証明
「世界を手に入れる?」
「ああそうだ。楽しそうだろう?」
世界が全て俺のものになると考えただけでニヤニヤが止まらない。
「ですがカプチーノ様、具体的には何をすれば世界を手に入れたことになるのでしょうか」
「ふむ」
世界を手に入れると決めたものの、何をすれば手に入るかをまだ考えていなかった。
普通に考えればこの世界で一番偉い地位に就くこと、か?
いや、でもそれだけではどうも世界を手に入れたようには思えない。日本で一番の地位っぽい総理大臣とか天皇が、日本を手に入れているかといえば全くそんなことは無いように思う。
「まずは、俺の強さを世界に知らしめることから始める、とかか?」
先ほどの客人は、俺と戦うまで俺の存在は知っていても、強さは全く信じていなかった。
俺は知名度はあるようだが、それだけでは意味が無い。
名と共に、強さも知ってもらう必要がある。もし俺の強さを世界中の人間が知っていれば、人々は俺に恐怖し、世界を手に入れるのも容易くなる。
世界を手に入れるにあたり、最初にやることとしては中々ふさわしいと思う。
「それでしたら、とっておきの方法があります」
「本当か?」
正直、どうやって俺の力を広めればいいのか、俺はまだ全く思いついていない。
一人一人に力を見せるわけにもいかないし。
「はい。この世界で最も強いと言われているドラゴン【大龍王】を倒すというのはどうでしょう」
「大龍王?」
聞いたことのない名前だ。
「そうです。そのドラゴンを倒せば、カプチーノ様の強さは誰もが認めるはずです」
「その大龍王が世界で最も強いドラゴンだってのは、誰でも知っているのか?」
「おそらくは、知っているかと」
「そうか」
誰でも知っている世界最強のドラゴンが俺の手で倒されたとなれば、俺が強い人間であるということを人々は認めざるをえないだろう。
「よし決めた。カリバ、俺はそのドラゴンを倒すことにする」
それが俺の世界征服への第一歩だ。
「了解です。では早速そのドラゴンのいる場所を特定しておきましょう」
「よし」
「それであの、カプチーノ様に一つお願いがあるのですが」
「なんだ?」
「ドラゴンを倒すという提案をした私を、褒めていただけないでしょうか」
「え?」
「褒めて欲しいのです」
「いや、褒めてくれと言われてもな……」
「褒めてくれなければ、ドラゴンのいる場所は特定いたしません」
カリバに頼まなきゃ、ドラゴンの場所の特定なんて絶対出来ない。つまり、褒めるしかない。
「分かったよ。えーと、凄いぞカリバ、お前は頼りになるいい女だ」
「ありがとうございます!」
俺の言葉を聞くと、カリバはニコニコとしながら俺にお辞儀をし、部屋から出て行った。
カリバのやつ、頼りにはなるんだが時々めんどくさいな。
ま、いいか。何も俺に言ってこない朴念仁みたいなやつよりは、カリバみたいな女の方がいい。
さて、ドラゴンを倒すことが決まったわけだが。
これが俺の人間以外との初勝負になる。初勝負がいきなり世界で一番の相手とはな。こんな体験をする人は、きっと俺以外誰もいない。
大龍王、一体どんなドラゴンなのだろうか。
世界最強と言うからには、多少は俺を手こずらせてくれよ。
簡単に倒してしまったら、つまらないからな。