力の正体
「にしても、これが世界一強いモンスターって、世界雑魚過ぎでしょ」
「いや、世界が雑魚なんじゃなくて、お前が強すぎるんだよ」
だって、運以外のすべてのステータスがカンストしている俺を一撃で倒したんだもの。
「まあ、アタシの能力はどんなに強い相手だろうと関係ないんだけどさ」
「ん?」
今なんかサラッと凄いことを言わなかったか?
「えーと、お前が強いのは、能力のおかげなのか?」
「あれ? 知らないで挑戦してきたの?」
「あ、ああ……」
こいつ、俺と同じように能力者だったのか……。
戦っても戦闘を見ても何も分からなかったのに、こいつが強い理由をこんなにあっさりと口答で伝えられてしまうとは。
「ま、隠してるわけじゃないし教えてあげる。アタシは、〔どんな勝負でも絶対に勝つ〕っていう能力があるんだよね」
なにそのチートじみた能力……。なんでそんな世界のバランスを崩壊させるような能力が存在してるんだ?
……って、もしかして!
「お前、別の世界から来た人間か?」
そうとしか考えられない。俺と同じようにあのカードを使ってこの世界に来たのなら、どんな能力を持っていてもおかしくない。
「別の世界? 何それ?」
だが、チカは別の世界と言っても全くぴんと来ていなかった。
おかしいな。さすがにそんなおかしなチート能力は異世界転移をした人でなければ持っているとは思えないんだが。
「お前、どこで生まれたんだ?」
この質問で、ポロッと俺の元いた世界の地名が出ればこいつも異世界転移者だ。
「それは秘密。ただ一つ言えることは、一緒に暮らしてるあの筋肉パパは、本当の父親じゃないってことだけ」
「本当のじゃない?」
じゃあやっぱり、俺と同じ世界から……。
「あのねえ。これだけは言っておくけど、あんたが思ってるのとは全然違うから。アタシが生まれたのは嘘偽りなくこの世界。別の世界なんてアホみたいなことは言わない」
「アホって……」
俺と萌衣は本当に別の世界から来たんだけどな。
「アホでしょ。もしも別の世界なんてものがあるなら、ぜひ行ってみたいけど」
「行ったところで、お前は満足しないと思うけどな」
きっとこいつは、自分より強い人間に会いたいからそんなことを言っているんだろう。
だが、少なくとも俺の元いた世界にはチカより強い人間なんて存在しない。そもそも、魔法も能力も無いしな。
「何そのまるで別の世界を知ってるかのような言い方」
「実際知ってたりしてな」
「馬鹿も休み休み言えっての。じゃ、用は済んだしアタシ帰るから。そこの死んでるモンスターはあんた達が片づけといてね」
そう言うと、チカはさっさと行ってしまった。
「チカさんの強い理由、分かりましたね」
「まあ分かったには分かったけどさ。なんか釈然としないんだよなぁ」
絶対に勝つことができる能力。俺が異世界転移前に性欲が無かったら、そんな能力を書いていたかもしれない。
「ねえねえ、それよりこのモンスターどうするの?」
「どうするって言っても」
こんなの別にどうもしないだろ。放置放置。
「カプチーノ様、私凄いことに気づいてしまったのですけれど」
「ん? どうした?」
「腐死姫、チカさんに倒されてしまったとはいえ、別に消されてませんよね?」
「そ、そうか!」
カリバの言おうとしていることが分かった瞬間、俺は歓喜した。
「え? 何、どしたの?」
「俺達の目標は達成できるんだよ!」
大龍王とは違う!
「目標って?」
「腐死姫を倒して、首を持って帰り、俺の実力を世界に知らしめるのが目標だっただろ? 倒したのは本当は俺ではないとはいえ、ここに倒れている死体の首を持って帰れば――」
「お兄ちゃんが倒したことになって、皆がお兄ちゃん強いって思う!」
「そういうことだ!」
「でも、本当はチカちゃんが倒したってバレないかな?」
心配そうに、萌衣は尋ねた。
「大丈夫大丈夫、チカと俺達以外は誰が本当は倒したかなんて知らないんだ。チカはほとんど引きこもりだし、俺達の中にわざわざチカが倒したことを言う人間なんていないだろ?」
「そっか。ここにいる皆、お兄ちゃんのことが好きな人だけだもんね」
「というかそもそも、チカの乱入が入らなければ俺が倒してたんだしな」
俺が倒したってことにしても全然いいと思う。
「では、早速これを持ち帰って、世間に見せましょうか」
「だな。世間に見せるとなると、どんな方法がいいかね」
一々この馬鹿でかい頭を持って全ての街を回るわけにもいかないし。
「それでしたら、信頼度の高い情報屋に見せるのが効果的でしょう」
「なるほどな」
「では、行きましょうか。世界的に有名な情報屋の街があります。そこに持っていきましょう」
次回は一気に半年後の話です。




