シュカを尾行
修行を始めてから五日後。
五人は初日に比べて声が出なくなることも無くなった。シュカも大分浮けるようになってきており、飛べるようになる日も近い。
「さて、今日の修行はここまで、解散」
日が暮れ始め修行を終えて、カプチーノは解散の合図を送った。
その途端、シュカがカプチーノの方へと行き、二人仲良く会話を始めた。
その様子を見ていたシスタは、ここ最近気になっていたことをカリバに訊ねた。
「ねえカリバちゃん」
「なんですか?」
「シュカちゃんのことなんだけど」
「やはり、シスタさんも気づいていましたか」
シスタと同じように、カリバもまた、気づいていた。
「気づかないわけないよ!! いくらなんでも、シュカちゃん最近お兄ちゃんにべたべたしすぎ!」
「そうです! 修行の時間以外は常にカプチーノ様にくっついているじゃないですか! なんなんですかあれは!!」
そう、シュカは隙あらばカプチーノと一緒にいるのだ。
今日だって、修行が終わった途端にカプチーノのところへ行き、またどこかへと行く約束をしている。
「カリバちゃん」
「分かっています。尾行、ですよね」
「うん。シュカちゃんがお兄ちゃんと何をしているのか、わたし達は知らなければならない」
「あなたのこと、あまり好きではありませんが、ここは協力いたしましょう」
「じゃあ、早速着いていくよ!」
「はい!」
カプチーノを連れてどこかへと向かったシュカにバレないように、シスタとカリバは尾行を開始した。
☆
カプチーノとシュカは、レストランへと入って行った。
「どういうことでしょうか?」
「ご飯食べに来たのかな。だったら、わたし達を誘ってくれてもいいのに」
「そうですよね。なぜわざわざ、二人きりで食べる必要があるのでしょう」
『何やってる?』
「うわっ! ミステちゃん、いたの?」
いつの間にか、カリバとシスタの背後には、ミステの姿があった。
『一人 寂しいから 着いてきた』
「そうですか」
呆れた顔でカリバは言う。
「どうする? カリバちゃん」
「まあ、ミステさんにとっても他人事ではないですし、状況を説明して一緒に尾行しますか」
カリバは、簡潔にミステに説明した。ミステもカリバとカプチーノと同じように、シュカのここ最近の行動を疑問に思っていたらしく、話を聞いて一気に乗り気になった。
「さて、入りますよ」
三人は店の中へと入った。
入った途端、カプチーノとシュカの姿を探す。
『いた』
「どこどこ?」
『あそこ 奥の窓のとこ』
「あ、ほんとだ」
こそこそと、絶対にバレないように、なるべく近くてカプチーノ側からは見えにくいテーブルへと移動する。
「ここなら大丈夫でしょうか?」
「うん、お兄ちゃん達は気づいてないみたい」
『大変』
「ん、どしたのミステちゃん」
『カプチーノとシュカが食べてるの カップル用ジャンボパフェ』
ミステが、メニューを広げてデカデカと載っていたパフェを指差す。確かにそこには[カップル様専用! 超特大ジャンボパフェ!]と書かれていた。
「え!? ほんとだ! なんで!?」
「あ、あの二人、カップルになってしまったのですか!?」
カリバはあわあわとした後、ガクンとテーブルに倒れてしまった。
「くっ……。カリバちゃんがやられてしまったか。確かにこの光景は強烈だ。だけど、私は負けない。最後まで見届けてみせる!」
シスタは、カプチーノの方にじっと目を向ける。
「あ、あれは!!」
シスタは、衝撃的な光景を見てしまった。
カプチーノがシュカに、パフェをあーんしていたのだ。
「あーんなんて、わたししてもらったことないのに……」
シスタはずっとカプチーノと暮らしていたというのに、いちゃいちゃと食事をとったことが無かった。
「こ、今度は逆にあーんしてもらってる……。あの二人はカップルになってしまったの……? お兄ちゃんの能力で惚れさせたのかな? いや、だとしても惚れさせた意味が分からないし、お兄ちゃん女に飽きたって言ってたから、女を利用する目的以外にはあの能力を使わないとは思うんだけど……」
しばらくして、ジャンボパフェの容器は空っぽになった。カプチーノとシュカは何分か雑談をすると、レストランを出た。
「もうカリバちゃん、いつまで倒れてるの! お兄ちゃんの後を追うよ!!」
シスタはカリバを叩き起こし、ミステと共にカプチーノのあとをつけた。
☆
「こ、ここは!!」
カプチーノとシュカが次に向かったのは、シュカと出会った日に来た銭湯だった。カプチーノ達は、迷うことなく入っていく。
「どういうことでしょう」
「とりあえず、行くよ!」
謎を解くため、シスタ達は銭湯の中へと入った。
「お兄ちゃんは……家族風呂に向かってる!?」
シスタ達が銭湯に入ってきた時、ちょうどカプチーノとシュカが家族風呂へと向かって行くところだった。
「もはや何が何だかです……」
「こうなったらもう、家族風呂に突撃だよ!」
さすがに二人きりで入浴というのは見過ごせなかったシスタが、実行を決行した。
「分かりました。行きましょう」
カリバもまた、決心した。ミステも、二人を見てこくんと頷く。
「じゃあ、突撃開始!!」




