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結婚 ~彼女達の想いにアンサーを~

「結婚!?」


 あまりにも予想外の言葉が出てきた。


「前に言ったっろ? 俺は今恋愛なんかしてる場合じゃないって」


「知ってる。世界征服するからだよね?」


「ああ」


「でも、国になったなんて、もう世界征服みたいなもんじゃん。それに、恋愛しなくたって結婚は出来るでしょ?」


 恋愛しない結婚って、俺はそんなものを認めていいのか?


「だめ! だめだめだめ! お兄ちゃんと結婚なんてさせないよ! だってお兄ちゃんは、わたしと結婚するんだもん!」


「いや、シスタとカプチーノは血の繋がった兄妹じゃん」


「そうだけど、そんな証拠無いし!」


「いや証拠て」


 確かにこっちの世界じゃDNA鑑定とか無さそうだから俺達が兄妹であるなんて証明は出来ないけどさ。


「そうです。ダメダメです。いくらシュカさんでもそれは許しません」


『断固拒否』


「そんなぁ……」


「そういうことだ。そもそも、お前まだ十四歳くらいだろ? 結婚なんてできる年齢じゃ」


「え? 結婚に年齢なんて関係ないよ?」


「なにッ!?」


 こっちの世界じゃ結婚は何歳でもしていいのか。なんというロリコン万歳な世界。


「ねえカプチーノ、私、結構勇気振り絞って言ったんだよ? 結婚しようよ~」


 シュカは甘えるような声を出す。


「そんなこと言われてもな。というか、お前そんなそういうことにオープンなやつだったっけ?」


 もっと恥ずかしがるイメージだったんだけど。


「だって、どうせ皆私の気持ち知ってるじゃん。だから、今更隠さなくてもいいかなって」


「そ、そうか」


 にしても困ったな。いきなり結婚なんて。

 シュカのことは嫌いじゃない。むしろ好きだ。だが、結婚という人生最大のイベントを、デートとかそういうのをやらずにいきなりしていいものなのか?

 そもそも俺が、世界征服で忙しいから恋愛はやりたくないなんて言ったからいきなり結婚なんだろうけどさ。

 でも……。


「別に、カプチーノを独占しようというわけではないから。なんなら、ここにいる皆で結婚しようよ。あ、もちろんシスタは除いてさ」


「えーと、一夫多妻制ってことか?」


「そういうこと」


 にっこりと、シュカが頷く。

 この世界では一夫多妻制が認められてるのか。


「それなら認めましょう、というかむしろ賛成です。ではカプチーノ様、結婚しましょう」


『同意 結婚実行決定』


「うぐっ……」


 大変なことになってきた。


「ちょっとちょっと、なんでわたしを除くの! 言っとくけど、お兄ちゃんが一番好きなのはわたしなんだからね。ね?」


 ウインクをして、俺の方を見る。やめろ! 俺に話を振るな。


「それは、家族愛というやつでは無いですか?」


「ち、違うし!」


「それは、あなたがそう思っているだけでしょう? ね?」


 ウインクをして、俺の方を見る。だからやめろ! 俺に話を振るなって。というか、ウインクは俺の専売特許なんだけど!


「どうなの? お兄ちゃん」


「そりゃ、家族愛に決まってるだろ」


 家族の一人である妹への愛なんだから、家族愛で間違いない。どんな感情が含められていても、萌衣への愛は家族愛だ。


「えー。嘘つき―。わたし知ってるよ。こっちに来るまでお兄ちゃんにとってわたしがどんな存在だったのかを」


「今は周りに女なんていくらでもいるんだから、過去の俺とは違うの!」


 こっちの世界に来るまで、俺は全く女に恵まれず、恋人はおろか、女友達さえいなかった。俺にとっての女は萌衣だけ。お袋とかは女とは思えなかったし。

 そのため、萌衣に対する想いが、それはもう凄いことになっていた。本気で妹に恋しちゃってた。妹と結婚してもいい法律に変われってずっと思ってた。はっきり言ってやばいやつだ。

