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お手紙

「国になったな」


「ええ、国になりましたね」


「……」


「……」


「……何も変わらないんだけど」


「ですね」


「ですねって何! カリバから国のこと聞いた時めっちゃウキウキしてたのに、なんなのこれ!」


「まあまだ二十一日ですし」


「二十一日で何も無い方がおかしいと思うんだけどな……」


 なんかこう、国になった瞬間いきなり世界を思うがままに、ってのを想像してたからなあ……。


「失礼します」


 俺とカリバが話していると、俺の元で働いている女の一人が部屋に入ってきた。


「どうした?」


「あの、ファストとノーワから手紙が」


「来た!」


 女が持ってきた手紙を勢いよく奪い取った。

これでようやく、トタースも国の一つとして行動が出来る。


「えーと何々『トタースの国王様へ。国への昇格おめでとうございます。もしよろしければ、トタースが国になったことを歓迎するべくぜひ一度お会いしたいのですが、都合がつく日にちを教えてください』か」


「歓迎、ですか」


「なんか俺が求めてたものと違うな」


 歓迎会とはいいから、首脳会議とかそういうのをやらせて欲しかった。


「でも、当然出席しますよね?」


「まあ、他の国のお偉いさんを見てみたいからな」


 世界を束ねている人がどんなやつなのか、かなり興味がある。


「では、予定はいつでも大丈夫だ、と返事しておきましょう」


「いや待て」


「どうしました? 何かご不満でも?」


「予定はいつでも大丈夫ってのはやめよう。俺が暇人みたいだ」


「実際暇人じゃないですか。ここ最近、カプチーノ様毎日ダラダラしているだけですよね?」


「ギクッ」


 そうなのだ。ここ最近、俺は元の世界の休日みたいな過ごし方をしてしまっている。

 朝遅く起きて、何をするでもなくダラダラして、一日を終える。それの繰り返し。


「なので、いつでも大丈夫でしょう?」


「確かにそうかもしれないが、そういうことは他国に知られたくない。明日以外開いていないということにしておいてくれ」


「そんなすぐでよろしいのですか?」


「ああ。こういうのはさっさとやるに限る」


 後回しにするメリットが無い。


「ですがカプチーノ様、明日というのは不可能です。そもそもここからファストとノーワまでの距離は、日数にして、ファストだと十日、ノーワだと七日ほどかかります」


「そうか。って、そんな距離がある場所に行けるのって暇人だけじゃないか? 都合がつく日にちも何も、そんなに日数かけて行かなきゃいけないなら、連続で何日も開いていなくてはいけないんだし」


「つまり、カプチーノ様が暇人だと言うことを最初から見透かされていたというわけですね」


「うっ……。じゃあ都合がいい日とか一々聞いてくるなよな」


 まだ会ったことも無いファストとノーワの人に、少しだけムカッとした。


「そもそも、カプチーノ様がここから遠い森に住んでいた世界一強いモンスターを倒しに行ったことは周知の事実なのですし、フットワークが軽い人間だと思われるのは自然なことでしょう」


「まあ、それもそうか。で、そもそも俺達はどこで会うんだ?」


「この手紙のこの部分を見てください」


「この部分? あっ、裏にも文が書いてあったのか」


 短い文なんだから表にまとめて書けばいいと思うが。


「えーと、行くのはノーワか」


 手紙の裏には、『ファスト国王ノーワ国王、共にノーワで待っています』と書かれていた。


「そういうわけです。では、返事の手紙を送りましょうか」


「というか、その手紙って到着に何日かかるんだ?」


「おそらく七日くらいでしょうね。手紙を届けるのも人ですし」


「だから国になってから二十一日間何も無かったのか」


 トタースが国になることを知らせる手紙がトタースに届くのが七日で、俺が国になることを了承したことを伝える手紙が届いたのが七日、そして今日の手紙が来るのに七日。

 なんて不便なんだ異世界の連絡手段。


「では七日もかかることですし、早速今日出発いたしましょう。手紙もさっさと出さないと」


「今日手紙出して今日出発って、俺達と手紙が着く日が一緒になってしまうんじゃないか?」


「そうですね、一緒です。ですから手紙には、都合のいい日は今日です。と書いておきましょう。そうすれば、手紙が着いたと同時にカプチーノ様が着いてもおかしくありません」


「それって手紙出す意味無いだろ……。だけど、返事の手紙は出さなくちゃだよな。返事出さずにいきなり到着しちゃったら、あっちは俺達のことを迎えられないだろうし。それじゃ、今日さっさと手紙出して、明日出発だ。そうすれば手紙が到着する日と俺が到着する日は一日ズレるから、手紙には明日会いましょうと書いとけばいい」


「分かりました。では急いで手紙を書いてください」


「え?」


「手紙を書くのはもちろんカプチーノ様ですよ。カプチーノ様がお会いしに行くのですから、当然です」


「そ、そうか」


 ま、こんなのは適当に書いとけばいいか。大事なのはこんな手紙ではなく対面する時だし。

 ファストとノーワの国王、一体どんな人物なのやら。


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