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結婚式計画

「結婚式をしない!?」


「そりゃそうだろ。結婚式なんかしたら、トタースの住民がどんな反応すると思ってるんだ」


「どんな反応って、おめでとうとかじゃないの?」


「何言ってやがる。忘れたのか? トタースの住民には全員、俺の能力がかかっているんだぞ?」


「あ、そっか……。お兄ちゃんが結婚すると分かったら皆怒っちゃうか」


「暴動やら何やらで、下手したらトタース滅亡かもな。いや、トタースだけじゃない。旅をしてきた中で、俺はたくさんの女にウインクした。そいつら全員が敵になる」


「うぅ。でも、結婚式したいもん!」


「我慢しな。カリバだって納得しているはずだ。あいつはこの街のことをちゃんと考えてるからな」



   ☆


「というわけで、結婚式しないらしいけど」


「えぇ!?」


 カリバちゃんは私の報告を聞いて驚くと、悲しそうに項垂れた。


「カリバちゃんは納得してるはずって聞いたけど」


「納得出来るわけないじゃないですか! もうドレスだって買っちゃたんですよ!」


 お兄ちゃんの嘘つき。カリバちゃん全然納得してないじゃん。


『私は結婚式 必要としない 結婚出来た それだけで十分』


「な、何言ってるのミステちゃん! 結婚式なんて、一生で一番大きなイベントだよ!」


『それは言い過ぎ 一生で一番大きなイベントは 間違いなく誕生』


「誕生!? 生まれた日ってこと!? そんなのノーカウントだよ!」


『なら 死ぬ日』


「あーもう! シュカちゃんは? シュカちゃんはどう思う?」


「えへへ、カプチーノと結婚。カプチーノと結婚しちゃった」


 シュカちゃんはニヤニヤしながら、ひたすらそれだけを呟いていた。こっちの言葉は聞こえてそうにない。


「むむむむむ。こうなったら、わたしとカリバちゃんで結婚式を開かせるしかないね!」


「そうですね。今まではあなたのことはそれほど好きではありませんでしたが、二人とも結婚出来たことですし、もうあなたを敵視する必要はありません。なので、これからは仲間として頑張りましょう!」


「う、うん」

 

 それほど好きでは無かったとか言わないでよ。過去系だけど傷つくじゃん……。というか、これからは仲間としてって。元から仲間でしょ、わたし達……。


「ですが、トタースの破滅はさすがにまずいですね。どうしましょう」


「一旦皆にかけたウインクを解いちゃうとか?」


「カプチーノ様の能力『全ての女を落とす目(ラブミーウインク)』は一度使ったら二度と解けません」


「何それ!」


 すっごい使えない能力じゃん! ……まあわたしのよりは遥かにマシだけど。


「うーん」


 全然良い案が思いつかない。このままだと本当に結婚式が挙げられないよぉ。


「結婚したから、カプチーノと二人きりでご飯食べたり、二人きりで温泉行ったり。ぐへへへへ」


 というか、何か良い案を考えようとしてもこのシュカちゃんの独り言がうるさくて集中できない。


「もうシュカちゃんうるさい! というか、シュカちゃんとお兄ちゃんが二人で結婚するわけじゃないんだから、そんな二人きりで色々出来ないんだからね!」


 というか、シュカちゃんの独り言で言ってるお兄ちゃんと二人きりで行く場所、結婚前から勝手にお兄ちゃんと行ってたじゃん! わたし忘れてないんだからね!


「ちょっと待ってください。今のシュカさんの発言で、とても簡単に結婚式を挙げる方法を思いつきました」


「え!? ほんと!?」


 シュカちゃんの独り言、キモいだけで何にも参考にならなくない?


「はい。なぜ今まで思いつかなかったのかが不思議なくらいです」


「なにそれ! 教えて教えて!」


「ふふ、簡単ですよ。私達とカプチーノ様だけで、結婚式を行えばいいのです」



   ☆


「で、それでここで結婚式をやるってことか」


「そうだよ! ここは思い出の場所だからね!」


 わたし達が今いるのは、皆で修行したあの野原。


「いや、確かに思い出の場所ではあるけど、それはシュカとの思い出だろ?」


「そうじゃないよ! ここは、お兄ちゃんがプロポーズしてくれた思い出の場所だよ!」


「そうです。ですから、ここ以外には考えられません」


「俺がプロポーズした場所、か。そうだな、確かにそうだ」


「ほんとびっくりしたよ、突然カリバとシスタが結婚式をしたいからこの野原に飛ばしてほしいって言ってきてさ。私はここで結婚式やるの、大賛成だからすぐに喜んで承諾したけどね」


 シュカちゃんにとってはすぐに承諾でも、わたし達にとっては全然すぐじゃなかったんだけどね……。

 正気を取り戻してからはすぐに承諾してくれたのだが、正気を取り戻すまでがそれはもう大変だった。

 水をかけても何しても、シュカちゃんは独り言をぶつぶつと呟いて自分の世界から帰ってきてくれなかったんだもん。

 結局、「お兄ちゃんとシュカちゃんの結婚は中止になった」ってシュカちゃんの耳元で言ったら、シュカちゃんはびっくりして正気を取り戻した。

 何をやっても正気を取り戻さなかったのに、たった一言で我に返るとは。

 でも確かにわたしも結婚中止なんて言われたらあんなリアクションとっちゃうとは思うけど。


「さて、じゃあ早速、結婚式を始めよっか」


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