 だって、辛い時も、悲しい時も、萌衣はずっと俺の傍にいてくれたし、萌衣はいつも俺のことを大事にしてくれた。こんなの惚れないわけないじゃん。妹とか関係ない。

 そんな俺の気持ちに応えるように、萌衣もまた、俺と同じように他の兄妹ではありえないような想いを俺に抱いていた。そのせいで、俺の妹への想いは益々強くなっていった。二人でデートにも行ったし、いつも一緒に風呂に入っていた。あ、風呂は今もか。

 俺達兄妹は、血の繋がりはあっても、お互い本気で好きあっていたのだ。


「というか、そもそもわたしお兄ちゃんにプロポーズされてたんだった。だから、結婚しなくちゃね」


「そ、そういえば前にもそんなことを言ってましたね……」


 俺が萌衣にプロポーズしたことを思い出して、カリバは嫌そうな顔をした。


「あのプロポーズ、返事まだだったよね。じゃあ言うよ? 良いよ、お兄ちゃん! 結婚しよ!」


「……」


 どうしよう。このまま俺は、本当に萌衣と結婚してしまうのか? いや、萌衣だけでなく、カリバとも、ミステとも、シュカとも。


「少し考えさせてくれ」


 結婚はそんな簡単に決められることじゃないんだ。こいつらの軽さはおかしい。


「別にいくら考えても無駄だって。それにお兄ちゃん言ってたじゃん。ずっとわたし達と一緒にいたいって。それなら、結婚が一番の策だと思わない?」


 萌衣は俺に考える暇を与えてはくれなかった。


「お兄ちゃん、わたしはお兄ちゃんと結婚したいんだよ?」


 上目遣いで、萌衣はニコッと微笑んでそう言った。

 俺の心臓は、ドキリと高鳴った。


 ――認めざるを得まい。結局俺は、妹のことがまだ好きだったんだ。

 妹の笑顔を見て、結婚したいという言葉を聞いて、俺の心は今、どうしようもなく喜んでいた。


 元の世界の人達は、きっと気持ち悪いと思うだろう。実の兄妹で結婚なんて。

 だが。


「分かった。結婚しよう」


 これが俺の答えだ。誰が気持ち悪いと思おうが関係ない。俺は、萌衣と幸せになるんだ。


「あの……カプチーノ様、私達は? ひょっとして、カプチーノ様が結婚するのは萌衣さん一人だけ?」


「もちろんお前達もだ」


 カリバとは、こっちの世界に来てから一番長い付き合いだ。俺はカリバのおかげでここまで来れたと言っても過言ではない。

 ずっと一緒にいることで、俺はたくさんのカリバの魅力を知った。俺が頼んだことは、どんなことでも頑張って成し遂げてくれるカリバ。その姿が、俺の心に響かないはずがない。

 カリバの俺に対する気持ちは、俺の能力によるもので、本当の気持ちではないかもしれない。だがそれでもいい。俺がカリバのことが好きなのだ。俺が好きだから結婚する。


「私も?」


「ああ」


 久々にミステの地声を聞いた。相変わらず可愛らしい声だ。

 ミステはまだ幼い。元の世界ならば、実年齢は知らないが、多分恋愛対象にできる年齢でもないと思う。だが、そんなのは関係ない。今俺がいるのは異世界だ。

 ロリコンとでもなんとでも言うがいい。ミステは可愛い。

 正直、他の女の子と比べてミステのことはまだ分かっていないことが多い。だが、だったらこれから分かっていけばいい。時間はいくらでもある。これから少しずつでもいい、ミステのことをたくさん知っていこうと思う。大好きなミステのことを。


「そしてもちろん、シュカもだ」


 シュカは、カリバのようにウインクをしたのでもなく、萌衣やミステのように元々特別な関係であったわけでもない。

 それなのに、俺のことを好きになってくれた。その気持ちが嬉しくないわけがない。こんなどうしようもなく魅力の無い俺のことを本気で好きになってくれた、勇気を出してプロポーズしてくれたその想いに、俺は答えたい。ずっと一緒にいたい。


「皆と、結婚だ」


 俺は、人生において、おそらくもっとも大きな決断をした。後悔は、絶対にしない。

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