カリバ
「カプチーノ様、ドラゴンの居場所が分かりました」
ドラゴンを倒すと決めてから、三日経った。
俺の決意は変わっていない。
「で、その場所とは?」
「古来より龍が眠りし山という山の火口にいるだとか」
「古来より龍が眠りし山、か」
「はい。ですが、その山、ここから中々遠い距離にございまして」
「一日や二日では行けないのか?」
「そのようです」
となると、この異世界に来てから一年間ずっと居続けたこの街と、しばらくお別れか。
「俺がいない間に、前にこの街に住んでいた男達が戻ってきたらやっかいだな。カリバ、門番に、俺がいない間は絶対にこの街には外の人間は誰も入れるなと伝えてくれ」
「了解です」
せっかく俺のものにしたこの街に、俺のものにならない男共を再び住ませるわけにはいかない。
「それとカリバ、お前は俺と一緒に来い」
「ほ、本当によろしいのですか!?」
「ああ」
俺が頷くと、カリバは見るからに嬉しそうな笑顔でニコっとした。
カリバを誘ったのは、ただ可愛いからという理由ではない。
俺がカリバを誘った理由、それは、ドラゴンのいる山への案内役や、普段から一緒にいることが多く話しやすいというのもそうだが、何より一番はカリバの能力だ。
そもそも俺はカリバの能力の凄さに魅入られ、側近にしていたわけだし。
この、一見ただの可愛い少女であるカリバは、実は俺以上に凄い能力を持っている。
カリバの攻撃力、守備力などは別にそれほど高くない。
彼女の特出しているのは、魔法。
魔法と言っても攻撃魔法ではない。
彼女が使う魔法は、回復魔法。
回復魔法自体はこの街に使える女はいくらでもいるのだが、カリバの回復魔法は他の女とは比べられないくらい優れている。
彼女の使う魔法 『全ての回復』――それは、MP消費無しで、死以外の全てを回復することができるという魔法だ。
HP全回復、あらゆる状態異常の回復はもちろんのこと、手足が千切れてもリスク無しで復活させられる。
彼女の前では、どんな病気であろうとどんな怪我であろうと関係なし。
つまり、彼女が一緒であれば、死にさえしなければ何があっても大丈夫、ってわけだ。
「カリバ以外には、特にいらないかな」
この街には他にも役に立つ能力を持った女はたくさんいるのだが、そう何人も連れて行ったところで意味はない。
「と、ということは、私はカプチーノ様と二人きりで旅をするということですか!?」
「ああ」
カリバは二人きりだと分かると、誰が見ても分かるくらい大きく喜んだ。
初めて会った頃は、あんなに生意気だったのにな……。
自分の能力『全ての女を落とす目』が本当に凄まじい力だと改めて感じる。
どんな女でも、この力さえあれば必ず俺のものになる。
断言しよう。
この世界で、絶対に俺の能力が一番最強だ。
これ以上の力は、無い。