聞き込み
「リクト、到着!!」
何日も歩いてようやくリクトに到着し、萌衣は嬉しそうにそう言った。
「見た所普通の街ですね」
カリバの言う通り、リクトはトタースと変わらず普通の街だった。何か特徴があるわけでもない。
「でもここに、どんな勝負にも絶対に勝つ人がいるんですよね」
「そのはずだ。リエカで聞いた情報が本物ならな」
『まずは情報収集』
「だな。さて、手分けするか? 皆で情報集めるか?」
「皆でって言わないと、私一人にさせますよね? 知ってるんですからね」
「うっ……」
バレていたのか。
「だから皆で情報収集です!!」
「どうせわたし達は役に立たないとは思うけど……」
心底嫌そうな顔で萌衣は言った。俺も嫌だ。
「役に立つ立たないではなく、やることに意義があるのです!」
そう言われてしまうと、もう何も言い返せない。というわけで、全員での情報収集が始まった。
「カリバは普段どうやって情報を集めてるんだ?」
「私は基本聞き込みですね」
『聞き込み 面倒くさい』
「面倒くさいとか言わないでください。聞き込みだってそう嫌なものでも無いですよ? 色々な人に聞き込みをして、ついに情報を手に入れた時のあの喜びは中々に」
「あ! お兄ちゃん、あそこにクレープ屋があるよ!!」
「おっ、ほんとだ。食べるか?」
「うん!!」
「って、人の話を最後まで聞いて下さい!」
「だってー、クレープ食べたいんだもん……」
正直俺もクレープ食べたい。前に萌衣達とクレープを食べて以降、クレープにハマりつつある。
「もう、情報収集終わったら好きなだけクレープ食べていいですから、今は聞き込みです! あ、あの方にしましょう。年配の方は結構色々情報を教えてくれるものなんですよ」
そう言って、カリバは九十歳くらいのお爺さんの方へと向かった。
「あの、ちょっといいですか?」
「ん? わしかい?」
お爺さんは、よぼよぼの顔でカリバを見た。
「そうです。あの、質問なのですが」
「ドラゴン?」
「いえ、質問です」
「ドラゴンがなんだって?」
「だから! し・つ・も・ん!!」
「なんやお主、そんなにドラゴンが好きなのかい?」
「もういいです!!!」
質問とドラゴンで「ん」しか合っていない耳が遠いお爺さんでは情報収集は不可能と判断し、カリバは俺達の方へと戻ってきた。
「ねえカリバちゃん。本当に聞き込みって嫌なものじゃないの? 今の様子を見た限りじゃ、わたし絶対やりたくないんだけど」
確かに、あんなやりとりをしなくてはいけないのかと思うと、俺も聞き込みなんてしたくない。
「たまたまです! 次は絶対成功させますから、見といてくださいよ!!」
見ているだけでいいのか……。これでは結局、カリバ一人でやっているようなものなのでは?
「あ、あの人なんかよさそうですね!」
そう言って、カリバは腰の曲がったひょろひょろのお爺さんを指差した。なんでまたお爺さんなんだ……。ひょっとして、じじフェチなの?
「では、行ってきますから、ちゃんと見ててくださいね!」
「あいよ。見とく見とく」
本当にただ見るだけだけどな。
「あの、すみません」
お爺さんの前に立ち、カリバは話しかけた。
「ん? わしかい?」
一度目に話しかけたお爺さんと全く同じ返答。何これ、もしかしてこれ中身さっきと同じお爺さんじゃないの?
「そうです。実は、質問があって」
「質問? 一体どんな」
おぉ! ちゃんと質問を聞き取ってくれた。本来当たり前のことなのに、一人目のお爺さんがあんなだったので少し凄く思えてしまった。
「この街に、どんな勝負でも絶対に勝つ人間がいると聞いたのですが、その人のことで何か知っていたら教えてくださいませんか?」
「知ってるも何も、この街に住んでいて知らぬ人はおらんよ」
「本当ですか?」
「もちろんだとも。もしかしてお主、挑戦者か?」
「挑戦者?」
「ふむ。この街には姉ちゃんが聞いてきた通り、どんなに強そうな相手だろうと、苦戦することなく絶対に勝つことが出来る人がいてな。名をチカというのだが、そのチカの噂を聞いた街の外の人が、噂の真偽を確かめるためにチカに挑戦するのじゃよ。一回銀貨一枚でな。で、もしもチカに勝てたら、なんと金貨十枚が貰えるのだが、誰一人勝った人がおらんくてな」
銀貨一枚が金貨十枚か、そりゃ凄いな。ま、俺は金貨ですら余るほど持っているんだが。
「なるほど。そのチカという方に挑戦できる場所、教えてくださいませんか?」
「ここからずーっと真っ直ぐ行ったところに、闘技場がある。そこの前の家にチカは住んでいるよ」
「そうですか。ありがとうございます」
「いやいや、困った時はお互い様だよ」
カリバは頭を下げてお礼をすると、俺達の方へと戻ってきた。
「どうですか? 凄いでしょう?」
情報収集を皆が見ている前で成功したのがよっぽど嬉しかったのか、自慢げにカリバは言った。
「確かに凄かったよ。お前は情報収集のスペシャリストだ」
「本当ですか! カプチーノ様にそう言って頂けて、カリバ感激です!」
俺の言葉を聞いて、飛び跳ねてカリバは喜んだ。
『カプチーノ チカに挑戦する?』
「ああ、もちろん。金なんかには別に興味は無いけど、チカってやつにはかなり興味があるからな。果たして、どれほどの力なのか」
"絶対に"勝てるなんて言われているくらいなんだから、ある程度は期待して良いだろう。
もしかしたら俺は、初めて全力で戦えるかもしれない。




