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皆殺し そして――

「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 萌衣が、死んだ。


「嘘、ですよね……。シスタさんが……」


「いい顔してるじゃねえか! その顔が見たかったんだよ!」


 嫌だ。嫌だ。嫌だ。

 現実を受け止めたくない。


「なんで、なんでシスタが!」


「なんでって、だから言っただろ? あんたの絶望が見たかったんだよ!」


「絶望って、そんな……」


 傷つけるなら俺だけにしてくれ、俺の大切な人を傷つけるな。


「酷すぎます! あんまりです! シスタさんを返してください!」


「返せだぁ? 死んだ人間を返せるわけねえだろ?」


 俺達が絶望しているのを、満足そうに男は見ている。


『死ね』


 突如、萌衣を殺した男と、威張っていた男が消えた。


「あああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 ミステが男を消したのを皮切りに、俺は叫びながら周りの男を切り殺した。


「全部! 全部! 全部消えろ!!」


 ただ剣を振り回して、次々と男を殺していく。


 今はただ、こいつらを殺すことだけに身を任せて、他のことは何も考えたくない。


「死ね! 死ね! 死ね!」


 簡単に何十もの命が消えていく。

 消えた命はもう二度と戻らない。萌衣の命も。


「死ね! 死ねえええ!!」


 萌衣との思い出が、走馬灯のように頭の中を駆け巡った。


 最高に可愛くて、最高に大好きだった萌衣。

 その萌衣は、もういない。


 何人殺しても何人殺しても、気持ちはおさまらない。

 こんなことをやっても無駄なことくらい分かっている。だが、じっとしていられない。じっとしてしまったら、壊れてしまう。


「死ね!!」


 どんどん俺の周りに死体が増えていく。


「カプチーノ! もうやめて!!」


 シュカの声が聞こえる。だが、聞こえるだけで俺には届いていない。


「死ねえええ!!」


 何人殺しただろうか。いつの間にか、生きている人の数はかなり減っていた。

 それでもまだ0じゃない。

 逃げ回ってるやつを追いかけて、躊躇なく殺していく。


「はぁ……。はぁ……。はぁ……」


 さすがに疲れてきた。

 もう立っているのも辛い。

 体力は無限に等しくあるとはいえ、俺も体中に剣や槍や弓が突き刺さっている。


 それでも俺は殺し続けた。止まることなく。


「全員、死んだか?」


 見たところ、もう男の姿は無い。

 だが、俺の気持ちは依然としておさまらない。


「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 どうすればいい。俺はどうすればいい。


「ミステ!」


『何?』


「この街を、消せ」


 この街を全て消してしまえば、俺のこのどうしようもない衝動も消せるかもしれない。


『分かった』


 俺の言葉に頷いてすぐ、街は何もかもが消えた。

 残っているのは、俺と嫁達のみ。


「はは……ははは」


 消えた街の中で、俺は乾いた笑いを漏らすと――そのまま意識を失った。












 ☆
















「――様!」


「――カプチーノ様!!」


「ん……」


 カリバに体を何度も揺すられ、俺は目を覚ました。


「目が覚めましたか、よかった」


「ここは、どこだ?」


 なぜ俺はこんなところで寝ているんだ?


「ここはトタースですよ。トタースの私の部屋です」


「そうか、トタースか」


 カリバの部屋にはあまり入ったことが無かったから気づかなかった。


 そんなことより、何か大事なことを忘れているような気がする――あ!


「萌衣は!」


 思い出した! 俺の目の前で、萌衣が!


「――シスタさんは死にました」


「なっ!?」


 萌衣が、死んだ。俺の妹で婚約者である萌衣が、死んだ。


「くそ! なんで萌衣が――。あいつら、ぶっ殺してやる!!」


「もう殺したじゃありませんか。いや、あれは殺したというより、消した、ですかね」


 そうだ。俺は萌衣を殺した男達を、一心不乱に殺しまくって、最後にミステに消させたんだ。


「じゃあ、俺はどうすれば!! どうすれば萌衣に会える!!」


 もう二度と会えないなんて、そんなのは嫌だ。俺はずっと萌衣と一緒に!


「あの世に行く、ですかね」


「くっ!」


 死なないと、もう萌衣には会えないというのか――。

 俺がちゃんとトタースの警備をしっかりしていなかったから! 俺があの時助けられなかったから! 萌衣が死んだのは、俺のせいだ。


「ちくしょう……。ちくしょう……」


 涙が溢れて止まらない。泣いたって萌衣は帰ってこないのに。


「そして、もう一つ、萌衣さんに会えるかもしれない方法があります」


「何!? 本当か!」


「ええ。ただし、その具体的な方法は分かりませんがね。これを覚えていますか?」


 カリバは俺に一枚の紙を渡した。


「これは――!」


 カリバが俺に渡した紙。それは、リエカで受け取った、"この世で最も大きな秘密"が書かれた紙だった。

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