仕方しか分からない可能性が高い』


「分かった。大天使様、一つ目の予言を頼む! 人を生き返らせる方法を知りたい」


「分かりました。では」


 大天使様が目を閉じ、沈黙した。

 俺達は、大天使様の予言が終えるのを黙って待った。未来の俺、頼む! 萌衣の生き返らせ方を知っていてくれ!


「分かりましたよ」


「本当か!!」


「はい。人を生き返らせる方法は、世界の中心にある祠「ワードル」にあります」


「ワードル……そこに行けば、萌衣を生き返らせることが出来るんだな?」


「そうです」


「よっしゃ!」


 未来の俺は、どうやら萌衣を生き返らせる方法に辿り着いてくれていたらしい。

 そして未来を知ったことにより、今の俺は既にもうその未来に行くことは無い。俺達は、新たな未来を進むんだ。


「早速行くぞ、ワードルに!!」


「待ってくださいな。その身体じゃまともに動けないでしょう? まあ私も人のことは言えないのですが」


 ツヨジョは心配してそう言ってくれたが、その心配は杞憂だ。


「大丈夫。俺達にはカリバがいるからな」


「カリバ、というのは、私が帝王杯で決勝戦で戦ったあのカリバさんですか?」


「ああ。カリバは本来戦闘では無くて回復がメインなんだ。すぐに全回復できる」


「なんと! まさかそのような力をお持ちだったとは。では、もう出発を?」


「ああ。早く萌衣を復活させてやらないとな」


「焦らなくてもよろしいのですよ。シスタさんは、死んでいる間は歳をとりません。いつ生き返らせても、死んだ直前の状態で生き返ります」


 大天使様が、急ごうとする俺にそう声を掛けた。


「そりゃよかった。だけどさ、それでも俺は急ぐよ。だってよ、俺は今すぐ萌衣に会いたいからな!」


 好きになった女の子に早く会いたいなんてのは、理屈抜きにして当たり前のことなんだよ!

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